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【書評】経産省の山田課長補佐、ただいま育休中

こんにちは。

tadashiです。

 

現在、育休を取っている。

育休を取っていると、人と接する時間は減り、赤子と接する時間が増える。

言葉が減り、表情が豊かになる。

 

語彙力が減っているような気がする。

今回は書評である。

 

Twitterのタイムラインに流れてきた「男性育休におすすめの本18選」みたいな特集で見つけたこの本。

 

 

経産省の山田課長補佐、ただいま育休中

 


国家公務員のキャリア官僚でありながら、子供のため奥様のため、そして自らのため育休を1年間取ることを決意した方のエッセイのような作品。

文体はライトでさくさくと読めるし、内容も育休中に起きたことが著者の心情ととともに語られているので、肩肘張らずに読み進めることができた。

 

では、少なくなっていく語彙力で書き連ねる書評。

どうか最後までお読みください。

そして、いつかみなさまも育休を取る自分を想像してみてほしい。(取らなくてもよい。)

 

感想

まだ、子供が生まれて3ヶ月の自分にとっては「これからこんな楽しいことが待ってるんだ」、「こんな不安なことがあるんだ」と想像を巡らせながら読むことができた。(著者の子供と同じく、男の子だからだ)

書いてあることはおそらく今まで育児に携わってきた男性ならだれしもが経験するであろうことだと思うが、この本には国家公務員という政治最前線に身を置いている著者の周囲の様子も同時に描かれている。
国家公務員といえば国民の生活を豊かにするために、激務であり、責任がある仕事だと思っている。
毎日毎日、長い時間働き、家に帰るのは日付が変わってからなんてこともよく聞く。
そんな中で働く人が育休を取ろうと思うきっかけが書いてあり、省庁の中での様々な意見が書いてあり、復帰後の働き方の順序も書いてある。

“出世に響く”という話も今から18年前であってもなかったようだということがこの本を読んでわかった。(きっとこの方がとても仕事のできる、また人望に厚い方だったからだと思うが)

 

この本の中でも書かれているが、著者の奥様は産休後にすぐに復帰している。

夫婦で国家公務員であり、出産付近の業務において、奥様の方が大きな案件を抱えていたからのようだ。

 

女性だけが育休を取って仕事を休まないといけないのはおかしい

 

奥様も、著者も、家族と仕事の状況を冷静に考えて判断している。

現在(2022年)でも、女性が育休を取る。ということが当たり前のようになっているが、女性だって働きたいと思う(そうでない人もいる)し、大きな仕事を産休育休で手放したくないはずだ。

もちろん男性も同様ではあるが、育休の取得の有無、期間を考えても男性の方が仕事に尽力できるのは不公平だと本を読んで感じるようになった

 

 

20年前の課題も今の課題

何よりもこの本を読んで良かったと思ったのは、最後の方に書かれている著者の個人的見解だ。

簡単に抜粋してみる。

 

手っ取り早く、かつ、効果がある少子化対策として、手厚い助成は欠かせない。高齢者対策予算との不均衡は、多くの識者の指摘するところだ。

 

いまの児童手当には、いろいろ問題がある。

第一に額。月額五千円(約20年前の話)は、「これで安心して子どもが産める」という気にさせる額ではない。

第二に所得制限だ。金持ちの子どもでも、そうではない家庭の子どもでも、子供としては平等なはず。収入にかかわりなく「子どもを産む気」にさせようとするならば、むしろ、収入が多い世帯ほど手当を増やすべき、とさえ言える。

 

首都圏でのマンションの販売チラシを一度でも目にしてほしい。そもそも4LDKの部屋なんてほとんど販売されていないのだ。(中略)子どもを増やしやすいように、住宅政策を考えてほしい。

 

最後は、職場の意識の変革だ。(中略)日本人男性は総じてハードワークになっている。この「働き過ぎ」を放っておいて、さぁ女性も機会均等ですから、などと言っても、歪みが出るのは当たり前だ。(中略)

要は、少子化問題の根底には、社会における男女差別がある。

「女性の社会進出が少子化の原因だ」と唱えて、女性だけに責任を押し付けるというのではいつまでも解決は図られない。それに、男性だって、育児をしたいという人は増えているのだ。

 

まさに現代のことを書いているかのような子育てや少子化に対する課題がずらりと並べられていて、この約20年間であまり歩みが進んでいなかったこと、それでも育休を取る男性が増えてきていることがわかった

こういった過去からの繋がりを知ることができるのは大変今後の参考になる。

それにしてもこの方の考える解決策がどれも現代でも実現できそうな効果の高い策ばかりだ。ここには書いていないが、予算の配分におけるバラマキ防止の案として課税所得からの控除とする案も素晴らしくぜひ読んでいただきたい。


まだまだ変えないといけないことはたくさんある。当時から考えられていることが今でも実現されないのは大きな原因があるのだろうと思った。

 

時代は約20年前。

こういう方々が職場のあらゆる視線を振り切って強い意志で育休という権利を取得してきてくれたから今の僕らへの後押しがあると感じられるこの作品は、一度読んでみることを強くおすすめしたい。

 

 

注意点

この方は夫婦ともに国家公務員ということもあるのか生活費に困っている描写はない。もしかしたらこれを読んで、「お金のことを考えずに子育てができて、しかも3人も!」とこの本の主題とは関係のないところでもやもやする人もいるかもしれない。
ただ、著者は「時間とお金」という最大のテーマを本書を通して語っている。
この本を読んで金銭的な劣等感を感じるのも間違いではないが、国の中枢で働いてる人たちも同じことを考えている。


それにしてもこの方は育休取る前の働きぶりが素晴らしかったからこそ色々な方から信頼を得ていたんだろうと感じた。
育休中の職場との関わり、復帰後の働き方と実現に向けての強い意志。

その後4年間で管理職になったのは当然のことのように思う。
自分自身はまだまだ管理職にほど遠いが、育休を取った人間がマネジメントするほど部下たちは動きやすいのではないかと思った。
管理職にまったく興味がなかったが、少しだけ管理職になる意味を持った

 

育休を取得してみて

職場で初めての男性の育休だった。

育休取得を宣言してから、育休にいたるまで、気を遣うことだらけで、そもそも男性だろうが女性だろうが同じ育休のはずなのに、前例がないから…と自分で調べる羽目になった。

幸いにも他の部所などには男性で育休を取得している人もいたのでなんとか申請を行うことができたが、いつまでたっても、育休を取っている今でも、本当に合ってる?と思っている。

 

金銭的な心配もある。

育児休業給付金というものがあるが、これがまあすんなりともらえない

まず、ここ数ヶ月間の67%しかもらえない。社会保険料所得税はないが、住民税は払わなければならない。(住民税は昨年の収入に対してなので)

そうするとざっと見積もって今までの8割で生活をしないといけない。奥様も同様に育休を取っていれば奥様の方でも8割となるので、世帯収入でいくとわりとダメージが大きい。

さらに額だけでなく時期も悪い。

2ヶ月後から申請をして、そのさらに1ヶ月後に支給される

その間の家賃もしくは住宅ローンや保険の支払いなどは免除されないので3ヶ月給与なしでそれらを支払う必要があるので100万ぐらいは貯金が必要だったりする。

というのを申請するぞ!となってから知った。

それはそれは大変だったので、育休を取ろうと言う人はお金の計算もしっかりして、夫婦で話し合うべき。

 

ということで、ここで育休の素晴らしさや赤子かわいいという話をするつもりはないので、書評を終わりにしたい。

育休を検討している人も読んでみるといいかもしれない。

 

それでは!