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先生、ライプツィヒの問の答えを教えてください CLグループリーグ第1節 vs ライプツィヒ

こんにちは。

tadashiです。

 

本日は、いよいよ開幕したチャンピオンズリーグライプツィヒ戦をプレイバックしましょう。

 

昨シーズンペップシティ初の決勝で同国チームにビッグイヤーを掲げられ、悲願はかなえられず。

取っていないタイトルはヨーロッパのタイトルだけ。

 

では、さっそく始めていきましょう。

 

 

 

 

スターティングイレブン

配置は後のフォーメーション図を参照してください。

 

マンチェスターシティ 4-3-3

GK:エデルソン

DF:カンセロ、ルベン・ディアス、アケ、ジンチェンコ

MF:ロドリ(⇒フェルナンジーニョ)、ベルナルド・シルバ(⇒ギュンドアン)、デ・ブライネ(⇒フォーデン)

FW:マフレズ、フェラン・トーレス(⇒スターリング)、グリーリッシュ(⇒ジェズス)

 

ライプツィヒ 4-2-3-1

GK:グラーチ

DF:ムキエレ、クロスターマン、オルバン、アンヘリーニョ

MF:アダムス、ライマー(⇒ハイダラ)、エンクンク(⇒Gvardiol)、ダニ・オルモ(⇒ブロービー)、フォルスベリ(⇒ショボスライ)

FW:アンドレ・シルバ(⇒ポウルセン)

 

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5分間の問いと回答

他国のチームと本気でやりあうのはこのようなヨーロッパの大会となるわけですが、マンチェスターシティは、ライプツィヒとは初対戦。調べてみると監督同士の対戦経験もない

文字通り初顔合わせです。

チームの手の内や監督の采配も選手の能力も、試合の映像やデータから分析することになり、その強さを肌で感じるのは対戦して初めて感じることになります。

 

ラングニック派の一人だと言われるライプツィヒのMarsch監督は昨シーズンまでオーストリアリーグのザルツブルグを率いていました。前任のナーゲルスマンがバイエルンの監督にステップアップしたことで、今シーズンからライプツィヒを率いています。

 

ラングニック派と聞くとどうしてもインテンシティの高さと縦に速い攻撃、即時奪回が印象に残ってしまいますが、Marsch監督のライプツィヒはどうやらそこまで振りきれてはなさそうでした。

 

4-2-3-1を基本にし、両SBを高く張り出させ前線の4人は、ハーフスペースに二人、残りの二人が縦関係で中央に、とどこでもボールを受けられるような立ち位置を意識していました。

 

スタッツを眺めるとほぼ互角でした。

どちらが勝ったかスタッツからは読めない試合でしたが、ライプツィヒが縦に速いというわけではないと感じたのは、カウンターの回数が0だったところからです。(マンチェスターシティの守備の配置は良くはなかった)

マンチェスターシティは2本のカウンターで、2本ともシュートで終えています。

 

 

さて、長い前置きはこれくらいにして、試合を見ていきましょう。

普段ブンデスリーガを見ない人からすると、上で書いているように「ライプツィヒ=ラングニック派=縦に速い」というかなり強いイメージがこびりついています。

しかし、このイメージ通りだったのは試合開始の最初だけ。

 

そしてこの5分間はお互いが相手に対して「どうしますか?どう来ますか?」という問題提起したことで、見せ物としてのスピーディーでストロングな展開にはなかなかならない前半となりました。

 

アウェイ ライプツィヒのQuesiton

 

2列目の3枚が密集したときの"偽SB"がCBからのパスコースに入ることのできる位置を求めよ

問題っぽく書いたらわかりにくくなりました。

 

 

ライプツィヒは4-2-3-1で守備の時はこの形。攻撃では形を変えます。

マンチェスターシティは両偽SBが前線への中継役を担い、試合展開を円滑にしてくるので、ライプツィヒは2列目の3枚、右からエンクンク、ダニ・オルモ、フォルスベリがかなり近い距離で並び、偽SBによるビルドアップを阻害しようと試みます。

 

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中央のオルモがロドリをマークし、絞ってくるSBが絞るスペースを失うほど最初から近づいているのがライプツィヒの守備陣形でした。

 

つまり、マンチェスターシティのCBがボールを持ったとしても得られるパスコースは、サイドライン際のエリアということになりました。

その位置はSBのアンヘリーニョやムキエレがカバーし、シティのビルドアップを受けながらも全体として前向きな守備を行っていたと言えます。

また、開始30秒ぐらいでロドリへのハイプレスからボールを奪ったことで、ロドリの積極性はかなり落ちました。

この二つの事象でライプツィヒサイドからサイドに展開するシティの攻撃パターンを途中で食い止め同一サイドで完結させるように仕向けることができました。

 

 

さて、そこでマンチェスターシティも極上の問題を相手に投げかけます。

その問題提起の裏で別の側面からライプツィヒへの回答を放り込んでいました。

 

 

ホームマンチェスターシティのQuestion

 

同一レーン上に二人縦に並んだときの優先順位を求めよ

 

これは前節のレスター戦で、左サイドで行っていたことです。

ほぼ同様のことをライプツィヒに対しても行い、ライプツィヒの左SBアンヘリーニョ(元マンチェスターシティ)に幾度となく判断をさせていました。

 

ここ最近のシティは5レーンをもう少し細かく分割しているようにも思うほど、これまでの5レーンでは重なってしまっているのでは?という配置がよく見られます。

この試合もマフレズとデ・ブライネは縦関係で並び、アンヘリーニョに判断を与え、空いた方や間違った方を使って攻めるようにしていました。

この判断の連続はただでさえ、体力的に疲弊するサッカーにおいて脳内までも疲弊してしまう非常に恐ろしい展開です。

 

デ・ブライネに釣られればSBの背後めがけてマフレズが走り、マフレズに釣られれば、デ・ブライネが空けたハーフスペースをドリブルし、サイドに流れたデ・ブライネ(この位置もアンヘリーニョの背後)を取っていました。

 

例えば3分のシーン

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アンヘリーニョはデ・ブライネに釣られ、背後を空けてしまいます。

 

続いて5~6分のシーン

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同じようにマフレズに釣られ、背後を空けていることがわかります。

 

ライプツィヒの左のボランチに入るライマーはサイドに流れるデ・ブライネにマークしにいくこともなかなか難しい。

あのエリアを空けるということはカンセロに自由を与えてしまうようなものです。

 

こうした右サイドでの問いはじわじわとライプツィヒの出足を遅くさせ、一歩また一歩とシティが前に出ることになります。

先制したコーナーキックを得られたマフレズのクロスもその判断の連続に苛まれたライプツィヒの時間的隙間を利用した攻撃でした。

 

 

ライプツィヒへのAnswer

では、ライプツィヒが出した問いに対する回答を見てみましょう。

 

この図を見てください。

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これは前半の15分ころの展開です。ちょうどアケのゴールに繋がったコーナーキックの前のプレーです。

ポイントはジンチェンコの立ち位置です。

縦パスが通らないほどの狭い距離を保つライプツィヒの2列目に対して、ジンチェンコはさらに2歩内側に入っていきます

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ロドリの真横と表現しても過大表現ではありません。

ライプツィヒもさすがにこれ以上は近寄れないポジショニングをしているのに、そこからさらに内側へ。

IHよりも中へ中へ入るジンチェンコの判断とプレーにより欲しかった追加点に繋がるのです。

 

 

普段の偽SBはSHの守備ポジションを操り、守備の基準を曖昧にさせ、ビルドアップ補助を可能にしているのですが、今日の試合の効果としては左WGをフリーにできるということです。

グリーリッシュはボールを持って真価を発揮する選手。ボールタッチの柔らかさと色気、タイミングの妙とまた色気、むしろ色気でサッカーをしているようなグリーリッシュが非常に活きるシチュエーションです。

後半の見事なタッチで見せたドリブルからの完璧なコースへのシュートは、足を離れた瞬間にゴールが確信されたスペシャルなゴールでした。

 

 

ライプツィヒの右SBムキエレがあまり攻撃参加に加わらなかったのも相乗効果だったかもしれません。

大外を使われる可能性があるかないかは偽SBとしての立ち位置にも大きく影響します。右サイドのカンセロがジンチェンコのような立ち位置であったらおそらく好き放題アンヘリーニョにオーバーラップをされていたでしょう。

 

 

中央を締められたので、さらに中央で勝負するペップシティ。

狭ければその狭いところに通すことで、一度に複数人を突破できます。とてもシンプルな考え。

しかし、最終的に狙うのはサイドです。

相手の誘いにわざとのって意識を集中させることで、その逆をついたときのほころびをついていくというチームとしてのイメージの共有は今日の試合かなりできていたと感じました。

その意識を集中させるという非常に重要な役割をジンチェンコが担い、見事に遂行していたと思います。

守備による不安は当然ありますが、メンディーもいないし、今に始まったことではありません。

 

彼の立ち位置、ボールの動かし方、方向は十分に満足のいくものだったと思います。

 

 

なぜカンセロだったのか

チャンピオンズリーグの開幕戦。流れに乗るためにも勝利がほしいし、失点もしたくない。

そう考えたときに右SBのファーストチョイスは我々凡人ならウォーカーという理不尽の塊SBになるでしょう。

 

しかし、ペップが選択した右SBはカンセロでした。

スタメンを見たときからなぜだろうと思いました。そう思ったシティファンの方々も多かったのではないでしょうか。

ましてやアンヘリーニョがライプツィヒで調子が良く、オーバーラップも果敢に仕掛けてくる選手だと当然わかっていたわけですから、それを封じて、しまいには上回るウォーカーという選択肢は理にかなっていると思ってしまいます。

 

 

では、見方を変えましょう。

最初の方にも書いていますがMarsch監督のライプツィヒは縦への速さを全面に出すサッカーではありません。

フォルスベリ、ダニ・オルモとハーフスペースでボールを待ち受ける選手が2列目に入り、幅狭く攻撃をしてくるチームです。

事前のスカウティングでもカウンターが少なかったデータがあったのかもしれません。むしろほとんどない。

 

だとするとマンチェスターシティとして考えるべきはカウンター対策ではなく、前半のうちに優位に立ち、後半はショートカウンターでも攻めることのできる試合展開に持っていくことです。

チャンピオンズリーグの開幕戦。ホームチームなら勝ち点3、アウェイチームでも勝ち点1がほしい。

ライプツィヒのサイドからの展開が限られているなら、デ・ブライネ+マフレズのユニットを活かせるコンダクター(指揮者)が必要なのはもう説明の必要もありませんね。

 

 

 

……説明します。

 

今日のマンチェスターシティの右サイドは縦に並ぶことが多かった。

それは上の方でも書いているようにアンヘリーニョに判断を連続させることとなるべく右サイドに寄ってきてほしいという思いがあったからです。

これは結果的には成功。

ジンチェンコの立ち位置も相まってシティの左サイドは常に1対1で勝負ができる環境が整っていました。

 

このデ・ブライネ+マフレズの縦のユニットが機能したあとはそれを逆サイドに届ける選手が必要です。

それがコンダクター。

後方からチームを指揮し、パスの大小強弱で、チームメイトの音色を変えるマエストロです。

普段はデ・ブライネをコンダクターにしていたましたが、縦のユニットを機能させるためにコンダクターをひとつ後ろに起きたかった。それがカンセロということになります。

 

今日のカンセロに関しては、パスだけでなく、ドリブル、シュートでも輝きを見せ、素晴らしいミドルシュートでゴールも決めています。

 

今後もカンセロが攻撃の起点となるのは間違いないと感じる試合でした。

64分、66分のパスはどちらも得点の可能性を感じる、かつ、一本のパスでDFラインを突破するプレーでした。

デ・ブライネをユニットの一つとして機能させても、その後方にまだパサーが控えているマンチェスターシティの右サイドは世界的に見ても攻撃性は一番とも言っても良いと思います。

 

問題提起は終わらない

試合を終えた出てきた新たな問いは"マンチェスターシティが守備の組織を整えるのはいつか"という史上最大の難題。

江戸川乱歩エドガー・アラン・ポーもどうにも解けない問題をペップはいかにして解いていくのか見物です。

ということを2年前ぐらいから言っているのですが、なかなか改善はされません。

 

やはり偽SBの空けた本来SBがいるべきスペースをチームとしてどう守るかという部分が圧倒的に欠けているので、

ウォーカーがあと一人だけで良いから追加でほしいところです。

4-4-2で守るもののセンター2人の間をライプツィヒの最終ラインからとてもきれいに何度も通っていたのも心配なポイントでした。

これがなぜかフェルナンジーニョがアンカーに入ると減るのでフェルナンジーニョはシティ退団前に必ずロドリにポジショニングを指導いただきたいです。

 

ルベンディアスという個を連れてこれたことで、組織的な守備はまた遠退いてしまったような気もするマンチェスターシティは、これからも偽SBの裏のスペースをストーンズやウォーカーががんばって埋めるのだと考えると、やっぱり

ウォーカーがもう一人ほしいです。

 

特に31分のライプツィヒのビルドアップに対するマンチェスターシティの守備は恐ろしいほど連携が取れていなかったので心配は2乗です。

 

簡単に見てみましょう。

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ゴールキーパーからボランチのライマー、CBのクロスターマン、もう一人のボランチのアダムスにダイレクトパスで渡ったシーンの切り取りです。

 

途中までアダムスについていったベルナルドがなぜか途中で方向を変えサイドにいるムキエレへのパスコースを切ります。

しかし、そのときにはアダムスは前を向いていて、ロドリは後ろを向いて逆走しようとしていました。

 

まず、この時点で守備の組織がないことがわかります。意識の共有がまるでないです。

ベルナルドは、アダムスをだれに託したのでしょうか。

何度見ても受け渡しがされてるようには見えませんでした。

 

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そして逆サイドに展開されてしまいます。

さらにここで問題なのが、カンセロのポジションです。

 

最初は、中央が一番危険だと察し、フォルスベリをつぶしに行ったのかと思いましたが、映像を見るとわかりますが、急ブレーキをして方向転換。アンヘリーニョの方へ体を向けていました。

当然間に合うはずがないので、中途半端な位置で守備組織としては無意味な行動をとってしまっていました。

 

普段から守備練習をしているのか非常に心配になる一連の展開でしたので、みなさまこのシーンを強く頭に留めておいてください。

 

6-3の乱打戦

試合は、両チームあわせて9点も入るスコアだけ見ると大味な試合となりました。

ただ、この試合を見てようやくマンチェスターシティに強者の巧みさを感じることができたので良かったと思っています。

 

例えば前半。

2点を先取した42分に1点返されてしまいます。

このまま後半に進むと嫌な流れを引きずったままになってしまいますが、PKとは言え2点差で前半を終えることができました。

 

また、後半開始すぐにライプツィヒに再度1点差に詰め寄られても、失点の5分後にグリーリッシュのゴラッソでさらに2点差に戻します。

 

これで試合は終わらず、73分にエンクンクのハットトリックで何回目になるのかもわからない1点差に縮められ、エティハドでエデルソンがハットトリックという前代未聞の事件に勢いを持っていかれそうなところ、その2分後にとどめの一撃がカンセロのミドルシュートでした。

 

最終的にはその後のアンヘリーニョの退場で、試合は終わりましたが、最後の最後に途中交代のジェズスがきっちりダメ押しの6点目を入れていました。

 

この試合の流れの消し方。

対戦相手を寄せ付けない強者の戦い方であると感じました。

少し失点しすぎですが、相手が勢いづく前に叩くという常に一歩前で余裕をもった戦い方ができていたなと思いました。

 

怪我明けのデ・ブライネとフォーデンの状態も確認でき、多くの選手がゴールとアシストに絡み(実に8人)、手ごたえと自信をもって今後の試合に臨めるなと思います。

(ちなみにあくまで攻撃の面だけ)

 

 

開幕戦勝利で初めの1歩を踏み出しました。

ゆっくりと着実に階段あがっていく様子を応援していきたいと思います。

 

それでは!