2年間に見る久保建英 ラ・リーガ第3節 マジョルカ vs エスパニョール
こんちには。
tadashi(ただし (@tadashi0716) | Twitter)です。
同じ昇格組のエスパニョールとの試合を見て、この2シーズンで見られた久保建英について書きたいと思います。
まったくもっての主観ですので、批判は快く受け止めます。
楽しんでいただけたら。
19-20シーズン
2019年の夏に久保建英は、JリーグFC東京からレアルマドリードへの移籍が決定しました。
ジュニア時代をバルセロナで過ごした久保は18歳にして禁断の移籍を体験。
プレシーズンでは、レアルマドリードのクラッキたちと同じピッチで堂々とプレーする久保の姿がありました。
しかし、18歳の日本人に対して、マドリーはレンタルでの武者修行を提案。
カルバハル、アセンシオ、ルーカスバスケスなども過去に経験していることですが、まずは試合の出られるチームで1部の試合に慣れていくという育成方針となりました。
マジョルカは12-13シーズン以来の1部でのプレーということもあり、年間を通して苦戦。結果的にマジョルカは1年で2部への降格が決まってしまいます。
この1年の久保の成績は35試合出場4ゴール4アシスト。
チームの1部残留には貢献できなかったものの特にコロナ中断明けの久保の活躍は遠い日本でも十分に聞こえてくるほどのものでした。
古巣レアルマドリード相手に積極的にドリブルを仕掛ける姿にだれもが来シーズンに期待していました。
このシーズンのマジョルカは久しぶりの1部参戦ということろもあり、試合を支配する戦い方はできずに1部チームの攻撃を受け止めながらなんとかカウンターで手数をかけずにシュートで終わるといういわゆる弱者の戦い方で挑みましたが、9勝6分23敗の19位という成績で降格となってしまいました。
久保は主に右サイドを主戦場としていましたが、ボールを持つ時間は限らていました。
その中でインパクトを残そうと果敢にドリブル、パスにトライしていた印象です。
しかし、マジョルカの戦い方の性質上、前線右サイドでボールを持てたとしてもフォローはほぼなく、前線のクチョエルナンデスやブディミルが飛び出す、といったアクションしか得られませんでした。
また、基本的に「守備から」ゲームに入っていたマジョルカは、ボールを奪える位置も自陣後方であり、久保もその守備に参加してます。
そのため、前線に駆け上がろうとしても距離が長くいたずらに体力を消耗してしまい、ゴール前で決定的な仕事ができなかったと思います。
当時も在籍していたサルバ・セビージャやババ、ラゴジュニオールなど能力のある選手はいたものの今一つ久保とは合っていなかったし、欲しいタイミングでボールが出てこなかったというのも試合の中では見えました。
上でも書いていますが、この時の久保はボールを持てる回数も時間も限られていたし、フォローも少なく、チームとのコンビネーションもそこまで高くなかったため、ドリブルでの単独突破の回数が目立ったように思えます。
対峙した相手をかわすことはできてもそれがゴールにつながるわけでもなく、怖さが欠如したプレーであったことは間違いない。
終盤の中断明けからようやくそのドリブルの開始位置をゴール前に移すことができたので、怖さを作り出すことができるようになったのが、20-21、そして今シーズンにつながったと言えると思います。
マジョルカvsエスパニョール
20-21シーズンの久保建英
21-22シーズンもレアルマドリードのEU枠の関係で、ラ・リーガ内でのレンタル移籍となりました。
多くのクラブが候補となる中、レアルマドリードと久保は2シーズン前に所属していたマジョルカを選びました。
久保はインタビューの中で、マジョルカが僕を必要としてくれた、と言っていましたが、買取オプション付きのローン移籍にしなかったレアルマドリードも久保建英を評価し、必要としていると思っています。
このレンタル移籍でのレアルマドリードとのやりとりで早くも来シーズンが楽しみになったラ・リーガファンは多いはずです。
20-21シーズンはビジャレアルでヨーロッパリーグを経験したものの出場機会を求めてヘタフェへ移籍。
ボルダラス監督の負けないサッカーのためになかなか自分が求めるようなタスク、プレーができなかった久保は不完全燃焼のシーズンを過ごしたのは間違いない。
そんな中で始まった東京オリンピックでは開催国のエースとしてメダルには届かなかったものの4位で大会を終えました。
6試合3ゴール1アシスト。
国際大会U24とはいえ活躍を見せ、そしてぎりぎりでメダルに届かなかっただれもが経験できるわけではない最高の敗北を得た久保は大きな決意を持ってこのシーズンに入ったはずです。
チームへの合流が遅れた中でも開幕戦に出場。
2年前には見られなかったフィジカルを使ったドリブルを見せてくれるなど、少ない時間でインパクトを残していました。
第2節のアラベス戦はトップ下でスタメン88分間の出場。
シュートを一本も打てなかったものの、キーパス2本でボールタッチも多く、2年前よりもチームメイトからの信頼を得られているように思えました。
おそらくこの2試合で久保建英は、オリンピックの失意の感情を完全に断ち切り、心を切り替え、メンタル的にもフィジカル的にも素晴らしい状態になっているはずです。
キックオフ直後
スタメン紹介では、4-2-3-1で久保建英がトップ下の予想でしたが、試合開始直後から久保建英は右サイドに入っていました。フェルナンド・ニーニョとダニ・ロドリゲスの2トップとした4-4-2でマジョルカは試合を開始します。
解説の方からも話がありましたが、エスパニョールが4-4-2で始まったところを見て、4-4-2をぶつけたてきたのだと思います。
個人的には右SBのマフェオとのコンビネーションが見られると思い、非常に楽しみではありました。
試合は全体を通してどちらに転ぶかわからない展開でした。
マジョルカは両SBを押し上げセンターの2枚とCBでボールを運びます。
一方のエスパニョールはそこまでSBは上がりません。マジョルカの久保建英、エムバウラというサイドアタッカーをかなり警戒しているようでした。
前半は中へ意識
久保建英は、前半非常に良いプレーを連発していました。
まずは9分のヘディングシュート。
これはカットインからのシュートをフェイクとしたプレーで、パスを出した後に大外に走りこんだ久保に進化を感じました。
それと21分のニーニョへのラストパスも素晴らしかったです。
久保のような選手は、ドリブルするときにボールを見る必要はありません。
常に顔をあげ、味方の動きを認知しながらプレーを選択することができています。
時間のない人はハイライトを見ていただきたいのですが、あのラストパスにエスパニョールDFはだれも反応できていません。
42分のカットインからシュートは、後半にもありましたがシュートの威力もありキーパーに防がれてしまいましたが、非常に可能性のあるプレーです。
ドリブルの流れでパスも出せる、と相手が認識しているからこそシュートを打つ時間的余裕がゴール前で生まれるのだと思います。
試合は27分にCBからのロングボールで右から左ペナルティーエリア奥深くに侵入したマジョルカがペナルティーエリア内でのこぼれ球を拾ったダニ・ロドリゲスのゴールで先制します。
結果的にこの1点が決勝点となっています。
後半のマジョルカの守備
マジョルカが最終的に勝利をあげることができたのは、引かなかったからです。
1点差で勝っている状況では、引いてブロックを作りたくなるところですが、ルイス・ガルシア監督は前半よりも、エスパニョール陣内で素早くプレスをかけるチーム戦術を取っていました。
特に顕著だったのがサイド攻撃後の逆SBの位置。
例えば左でエスパニョールを崩し、クロスまでいったもののだれにも通らず逆サイドに流れてしまったときに一番最初にエスパニョールの選手にプレッシャーをかけていたのは右SBのマフェオでした。
この一人目のプレスにより前に蹴りだせないエスパニョールに対して、2人、3人と少しずつ人数を増やして囲い込むプレッシングは、エスパニョール優位の時間帯でも発揮され、途中勢いが出てきたエスパニョールを止めることを可能にしました。
後半の久保の印象的なプレーは2つ。
1つ目は53分のニーニョとのパス交換。
相手陣内のセンターサークル付近でボールを奪ったマジョルカは縦、横とニーニョと久保の二人でエスパニョールをあざ笑うかのようにパス交換をしていました。
最後に左足でドリブルを始めようとした久保に意識が向いたDFの隙間を縫って中央に走るニーニョにパスを出しています。
惜しくもパスは通らなかったですが、あの囲まれている状況でニーニョが中央に走る姿が見えていて、かつパスを出せる技術にため息がもれました。
81分のカットインからのシュートはカウンターからのフィニッシュ。
1点差で勝っているときのカウンターはフィニッシュで終わるのが定石。ニーニョがもたつき、右サイドの久保にパス。
久保は迷わず細かいタッチから左足を振りぬきました。
ボールを枠をそれていきましたが、狙ったところボールスピード、どちらも良くて、照準が定まってくれば得点になりそうなプレーです。
カウンターのときもしっかりと前線に走っている久保の献身性にも好評価です。後半は守備に回る時間もあったというのに。
88分に交代した久保に対して会場はスタンディングオベーションでした。
ぐるっと回ってベンチに戻る途中、久保は会場にいた子供にユニフォームを渡している姿を中継カメラに抜かれていました。
すでにラ・リーガで名前が知れ渡り、久保にあこがれてサッカー選手を目指す子供たちが出てくるのかと考えると感慨深いです。
マジョルカは、中盤センターに入るババが攻守に渡って圧倒的な存在感を見せていました。特に守備については満点を上げたいほど。
危険箇所の予測だけでなく、1対1の強さもあり、彼のところでボールが奪えたのがマジョルカのリズムを崩さなかった要因の1つだと思いました。
マジョルカはこれで開幕から2勝1分の無敗です。
面白くなってきましたね。
2年間の成長
最後に、2シーズン前のマジョルカでの久保建英と何が変わったのかを書いて終わりにしたいと思います。
当然、監督が変わりチームのスタイルが変わったのは大きな違いですが、久保建英の変化は2つあると思っています。
それは、守備への意識とその対応、そして自らの武器を活かす、です。
1つ目の守備への意識とその対応については、この試合でとてもよく見られました。
前半にマフェオとともにライン際でエスパニョールの選手を囲んだシーンがありました。
そこではすんなりとボールを奪えたわけではありませんでしたが、2年前にはなかった意識だと感じました。
また、後半には相手のCBにハイプレスをかけ、ボールを奪ったものの倒されてしまったシーンがありました。CBから見えるパスコースを消しながら瞬間的にスピードをあげ奪えたこのプレーも2年前では空振りに終わり、背後のスペースに配球されることが多かったことからチーム内での連動、意識の共有含め、守備というものに久保建英が頭を働かせているなと感じたプレーでした。
エスパニョールが後ろから繋いでいるときも、まず背後のスペースを首を振って確認したあとにプレッシャーをかけるという動きをしていて、成長が大きく見られました。
2つ目の自らの武器というのはもちろんテクニックを活かしたドリブルです。縦をちらつかせてカットインからのシュートもこの試合2本もあり、得点の可能性を感じさせるプレーでした。
しかし、私が注目したのは前半の久保建英がヘディングシュートをしたシーンです。
相手陣内のペナルティーエリア前でボールを受けた久保は、右SBのオーバーラップを確認し、カットイン。
しかし、相手もそのプレーはわかっていてラストパス、シュートを警戒されている中、左SBオリヴァンにパス。大外を選択した久保のプレーです。
2年前までは自分の武器を相手にぶつけて勝ってやろうという意識が非常に強く、実際にそういったプレーが多く、跳ね返されてそのまま守備に追われるシーンもありました。
この試合の久保はその自らの武器は当然持ちつつ、それを引き出すことを相手にちらつかせてプレーを選択できているように私には見えました。
この2年間の経験、オリンピックでの歓喜と挫折は想像以上に彼の能力を引き出してくれたのかもしれません。
ここで結果を残し、来シーズンは開幕からレアルマドリードでプレーすることを期待して今シーズンでのマジョルカでのプレーを楽しみたいと思っています。
もう一度言いますが、久保建英の守備の入り方、自分の武器のちらつかせ方は、これでまだ20歳かと唸るほどです。
普段ラ・リーガを見ない人も久保建英のプレーだけは見ておくことをおすすめします。
それでは!