マンチェスターシティ 20-21シーズンレビュー
こんにちは。
tadashiです。
今シーズンのプレミアリーグを2年ぶりに優勝で終えたマンチェスターシティ。
一時は今シーズンのシティはだめだと思われた中で、見事な修正を見せた。
復活と呼んだ人もいたが、復活と呼ぶにはあまりに短期間で、あまりに変更が少なかった。
復活ではなく、単なる修正だった。
ペップは、シーズン序盤のチーム状況、スカッド、このコロナ禍のサッカー、そして現代サッカーのハイインテンシティ、ファンマ・リージョのアシストを得て、効果的にかつ対策されにくい修正を施したのだ。
さて、前置きはこのくらいにして今シーズンのペップシティを印象的な風景を切り取って振り返っていこう。
- 始まりは突然に
- ルベンディアスの加入がもたらしたもの【第2節~第13節】~重心低め4-2-3-1期~
- ストライカーギュンドアン【第14節~第29節】~4-3-3ゼロトップ期~
- フォーデンの独り立ち
- カラバオカップ4連覇とプレミアリーグ制覇【第27節~第37節】~気の抜けた総力戦期~
- アグエロの退団とラストゲーム【プレミアリーグ最終節】
- すぐそこまできていたビッグイヤー【チャンピオンズリーグ決勝】
- [コラム]カンセロロールとはなんだったのか
- ジンチェンコ特集
- 契約延長とさよなら
- 記録の部屋
始まりは突然に
マンチェスターシティの新シーズンの開幕は、非常に物足りないものだった。
物足りないという表現が適切かはわからない。それでもやはり物足りなさを感じたスタートだった。
世界中に蔓延した新型コロナウイルスの影響により、サッカーは絶望の状況を迎えた。
それでもかろうじて無観客という形で再開したヨーロッパサッカーは、確実にゆっくりと今シーズンのチーム作りに影響を与えた。
チャンピオンズリーグでトーナメントに進んでいたマンチェスターシティは、集中開催という手段で試合をこなし、失意の中ようやく19-20シーズンを終えた。
準備期間はほとんどなかった。
それでもプレミアリーグは20-21シーズンをスタートさせた。
開幕時点での戦力の上積みは、ボーンマスから獲得したオランダ人ディフェンダーのナタン・アケとバレンシアの20歳のウインガー フェラン・トーレスだけだった。
かわりに抜けたのはダビド・シルバ。
空いた穴が大きすぎた。
ルベンディアスの加入がもたらしたもの【第2節~第13節】~重心低め4-2-3-1期~
第1節が延期となっていたマンチェスターシティは、2試合目となった第3節 レスターと戦う。
選手のコンディションの問題が危惧されたが、第2節では19-20シーズンにダブルをくらったウルヴスに勝利したシティ。ファンもみな、そこまで崩れないまま尻上がりにベストコンディションへ向かうだろうと思っていた。
結果は5失点の大敗であった。
どれだけ好意的にこの試合を捉えても長い長いシーズンにポジティブな予想はできなかった。
疲れのとれていない重い11人が苦しそうにボールを追いかける姿が思い出される。
だれもがチャンピオンズリーグでリヨンに負けた心の傷が癒えていないこと、昨シーズンの守備のほころびが修正できていないことを語った。
だれもがまるで評論家のように今シーズンのマンチェスターシティのネガティブな側面を記事にした。
そんな中で現れたのが、ポルトガル人CBのルベンディアスだ。
9月27日。コロナ禍であったからこそ可能だったこのタイミングの移籍で、ベンフィカからやってきた23歳は、イングランドではまだ無名だ。
加入後たった2回の練習をこなして挑んだ第4節リーズユナイテッド戦でプレミアリーグデビュー。
チームとしてはドローで終わったが、堂々のデビューを見せたルベンディアス。
この試合の後から第27節マンチェスターユナイテッド戦までの間に複数失点はたったの1試合だけだった。
マンチェスターシティにとってのルベンディアスは、コンパニー退団後に不足していたピッチ上のキャプテンという存在だ。
ディフェンス能力の高さはベンフィカでも証明していたかもしれないが、彼の言葉や行動がストーンズを引き上げ、チームを統率し、守備の向上したシティと言われるまでになった。
たった一人の加入でチームがここまで変わるものかと驚いた。
守備の安定を手に入れたマンチェスターシティは、リーグの順位を順調にあげるものだと思っていたが、
第13節を終えてマンチェスターシティは勝ち点20の9位。
こんなことをだれが予想できただろうか。
第13節までの基本フォーメーション及びスターティングイレブンは図のとおり。
第4節以降ルベンディアスが加入して守備が劇的に向上した。
4-2-3-1で左SBはカンセロとメンディー、右WGはフォーデンとマフレズを使い分けていた。フェラントーレスとベルナルドシルバ、そしてラポルトはサブの扱い。
失点は12失点でかなり少なかったが、問題は得点力不足。
リーズ戦からリバプール戦までの5試合はすべて1得点のみで複数得点はなし。
トッテナムには無得点で敗退。
1得点だったマンチェスターユナイテッドとWBA戦で引き分けた第13節時点で、累計得点数は18点。
昨シーズンの37得点と比較すると物足りなさが否めない。(38試合で比較しても20点以上少ない)
失点は12失点だが、昨シーズンの14失点とあまり変わりがないことを見ると、単純に攻撃における優位性が効かなくなってしまったと言える。
理由は明白である。
攻撃面で言えばアグエロの不在とデブライネへの依存。
そして守備で言えば4-3-3のブロック守備とボールロスト後のハイプレスの限界であった。
このマンチェスターシティが短期間で、かつ、少ない変更で、修正できたのはこの問題を解消したからである。
ここからマンチェスターシティはプレミアリーグをひっくり返していく。
ストライカーギュンドアン【第14節~第29節】~4-3-3ゼロトップ期~
第13節のWBA戦までの12試合のうち半分の6試合で4-2-3-1のシステムを採用し、アンカーを2枚並べ、その一角にギュンドアンを起用していたペップ。
これは守備の安定とコンディションの整っていない選手たちへの配慮でもあったと推察できる。
しかし、これでは前に必要な選手の数が足りなくなり、5レーンを活用した攻撃を展開することが難しくなった。
この回答には、一瞬だけ「カンセロのフリーロール」が組み込まれたが、守備の面で課題が多く断念。
そうこうしているうちに12試合を終えてしまったが、マンチェスターシティはこの次の第14節セインツ戦をターニングポイントに、状況を大きく変えていく。
第14節セインツ戦から第29節ウルヴス戦まで15連勝。
全コンペティションで見ると21連勝を達成し、これは5大リーグでの歴代3位の記録になった。
プレミアリーグでは第20節で首位となった。
この図は、プレミア開幕からマンチェスターシティの順位の推移を表したものだが、20節で首位にたってから一度もその座を明け渡すことなくリーグを走り切っている。
チャンピオンズリーグでもグループリーグ突破を決め、素晴らしい流れで後半戦を戦うことができた。
この間の基本フォーメーション及びスターティングイレブン
この時期はFWが固定されず、ギュンドアンの得点能力を最大化するためのゼロトップでひたすら勝ち続けた。(年末のウォーカーとジェズスのコロナ感染も影響はあると思うが)
WGはフォーデン、マフレズ、スターリング、フェラントーレスをうまく融合させ、FWにはベルナルドシルバ、デブライネ、フォーデン、ジェズスをコンペティションの勝ち上がり、スケジュールを見ながら起用。
デブライネが怪我で離脱したリーグ戦5試合は、その穴をすべてベルナルドシルバが埋めている。
DFラインでは年末ごろにカンセロがブレイクした形となったが、終盤にはウォーカーとジンチェンコの安定感抜群コンビに落ち着いている。
ここまでの成績を収めることができた要因がペップの少しの変更である。
ペップの少しの変更
前項で、私が挙げた問題点を今一度復習しておこう。
もう少しわかりやすく4つの問題としてみた。
1.アグエロの不調によるスコアラー不在
2.シティにおける王様デブライネへの依存
3.4-3-3ブロックでの守備の弱点
4.ボールロスト後の相手陣内からのハイプレスの限界
まず、スコアラーの問題。
これはほとんどの人たちが予想していなかった方法で解決された。
それはギュンドアンをゴール前に飛び込ませることだ。
もしかしたらペップではなく、リージョの提案かもしれないが、第13節の後半からギュンドアンのポジションが高くなった。この試合では得点が必要だったからもしれないが、ギュンドアンは先制点を決めている。
この試合からギュンドアンは怒涛のゴールラッシュ。
0トップを採用したのもギュンドアンの覚醒に合わせてのこと。
ジェズスを起用しても同様の効果が得られた。
引いてボールを受けに来たFWの裏をギュンドアンが狙う縦のポジションチェンジで多くのチャンスと得点を得た。
第13節から12試合で11ゴール。2021年になってからは9試合9ゴールと絶好調だった。
結局ギュンドアンはチーム内得点王でシーズンを終えた。
第13節WBA戦で露見されたのが、デ・ブライネ依存による得点力不足であった。
WBA戦はそれが顕著に表れた試合でもあったが、前半戦のマンチェスターシティは、なかなか相手の守備をこじ開けられずに攻めあぐねる展開が多かった。
このWBA戦では残り10分の時間帯で、ひたすらデブライネがクロスをあげ、跳ね返されるというシーンがあり、これでは点が取れないと強く思ってしまった。
現に、後半残りわずかでデブライネがクロスをあげるシーンになると、シティファンは肩を落として「今日は終わりだ…」と思うほどだ。
昨シーズンまでのシティでは、デブライネがインナーラップし、ペナルティーエリアぎりぎりのラインから高速クロスをニアサイドに蹴りこみ、大外で待つスターリングやアグエロが触るだけでゴールというシーンを何度も見てきた。
パスだけに特化した選手ではなく、相手の嫌がるところに走ることのできるアジリティの高い選手なのがデブライネ。
少なくとも前半戦のデブライネは、まるで走るだれかにパスを放るマシーンのような役割となっていたことを考えるといたたまれない。
デブライネはいつだってプレーで知らしめていた。ラストパスを出すためにいくらでも走れると。
その解決策を見出したのが第14節のセインツ戦であった。
ベルナルドシルバがボールを持ち、デブライネが走る。
今までのデブライネがボールを持ったら周りが走る、という状況から一筋の光が見えた試合だった。
私はこの試合を見て、マンチェスターシティが戻ってくると思ったことを今でも覚えいている。
現にSNSでも、この状況を打開するのはベルナルドシルバだとつぶやいていたほどだ。
引いた位置から最高のパスを出す、ペナルティーエリア手前から人外なミドルシュートを叩き込む、そして前線に走りこんで高速クロスを放つ、そのどれもがデブライネで、そのどれもが均等に行われる可能性があることが重要なのだ。
プレミアリーグだけでなく、ヨーロッパ中で流行しているのがゴールキーパーからのビルドアップ、広いピッチにうまく人を配置したプレス回避である。
たぶんその流行の最もたるチームはマンチェスターシティであり、ビルドアップが詰まったり、相手がハイプレスであれば、エデルソンに下げてサイドチェンジを行う。
サイドで奪おうとしたり、プレス回避のために大きく蹴られるロングボールを回収したりする守備はマンチェスターシティにまったく通用しなくなった。
マンチェスターシティも同様のことを他チームにやられていた。
少しだけ図を使って解説したい。
3バックでも、4バックでも、GKがボールを持つと 、CB、WB、SBがサイドラインまで開く。
マンチェスターシティは序盤戦、この相手GKにプレスをかけ、WGでペナルティエリア幅に開くCBをマークした。
4-3-3による守備を行っていたのだ。
すると図からもわかるが、サイドラインに開いた選手がぽっかりと空いてしまう。簡単に前進されてしまうのだ。
これはボールロスト後のハイプレス時にも同様で、無類の強さを誇った18-19シーズンのようにはいかず、GKを経由したプレス回避ではがされてしまった。
そもそも全体的に能力が向上した現代フットボールの選手たちは下位チームでも中央の選手(センターハーフ、センターバック、ゴールキーパー)には技術の高い視野の広い選手を置いている。
どのチームにもなんとなくボールを動かされるようになったマンチェスターシティが変えたのが3つ目と4つ目の変化。
4-4-2守備への移行とボールを持たれることの許容だ。
これによりファーストディフェンスの3トップを簡単に突破されなくなり、だれかが飛び込んでどこかが数的不利になることも減った。
これまでのマンチェスターシティは、ボールを持つことが自分達を守る最大のディフェンス行為だったのだが、ルベンディアスという最強の盾を得たことで「引いて受けても守れる」という自信を得てしまった。
これは強い。
(最大の要因はハイプレスを連続するインテンシティに耐えられる陣容ではなかったのかもしれないが)
とは言え、選手を獲得するとか監督を変えるとかそういったことをせずに既存の戦力でシーズン途中でチームを引き戻したマンチェスターシティのスタッフたちにはありがとうと伝えたい。
そのほかに印象に残った試合はこの2試合。
まずは、カンセロロール初お披露目のニューカッスル戦。
次がチェルシー戦。
13節のデブライネ依存の現実を受け入れ、14節とニューカッスル戦で戦術に1さじ加え、チェルシー戦で形とした。
この4試合の約1か月のシティの動きは、ペップと選手たちの苦労とその結果が見られたとても良い例であったと思う。
フォーデンの独り立ち
今シーズンのフォーデンを語らないことには、マンチェスターシティの振り返りにはならない。
今シーズンもっとも早く得点とアシスト両方で、二桁を達成したシティグループの才能は、大切に大切に育てられた結果ついに、いや、当たり前のようにチーム内での地位を確立した。
もっとも僕らの記憶に刻まれたのはチャンピオンズリーグラウンド8ドルトムント戦の2ndレグでのミドルシュート。
ショートコーナーからボールを受けたフォーデンは、左足を振り抜き、ニアサイドにボールが吸い込まれた。
そして、プレミアリーグ第23節のリバプール戦のゴールも忘れられない。
左からのサイドチェンジでボールを受けたフォーデンは、そのままペナルティエリア内に侵入。
左足の細かいタッチで一瞬のコースを作り出したその刹那にはボールはゴールネットを揺らしていた。
マンチェスターシティの未来そのものだ。
右足を軸に軽く跳ねるように左足でドリブルする彼の活躍をもっとも喜び、当然に実現させたのはペップである。
個人的には、敗戦したプレミアリーグブライトン戦のハーフラインからのドリブルシュートが衝撃だった。
チームでパスを繋いで崩していくマンチェスターシティが彼の台頭により、個人能力で得点が取れてしまった。
おそらく個人の突破で得点が取れたのはこのゴールだけだったと記憶している。
今のマンチェスターシティにはない突破力を感じ、彼が得点源となる日ももうすぐそこに来ているはずだ。
カラバオカップ4連覇とプレミアリーグ制覇【第27節~第37節】~気の抜けた総力戦期~
先にも書いたが、リーグを折り返した第20節にはプレミアリーグで首位に立った。
一時期14位という位置にいたマンチェスターシティはもうどこにもいない。
連勝街道まっしぐらの絶好調ペップシティであった。
21連勝を達成したチームは、もうプレミアリーグ優勝は手中に収めたようだった。
照準は、初のビッグイヤー獲得。
ペップには珍しく、ターンオーバーも駆使しているように見受けられた。
4-3-3、3-4-2-1、4-2-3-1、3-3-3-1というシステムを使った。
特にチェルシー戦の3-3-3-1は我々を大いに混乱させた。
こういうことをするからチャンピオンズリーグへの不安は増すばかりであった。
参考までに3-3-3-1のときのフォーメーション図を貼っておく。(ちなみに負けた)
全コンペティションで優勝の可能性があったマンチェスターシティ。
ペップは誇張表現なくトップチームのメンバーをすべて起用している。
第3ゴールキーパーのスコットカーソンも36節のニューカッスル戦で出場し、見事勝利に貢献した。
4月にはカラバオカップ決勝でトッテナムをくだして4連覇を達成。
マンチェスターシティのための大会とも言えるカラバオカップでは、一貫してステッフェンがゴールマウスを守った。
しかし、第27節(今シーズンはコロナの影響もあり、変則的なスケジュール)から第37節までのシティは少し気が抜けていたかもしれない。
マンチェスターユナイテッド、リーズ、チェルシー、ブライトンに敗戦。
それまで2敗だったマンチェスターシティは、残りの10試合で4敗した。
それにしても負けた相手がなんとも後味が悪い。
お隣さん、ペップの師匠、オイルマネー先輩に負けたのはあまり気持ちの良いものではない。
ほぼ優勝を決めていたのは本当に良かったと思った。
マンチェスターユナイテッドにも、リーズにもカウンターを華麗に決められ、チェルシーには史上最大の奇策で普通に負けてしまい、ブライトンには身長のあるCB2人に決められ逆転負けを喫した。
もう一度言うが、早めに優勝を決めて本当に良かった。
そしてチャンピオンズリーグ。
2月から再開した決勝トーナメントでは、ベスト16でメンヘングラッドバッハを、ベスト8でドルトムントと、ドイツ勢4連戦を全勝で突破。
鬼門であったベスト8を危なげなく通過した。
ここら辺から我々ファンは手が震えてくる。
次を抜ければついに決勝。
ネイマールとエンバペを擁する昨シーズンのファイナリストだ。
SNSでは、ベスト4でペップが奇策にでないだろうか、と心配する声が数多くあった。
結果はみなさまご存知のとおり、ジンチェンコ大活躍、PSGの自滅感も否めなかったが、勝利をおさめ、初の決勝進出。
相手はチェルシーに決まった。
SNSでジンチェンコ大活躍の得点シーンを分析したものがあるので貼っておくので、思い出してジンチェンコのプレーを再度振り返ってほしい。
1点目の疑似カウンターを分析
— ただし (@tadashi0716) 2021年5月5日
マフレズが倒されてフリーキックを獲得したシティ。
丸の位置でリスタート。
PSGは4-4-2の守備
イカルディまで下がり、ブロックを形成。
ギュンドアンへボールを出したときのピッチの配置はこんな感じ。 pic.twitter.com/Oy5Flekb6p
奇策が出ずに勝利をおさめたマンチェスターシティは決勝で不思議な戦い方をするのであった。
アグエロの退団とラストゲーム【プレミアリーグ最終節】
マンチェスターシティに初優勝をもたらした偉大なレジェンド
11年にわたる彼の功績はおそらくだれも超えることはできないだろう。
クラブ最多得点の記録は偉大すぎるが、彼のキャラクターはとても愛らしい。
ここまで偉大な記録とのギャップを持った選手もいない。
アグエロは退団を決め、シーズン終盤にはバルセロナへのフリー移籍がアナウンスされた。かつてペップが率いたカタルーニャへ。
それでも、ファンの心はアグエロから離れることはない。
それはアグエロが、心のなかでいつまでもマンチェスターシティのアグエロだからだ。
今シーズンのアグエロはコンディション不良、怪我、そして新型コロナウイルスと満足のいくシーズンを過ごせていない。
アグエロはプレミアリーグ第5節アーセナル戦、第6節ウェストハム戦でスタメンとなったが、第26節再度ウェストハム戦でスタメンとなるまでは途中出場がたったの3試合だけだった。
得点は第37節までに2点。
歴代最高のストライカーが少し寂しい感じもした。
チャンピオンズリーグでは、7試合に出場したが先発出場は1回。
得点は2得点であった。
第37節のブライトン戦で、2点リードしながら10人のシティはブライトンに逆転されて負けてしまう。
プレミアリーグで優勝を決めたからと言ってこのレジェンドを負けのムードで送り出すわけにはいかないとだれもが心に思っていた。
最終節
そのアグエロはピッチに立った。
65分に現れたアグエロの姿は少しの観客と全世界のテレビの前の人たちが待ち望んだ姿だ。
これまでマンチェスターシティでもっとも得点をあげ、多くのタイトルに貢献したお茶目なアルゼンチン人に素晴らしいリーグラストを。
そう、だれもが願ったが、アグエロはそんなことは関係がなかったようだ。
出場してたったの10分で2ゴール
そしてそれをアシストしたのは今のマンチェスターシティで一番長く時間を共にしたフェルナンジーニョからのものだった。
アグエロおおおおおおおお!
私たちはずっとそう思っている。
すぐそこまできていたビッグイヤー【チャンピオンズリーグ決勝】
プレミアリーグ最終節 アグエロの2ゴールを含む5発快勝で早々に優勝を決めたリーグを締め括った。
残すところはビッグイヤーだけ。
チャンピオンズリーグのタイトルだけだった。
そう。
"だった"と言わざるを得ない。
マンチェスターシティは届かなかった。ペップはまたも届かなかった。
マンチェスターシティでヨーロッパの頂点に立つ挑戦は、来シーズンに持ち越すことになる。
それも良い。
なぜなら2021年の4月にペップはマンチェスターシティとの契約を更新したからだ。
少しだけ試合の話を。
チャンピオンズリーグ決勝【マンチェスターシティ0 - 1チェルシー】
なぜなら今シーズンロドリもフェルナンジーニョも出場しなかったのは、唯一この試合だけだったからだ。
マンチェスターシティは、チェルシーのコンパクトな守備におおいに苦しめられた。
後ろの7人がブロックをつくり、マウントとハヴァーツでハーフスペースを埋める。
唯一、ボールを受けられたのは左のハーフスペースだったが、それはデ・ブライネだからスペースとしてボールを受けられただけ。
マンチェスターシティがここまでフィニッシュでもたついたのは、幅を取る両サイドで質的に大敗したからだ。
チェルシーのWBは最高の自信を持ってプレーしていた。途中からスターリングは、突破を諦めていたように見えた。
一方のチェルシーはマンチェスターシティをどう攻略したのかを簡単に考察。
マンチェスターシティは、今シーズン4-4-2ブロックで受ける守備に切り替えたことにより、相手チームのGKがわりとボールを持てることが多かった。例に漏れずチェルシー戦も同様だった。
少しだけ違うのは、上の図を見るとわかるが、マンシティは4-4-2と言いつつ、両サイドが高い位置で、3CBの両CBをマークするような立ち位置を取っていた。
これでは4-2-4である。
引いてチェルシーのWBをマークすればいいのに、と思った人もいるだろう。私も思った。
しかし、前半何度なくヴェルナーが裏を狙った。
後方の選手からヴェルナーへパスが出されていた。
マンチェスターシティは、こういった展開に弱い。なぜならウォーカーを除いてシティのディフェンダーにはスピードが少し足りない。
そうなると後ろからパスを出されないようにする必要があるため、上の図のようになる。
もちろんカンテとジョルジーニョの中央も厄介なので、デ・ブライネ、フォーデン、ギュン、ベルで抑える。
残りはチェルシーの前線3枚に対してシティのDFが4枚。同数以下にはできないので、やはり上の図のようになる。
前半40分、42分とまったく同じようにGKからWBにボールを逃がされてそこからゴール前に運ばれたのが失点の要因だった。
チェルシーがうまかったのは、ウォーカーサイドにボールを逃がしたことだ。
ウォーカーが一列前に出てWBに対応することになるので、ヴェルナーやハヴァーツとよーいどん!で走り合うのはルベンディアスとジンチェンコになる。
逆にジンチェンコサイドに逃げていたら、走り合うのはウォーカーとストーンズ。
チェルシーが選択したプレーの正しさをシティファンならわかるだろう。
そういうことだ。
マンチェスターシティは、来シーズンもう一度同じ舞台を目指す。
そしてビッグイヤーを掲げる。
これを期待して新シーズンに向かいたいものである。
[コラム]カンセロロールとはなんだったのか
コラムと題して語るのは今シーズンのマンチェスターシティでのカンセロの活躍だ。
一瞬のうちに多くのメディアや個人が「カンセロロール」という言葉で、マンチェスターシティの試合におけるカンセロの役割について分析した。
私もこのタイミングで”カンセロロール”について語ってみようと思う。
まず、カンセロロールはほんの一瞬の出来事だった。
偽SBとは違うカンセロの動きはつかみにくく、チャンスクリエイトに長けたプレーは攻撃に新たなアクセントを与えた。
結論から言うと、”カンセロロール”はただの”カンセロのフリーロール”である。
ここで私の考える偽SBといわゆるカンセロロールとの違いを説明する。
この違いはボール保持とネガティブトランジションでの役割を見ることで明確になる。
【ボール保持】
ペップがバイエルンで編み出した偽SBは、SBの選手が内側に入り、アンカーの横に位置取ることで、より安定的なビルドアップと、ウインガーへの質の高い配球を狙ったものである。
これはマンチェスターシティでも同様で、ジンチェンコやカンセロがアンカーの横に並んだり、ウォーカーがCBの横に入ったりと従来のSBと異なる動きを指導していた。
第16節エバートン戦のボール保持の形を例に。
この試合左SBのカンセロがロドリの横に動き、スターリングとマフレズが幅を取っていることがわかる。
右SBのウォーカーはCBと同じ位置で内側に絞っていることも見て取れる。
一方で、今回アーセナル戦で構想を得て、第15節ニューカッスル戦で披露された”カンセロロール”とはどういうものかというと、SBがアンカー、IH、トップ下の位置をボールと相手の配置によって様々に変えていくものである。
第15節ニューカッスル戦を例に。
カンセロがロドリの位置も飛び越えてトップ下のデブライネの位置まで上がっていることがわかる。
この試合ニューカッスルが守備的にブロックを作っていることも影響しているが、カンセロとギュンドアンをハーフスペースに立たせ、相手の5バックがつり出されたところで裏を狙うこともできるため、容易に最終ラインから縦パスが入っていた。
このように、”カンセロロール”と呼ばれていたカンセロの動きは、本来の偽SBのパスの出し手という目的から、パスの受け手になることを状況を見ながらその都度判断して、相手の守備組織を破壊していくプレーだったのである。
【ネガティブトランジション】
先ほどのボール保持の図を見てもらい、パスを相手にカットされた瞬間というのをイメージしてもらえるとわかりやすい。
偽SBは、SBがアンカーの横に並ぶため、 ボールロスト後のファーストディフェンダーにもなれるし、4バックに戻ることもそこまでの距離を走らずとも可能である。
ポゼッション高めに試合を進めるチームにとっての被カウンター対策としても偽SBは有効である。
一方で、”カンセロロール”ではどうだろう。
上のニューカッスル戦の2枚目の図で、ニューカッスルのDFラインと中盤の間でボールを奪われたときにカンセロの戻る距離は、おそらく偽SBの位置から戻るよりも倍以上の距離が必要で、カンセロが間に合わなければだれかがその代わりを負担しなければならない。
カンセロロールでは、ファーストディフェンダーにはなれず、相手のカウンターを追いかける形になってしまうこともなんとなくイメージができるだろう。
カンセロロールという言葉が出たことは、カンセロの能力を象徴するとても素晴らしい表現であるが、ニューカッスル戦以降このカンセロの使われ方が頻繁に行われたわけでもない。
カンセロに徹底してマンマークをつけたり、カンセロが入るであろうエリアに人を配置していたり、とプレミアリーグの監督たちはすぐに対応してきたためである。
また、こぞって「カンセロの裏」「カンセロの守備における判断の甘さ」を狙ってきていたこともあり、終盤になるにつれ、偽SB以上の役割はカンセロにも与えられなかった。
おそらくペップは、対戦する相手が5-4や4-5のブロックで横幅もコンパクトにしていたことで手詰まりとなっていた攻撃に、カンセロを入れることで、カンセロのために手を打ってくるであろうことを想定していたのだと思う。
つまり、カンセロを自由に攻撃に参加させることで、対カンセロを意識した守備を対戦相手は考えることになる。
その意識を利用して、カンセロを起用しながら通常の偽SBを活用するなどして、マンチェスターシティの攻撃の的を絞らせないようにしたと考えらえる。
ということは、このカンセロロールという言葉が一時でも生まれたことは、ペップの思惑通りだったのかもしれない。
ジンチェンコ特集
閑話休題。
少し頭と心を休めておこう。
マンチェスターシティで好きな選手は?と問われたら必ずある選手の名前を言うようにしている。
ジンチェンコだ
シティのユースに加入してからレンタルで武者修行をしたのちレギュラークラスにまで上り詰めたマンチェスターシティでは稀有な存在である。
そんなジンチェンコの今シーズンを振り返ろう。
■プレミアリーグ
プレミアリーグでのジンチェンコは、前半戦と後半戦でチームでの立ち位置をがらっと変えた選手だった。
第15節まで出場は0
左SBはカンセロとメンディーだった
状況が変わったのは、メンディーが調子を落とし、ウォーカーがコロナ陽性となったことから。第16節にリーグ初出場を果たした。
そこからのジンチェンコの活躍は、みなさまご承知のとおり。
外と内のポジショニングを巧みに使い分け、外からは中央へ的確な斜めのパスを通し、内側ではビルドアップに貢献し、ディフェンスではファーストディフェンダーとして機能した。
20-21シーズン
- 第2節~第15節 0試合出場
- 第17節~第38節 20試合出場(先発15試合)
- 1試合あたりのタッチ数 84
- 1試合あたりのキーパス数 0.8
- 1試合あたりパス成功数 90%
- 自陣での正確なパス 92%
- 敵陣での正確なパス 85%
■チャンピオンズリーグ
チャンピオンズリーグでは、9試合に出場し、1アシストを記録。
マンチェスターシティ初の決勝でもしっかりとプレー。
唯一の失点に関与したようにも見えるが、あれだけCBが持ち場を離れさせられてはSB一人で守るのはかなり難しい。
トゥヘルの作戦勝ちだと思う。
もっとも印象的だったシーンは、ベスト4PSG戦。
ネイマールのドリブルについていき、ストーンズとのダブルスライディングでシュートブロックをしたシーン。
シュートブロック後のストーンズとのお互いを称えあう抱擁は見るものの心を震わせた。
■EURO2020
ウクライナ代表として出場し、ベスト8となったジンチェンコ。
監督のシェフチェンコは、攻撃の核をジンチェンコとし、テクニカルなチームを作った。
ジンチェンコは5試合すべてに出場し、1ゴール1アシスト。
ベスト16のスウェーデン戦では、MVPに輝いた。
個人的にもっとも印象的だったのが初戦のオランダ戦。
3失点目を自分が競り負けて与えた後の悔しがり方、強引なドリブル。
チームを勝たせたい。自分のミスを取り返したいという強い思いを感じた。
だからこそ、グループリーグを突破したときは私もとてもうれしかった。
■その他
棒になるジンチェンコ
ルベンディアスのキャプテンシーを世に知らしめたのはジンチェンコかもしれない。
フリーキックのときに、壁の後ろで横になり、飛んだ壁の下を抜けるボールをブロックする役割は近年のサッカーではよく見かける。
マンチェスターシティでは、どうやらジンチェンコがその役を引き受けているようだが、位置がいまいちだったのかルベンディアスがジンチェンコを引っ張るシーンが全世界に放映された。
そしてなにを思ったか、そのシーンを切り取って自身のインスタグラムに投稿したジンチェンコであった。
犬を客に見立てて奥様とシェフごっこ
いったい我々はなにを見せられているのか。
いや、インスタグラムをフォローしているのは自分なのだから自分から見に行っていると言われたらそれまでだが、奥様との仲睦まじい姿を見せられてはジンチェンコを嫌いになれる人なんていない。
よくサッカー選手は奥様に価値を下げられたり、チーム内で立場が危うくなったりすることが見られるが、リポーターである奥様も目立つ気はなく、ジンチェンコをサポートしているようだ。
この心身の安定が今シーズンのプレーに繋がったのだと思う。本当に感謝しかない。
しかし、犬を客に見立ててシェフごっこはしないし、したとしてもインスタグラムに載せたりもしない。
どうてもいいことだが、私も奥様とは仲良しだ。
ちなみにジンチェンコの奥様が第1子を授かったことをインスタで知った。
ジンチェンコもお父さん。
チビライネやチビターリングとともにチビチェンコの成長にも期待したい。
契約延長とさよなら
シーズンオフにはどうしても悲しいことが起きる。これまでともに戦ってきた仲間たちがいなくなってしまうからだ。出会いと別れの季節はサッカー界では、真夏と真冬にやってくる。
契約延長
2023年までの契約延長。
ペップ監督人生の中で最も長い7年シティを率いることになる。
ケビン・デ・ブライネ
2025年まで契約延長。
引退までシティにいてくれるだろうか。
2022年まで一年間の契約延長。
彼がいる間に後進の育成に。
さようなら今までありがとう
いなくなってしまう選手たちも紹介しておこう。これからどんどん増えていくかもしれない。
寂しい。
移籍市場特有の適当な噂もたくさんある。
ジェズス、ベルナルドシルバ、ラポルト。
8月8日のコミュニティシールド、16日のプレミアリーグ開幕戦、31日の移籍市場クローズではどんな陣営で新シーズンを歩むことになるのだろうか。
記録の部屋
最後に、20-21プレミアリーグのマンシティを記録で振り返っていこう。
プレミアリーグ成績
勝ち点86で堂々の優勝。
優勝自体は数試合を残して決めていたので、最後は失速したが2シーズンぶりの優勝を味わうことができた。
ポイントは守備の安定感と言いたいところだが、数字だけ見ると19-20シーズンの35失点と比較してもあまり変わりない(20-21は32失点)
理由は終盤の大量失点とレスター戦の5失点。
シティとしては得点数が20点以上少なかったことを問題ととらえているかもしれない。この夏の移籍市場でまだ動きはないものの、攻撃的選手を狙っていることはうかがえる。
チーム内得点王
1位 13点(17点) ギュンドアン
もっとも印象に残ったのは、第17節のチェルシー戦で、左からのパスを右足の後ろを通してトラップし、右足で冷静に振りぬいたゴールと、
第24節トッテナムにリベンジを果たしたエデルソンのロングパスからダビンソンサンチェスを華麗なステップで尻もちをつかせたゴールだ。
ダブルボランチで起用されるギュンドアンは、どこかやりにくそうで、まるで水を得た魚のようにゴール前に顔を出すギュンドアンは見ていて楽しかった。
2位 10点(14点) スターリング
今シーズンのスターリングは派手なゴールがなかった。なんとなくそこにいたことで生まれたゴールが多かったように思える。よりストライカー的な感覚が高まったシーズンだとも言えるが、決め切りたいところでのゴールがもっとほしかった。
ドリブル突破もほとんどしない自信のないスターリングがシーズンの終わりには多く見られた。
EUROではイングランド代表として決勝進出の立役者となったスターリング。来シーズンの再起を期待。
3位 9得点(14点) マフレズ
ボロ負けした第3節レスター戦でのコーナーキックのこぼれ球を右足で振りぬいたゴールがもっとも印象的だった。
マフレズもレスターにいるときより大分プレーの印象が変わって、ドリブル突破やキープが少なくなり、裏への抜け出しや右足でのシュートが増えていた。
自分のストロングポイントを利用したこの2つのプレーは、大いに有効だったが、マフレズのドリブルはもっと見たい。
※()内は、全コンペティションの数字
チーム内アシスト王
1位 12アシスト(17アシスト) デブライネ
基本的に、人を辞めたかのようなプレーを連発するが、もっとも印象的だったアシストは右サイドから左足でピンポイントクロスを送った第26節ウェストハム戦でのルベンディアスへのアシストだ。
コーナーキックのこぼれ球をジンチェンコ、ウォーカーとつなぎ、ロングボールでデブライネに渡ったところ。内側にトラップしたデブライネは迷うことなく左足を振りぬいた。ハイライトを見てもらうとわかるがけっこう距離があり、緩いボールではキーパーが出てきてしまう。
スピードも滞空時間もすべてがパーフェクトなパスを利き足とは逆足で蹴ることができる。20-21シーズンもお願いしたい。
2位 7アシスト(10アシスト) スターリング
シーズン終盤は悪い評価もあったが、序盤のシティの得点減だったし、最終的にリーグでは得点もアシストも2位なのだから十分の活躍。
今シーズンはギュンドアンへ送ったいくつかのアシストが思い出される。左から中央に移動し、そこからタイミングを見て、ペナルティエリアを突破し、切り返したところで走り込んでくるギュンドアンにラストパス。
ギュンドアンの得点を加速させてくれたのは間違いなくスターリングだった。
3位 6アシスト(8アシスト) マフレズ
スターリングと同様にマフレズも得点とアシストで上位に入ってきた。
右サイドの深いところでボールを持ち、ペナルティエリアに直角にドリブルし、右足キックフェイントからの左足クロスは今シーズン何度なく見られたシーンで、このプレーはシティの武器であったのは間違いない。
※()内は、全コンペティションの数字
出場数(先発、途中出場)
リーグ戦での出場数の上位は以下の通り
先発出場で見ると以下の通り
途中出場は以下の通り
プレミアリーグにおけるペップの中での優先度と交代枠の使い方がよく見て取れる。
特に途中出場上位3人は、試合の流れを変えるため、攻撃の切り札、試合を終わらせるためといった役割が見えてくる。
フォーデンはおそらく新シーズンはもっと試合に出ると思う。
個人的には左SBがどうなるかが気になるところだ。
得点と失点の分析
得点数:83得点
失点数:32失点
上のデータからもわかるように今シーズンは総得点が減った代わりに守備が向上したシーズンだった。ハイプレス一辺倒だった守備はピッチ中央まで引いて受けることも実践するようになった。
ルベンディアスという安定を得たことは引いて受ける守備に移行できた要因でもあるのは間違いない。
さて、得点数の減少はどう説明できるだろう。
二桁得点がギュンドアンだけというのは要因に違いないがそれよりも、FWの不調という要因の方が大きい。
アグエロのコンディションがシーズンを通して万全にならなかったこと、ジェズスがより守備での貢献が高まり、引いて受ける技術が向上したこと、スターリングが自信を失ったことがぱっと思いつく。
この問題を解決するのは、ホーランドか、はたまたフォーデンか。
ジェズスやデラップが殻を破るか。
パサーはたくさんいるので、あとはスコアラーだけだと思うのは私だけではない。
失点についてもう少し細かく見ていきたい。
失点についてシーズン途中の段階でまとめた記事があるのでここで紹介しておく。暇があったら読んでみても面白いかもしれない。
これをもとにマンチェスターシティを倒そうと考えたのが次の記事である。あまりにもばかげているがかなり力を入れて書いた。
このブログを何度か読んでくれてる人にはおなじみの失点分析に活用されるピッチの分割イメージである。
32失点をすべて見て、一つずつどの番号からの失点かを記録した。
かなり時間がかかったが、試合が終わるたびにやっていたのでそこまでの手間にはならなかった。だがしかし、時間はもっと大切に使ってほしい。
その結果が上の図である。
さて、どの位置からの失点が多いのか、弱点はどこだろうか、絶対にわかると思う。
ん?
んん??
最も失点しているのは
PKからであった。
気を取り直して、同じ条件でマンチェスターシティの得点を記録した。
それが以下の図である。
このPKの少なさはなんだ。
得点と失点両方を比べてわかるのは、マンチェスターシティは相手ペナルティーエリア内に侵入し、成功しているが、同じ割合だけ相手にも侵入されている。
②、③、④、⑧でのゴールが得点でも失点でも生まれいて、PK以外の傾向が同じなのが驚きである。
素晴らしいクロスから得点決めたりしていればクロスを上げた位置をカウントしていたにもかかわらず、①、⑤が少なかったのは、奥深くまで侵入することもなく、侵入もされていなかった。
SBの裏を取られるのがかなり高い位置のマンチェスターシティは①、⑤の位置からクロスを上げられることは少なく、チャンスにもならなかった。
一方で、攻撃の際には①、⑤に侵入することはほとんどない。
38試合を見た傾向はこの二つのグラフからもしっかりと読み取れた。
ただ、それよりもマンチェスターシティは、PKを与えないようにして、PKを決められるようになってほしいと心から思う。
対シティのフォーメーション
最後にマンチェスターシティと対戦したフォーメーションをまとめてみた。
4-2-3-1が最も多かった。
3バックや5バックが主流になったかと思っていたが、案外シティ相手には4バックが多いことがわかった。
シティに勝利したチームは、
レスター(5-4-1)、トッテナム(4-2-3-1)、マンチェスターユナイテッド(4-2-3-1)、リーズ(4-1-4-1)、チェルシー(3-4-2-1)、ブライトン(3-5-2)
の6チーム。
この6チームはリーズは置いといて、このフォーメーションが「シティのIH及びハーフスペース活用を阻害」するのに適したものだったということがなんとなくわかります。
3バック、5バックは初めから5レーンに人を配置する。
4バックの2チームはアンカーの2枚がIHの動きに対応する。
というところでしょうか。
うーん、いまいちです。
これはそのときのシティのフォーメーションとの紐づけをしないといい考察はできそうにありません。これは20-21シーズンの課題としたいと思います。
長くなりましたが、以上となります。
飛ばしながらでも、読んでいただいて本当にありがとうございました
マンチェスターシティを愛するものとして、マンチェスターシティがこの1年をどう過ごしてきたのかを毎年書き留めていきたいと思っています。
初戦は8月16日のトッテナム戦。
新シーズンハリーケインがどちらのチームでプレーしているか注目が集まる開幕戦。
EUROも終わり、いよいよプレミアリーグの開幕の空気がイングランドの方角から漂ってきています。
それでは!