SBの存在をもっと自由に! 第8節 vs リバプール
こんにちは。
tadashiです。
空はあいにくの天気。大粒の雨がピッチに降り注ぎます。観客のいないエティハドはその姿をより一層際立たせ、ただただ勝負の時を待つ要塞のようです。
相手は前年王者のリバプール。
クロップが率いるこの赤いライバルは、今シーズンチアゴを獲得し、中盤でのボールキープを上昇させ、さらに高みを目指しています。
しかし、そんな彼らも今シーズンは守備がふるいません。アストンビラに対する7失点に見られるように、ボールホルダーへの詰めの甘さが目立ちます。
ファンダイクの守備範囲の広さを信頼しているのか、オフシーズンの期間が短くコンディションが整っていないのか。
それでも首位に立っているのはやはり王者の意地なのだろう、と思います。
ここ数シーズン。この両者の直接対決はリーグ覇者を争う一戦となります。
特に2シーズン前のマンチェスターシティ優勝のシーズンではこのエティハドでマンチェスターシティがリバプールを倒し、リバプールはこの一敗が大きく響き勝ち点1の差で優勝を逃しました。
また、昨シーズンは、直接対決の1回目で敗戦したマンチェスターシティが、優勝が現実的でないことを悟った瞬間でもありました。
今シーズンもこの直接対決はリーグの順位に大きく影響を与えるはずです。
結果
11' サラー(PK)
31' ジェズス (assist by デ・ブライネ)
スタメン
両チームのスタメンはこちら
■ホーム マンチェスターシティ
ジェズスが復帰し、1トップ。
CBはルベンディアスとラポルトのコンビ。左SBはカンセロをチョイスしてきました。
IHはデ・ブライネとギュンドアン。ベルナルドシルバではなく、ギュンドアンというのはやはりその先を見越してのことかと。
WGにはスターリングとフェラントーレス。フェランが加入してからか、今シーズンは右利きの右WGが採用される試合が多々あります。
怪我人リストは、
■アウェイ リバプール
驚いたのはフォーメーションとスタメン。フィルミーノ、マネ、サラーそしてジョタとアタッカー4人を同時起用。
チアゴ、ファビーニョが怪我で離脱というなかではフィルミーノトップ下の4-2-3-1はベターだったかもしれません。
しかしこのフォーメーションなのに南野はベンチ外。単純に力不足と思われているのかわかりませんが、今日のような戦いかたではフィルミーノの控えは南野でしかないはずですが、、、
ファンダイクがいないので、CBはマティップとジョーゴメス。フィジカル重視でしょうか。
怪我人リストは、
■シティを苦しめた選手
これは一択です。フィルミーノですね。
サラーやマネも得点に直結するプレーをしましたが、それを生み出したフィルミーノの動きに一番手を焼いていたと思います。
スペース創出とチアゴ、ファビーニョ不在の中での起点となったフィルミーノは前半やりたい放題と言っても良かったです。
中盤と最終ラインの間を良いように使われ、周りの選手がマネやサラーへロングボールを送る時間を作られていました。
前半 SBに自由を・・・
試合開始
両チームの噛み合わせと狙いを見ていきます。
今日のポイントはずばり
SBが自由になれるか
ということです。
マンチェスターシティボール保持
マンチェスターシティ
・アンカーロドリの4-3-3でセット
・両SBが幅を取り、その間をIHやWGが顔を出す
前半は思うようにいきませんでした。
リバプールの的を絞った素早いプレスとそれを支えるインテンシティにすっかりはまりました。
・フィルミーノとサラーを前に出した4-4-2の守備ブロック
1. ロドリを前の2枚で封じる
2. CB以外マンツーマン
3. マネ、ジョタのWGはSBを起点に内に絞ってプレスをかける
これにより、攻撃を組み立てるアンカーとSB両方を食い止めることに成功したリバプール。この二つのポイントを封じられ、早いタイミングで前線にボールを送る必要が生じたマンチェスターシティですが、当然リバプールに回収され、ヘンダーソン、ワイナルドゥムにより素早くリバプールの前線にボールを戻されていました。
始まって1分、6分にピンチを迎え、11分にPK献上。
明確なリバプールの狙いだったのか、図のようにセットするマンチェスターシティの裏を一本のロングボールで抜け出しました。
元々、マンチェスターシティはこの試合にリバプールSBからのロングボールを警戒し、自由にさせないため、4-4-2でWGをリバプールのSBに当てることにしていました。
しかし、それを知ってか知らずか、前半のピンチはアレクサンダーアーノルドが低い位置からシティDFの裏へロングボール。
この開始早々の展開にシティは、動きにくくなります。高いラインを保つのは裏をとられるリスクが大きくなるが、SBにもプレッシャーは与えなければならず、自ずと4-4-2ラインの間は広がっていきます。
そこで、フィルミーノが最大限に活かされしまいます。
そんなリバプールのボール保持がこちらです。
SBを警戒して、高い位置にいたマンチェスターシティのWGに対し、CBの左脇にワイナルドゥムがおりてきて、ロバートソンとアーノルドを押し上げるリバプール。
さらに、ワイナルドゥムに対してロドリがケアしてしまうため、そもそも開いたスペースがさらに空になってしまいました。
フィルミーノが自由に中央を使っていたのは、試合の流れによるマンチェスターシティの判断の迷いが出るように頭からしかけていったクロップの戦術がはまったからでした。
11分のPKは上記のようにロバートソンが高い位置に進出し、マネとのパス交換でマネがうまくペナルティエリアで前を向けたところから得られたものでした。
さて、エティハドで先制されたマンチェスターシティ。このまま黙っているわけにはいきません。さっそく動きます。
やはりここでもポイントは、SBを自由にするためには、という思考が必要になります。
マンチェスターシティは失点直後から以下の2つの方法でゲームの流れを引き寄せます。
1. ロドリ or ギュンドアンのサリーダ
これが一つ目です。
後ろで数的優位を作ることでそれぞれ青のハッチングをかけた5選手がリバプールの陣形に対してスペースが与えられた位置に配置できることになります。特にSBに対してプレスがかけにくい構造をつくり、主にカンセロが左からゲームを作っていました。これは後半にもそのまま続く形でした。
そして二つ目です。
ロドリが数的不利となっていたところにギュンドアンを並べ、数的同数に、さらにウォーカーを少し絞らせることで、マネを釣り出す作戦です。
これはリバプールのプレッシングを活用してSBのウォーカーを自由にさせる形でした。
31分のマンチェスターシティの同点ゴールはまさにこの形がはまった攻撃でした。
マネがウォーカーからCBへそのままプレッシング。リバプールの選手らしい高いインテンシティと献身性。
これにより、ウォーカーがフリーに。中央で待っていたデ・ブライネにワイナルドゥムとヘンダーソンが寄せていたので、ウォーカーにボールが戻ったときには、ワイナルドゥムがデ・ブライネを捨てて、マークに行く必要がありました。(ロバートソンはフェラントーレスでピン留め)
ワイナルドゥムのプレスから生じたずれをウォーカー→デ・ブライネ→ジェズスとパスでついていき、最後はペナルティエリア内でアーノルドをかわしてフィニッシュ。
また、今日のマンチェスターシティは、ボール保持だけでなく、守備からも攻撃に転じる仕掛けを使います。
左ハーフスペースを激しく上下動するワイナルドゥムを狙いました。
本来IHで前にがんがん出ていくワイナルドゥムはボランチの一角としてボールを器用に配球するタイプではないので、マンチェスターシティはワイナルドゥムにボールが入ったところを狙ってボールカットを試みました。
25分のスターリングの決定機は、その狙いがばしっとはまったシーンでした。
決めてほしい…。
普段の試合よりもボールがキープできていたわけではありませんでしたが、30分以降流れは確実にマンチェスターシティに傾いていました。
それでは後半へ。
後半 リバプールの停滞
後半開始
両チームとも選手交替はありません。
リバプールは、前半同様サラマネで裏は狙うが4バックが絞っていい対応を見せます。
後半のポイントとしては、
■フィルミーノへの中盤の2人の意識
■アレクサンダーアーノルドの負傷
■シャキリ投入の意図
というところで、マンチェスターシティの戦術変更というよりは、リバプールの動きによりシティが優勢になった形。
フィルミーノが中央で効果的にボールが受けられなくなったために、攻撃は単調になります。裏へ飛び出したいがスペースはできず、攻めあぐねる展開。
リバプールはそんな流れを変えたかったのか59分にフィルミーノをシャキリに交代します。
シャキリにどのようなタスクが与えられていたのかわかりませんが、この交代は失敗だったとしか言えません。
ボールはスムーズに繋がらなくなり、前線4人の役割が曖昧。本来裏へ抜け出すべきマネまでがおりてきてしまう始末。
4バックが連携して対応していたマンチェスターシティを見ていて失点の心配をあまり感じませんでした。
得点の予感があったのはマンチェスターシティ。
55分には、サイトでボールを受けたカンセロが右足に持ちかえて、ゴールに向かうクロスをCBとGKの間に放り込みます。見事に抜け出したジェズスが決定機。ぜひとも決めてほしかったのですが枠外。
78分は中盤後方でリバプールのボールを奪いギュンドアンから右サイドのベルナルドシルバに展開。ペナルティエリアにいるスターリングへグラウンダーのパスが通りますが、トラップでもたつきボールロスト。
両方とも惜しいシーンでしたが得点にはならず。
後半はデ・ブライネに疲れが見え、スターリングからは集中力が欠けているように感じました。
オフの期間が少なく、リーグCLでの連戦、それだけでなくナショナルチームでの活動もあり、安定した実力が出せていなくなっているかもしれません。
最後に
カンセロについて
最近のカンセロは左SBで起用されることも多く、ハーフスペースに位置を取ったり、幅をとってスターリングを絞らせたり、非常にフレキシブルな働きを見せます。今日も後半にジェズスの決定機を演出するところから見ても攻撃的センスで言えばシティSBの中では飛び抜けています。
しかし、今日のカンセロは守備がとても良かったです。試合全体を通して、バックラインとの連動、サイドでの守備、攻撃後のテイクバックなど守備に対して意識を高めていたと感じました。特に82分のサラーへのスルーパスの対応は失点でもおかしくないギリギリのプレーでしたがいち早くスライディングをしてボールを引き寄せ決定機を作られずに済んだシーンでした。
ユベントス時代から、カンセロは攻撃はいいけど守備がだめ、という評価でいましたが、本人の意識から変わっていけばいいなと個人的には思います。
リバプールの交代について
フィルミーノをシャキリに代えたあの判断がどうしても読めませんでした。
フィルミーノがあれだけ効いていて、前半はフィルミーノ経由ですべてがうまくいっていたのに、シャキリに代えて攻めの糸口がなくなり試合終了。リバプールとしては惜しい試合だったなと思います。(シティから見たら勝つべきでした)
今日のように4-2-3-1でトップ下を使うならフィルミーノの控えは南野一択じゃないかと思っています。試されたこの半年でクロップの期待に応えられなかったという意見もありますが、この世界クラスひしめくスカッドの中、安定した時間をもらえず活躍するのも難しい。(ジョタは置いといて)
フィルミーノは受けてはたいてリズムを作ってくれますが、後半10分でそれがシティに防がれ始めました。それに対するものは南野であってほしかった。
フィルミーノよりも前を向いてゴールへの意識が高いので、引いて受けにくるフィルミーノへの対応が頭に残るシティに対して効果的なプレーができたんじゃないかと、今となっては惜しい気持ちばかりです。
使われなければ意味がないとも言えるので、南野にはぜひとも一回まぐれでもなんでもとにかく結果を出して使われるプレーヤーにまずはなってほしいと思います。
今日のおさらい
両チームともSBがゴールの起点となりました。
・開始早々は後方でアーノルドが自由に
・シティ陣地でロバートソンが自由に(11分のPKへ)
・マネを釣りだし、ウォーカーを自由に(31分のジェズスのゴールへ)
・サリーダでカンセロを上げさせ自由に
SB目線で試合の展開を眺めると、
サッカーにおいて、SBの配置がどれだけ大事か見えてくるような気がしました。
この試合で、またインターナショナルブレイクに入ります。ヨーロッパの国々はフレンドリーマッチ1試合、ネーションズリーグ2試合の計3試合を戦うようです。
アタマオカシイ
クラブに戻ったらまた試合。そろそろまた、デ・ブライネが怪我のリスクを訴えると思います。
再開後はモウリーニョ率いるトッテナムとの試合が待っています。
トッテナムは現在2位。前回対戦時は可変式システムを使い、シティを苦しめたトッテナム。次はおとなしくしていてほしい。
マンチェスターシティが出てくるThe keeperを鑑賞しました。
感想はまた別の機会に。
それでは!