ManCityを追うものは一兎を得ず

水色と白

マンチェスターシティとレアル・マドリー。時々それ以外

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22-23シーズン マンチェスターシティのビルドアップ大全

こんにちは。

tadashiです。

 

22-23シーズンが閉幕。

 

マンチェスターシティが強かった。相変わらずシーズン終盤にかけて勝ち続ける強さもあり、今シーズンはさらに強いマンチェスターシティが見られた。

 

ハーランドが加入したこと?リコルイスが台頭したとこ?ギュンドアンがシーズンを通して好調だったこと?ストーンズが覚醒したこと?

 

これらはすべて正しいが、これらがすべて正しくなったペップシティの戦術的進化がこれまでにないものだった。

 

本記事では、ペップシティのビルドアップスタイルを全試合抽出し、パターン化。

改めてマンチェスターシティの今シーズンの変化と強さをまとめていく。

 

 

各試合のビルドアップスタイルについてはただのメモなので、結論だけ知りたい人は飛ばしてほしい。

 

各試合のビルドアップスタイル

※各節ごとに書かれているフォーメーションは相手チームのもの。

 

■1節 4-4-1-1

両SBがロドリの横でしぼる2-3もしくは片方のSBが後ろに並ぶ3-2のビルドアップ

IHはCFと同ラインまで高い位置を取る。

 

■2〜4節 5-3-2、4-3-3、5-4-1

右SBウォーカーが絞る3-1のビルドアップ。左SBのカンセロは高い位置を取り、左WGと入れ替わりながらボールを引き出す。IHはCFと同ラインまて高い位置を取る。

 

■5節 5-4-1

右SBウォーカーがしぼる3-1のビルドアップ。左SBは高い位置。

前3節と異なるのは右IHが大外、右WGがCFと同ラインに入ること。4節も、5-4-1が相手となっていたのにスペースができるところが違ったのだろう。興味深い。

左WGはカンセロと入れ替わったりする。

 

■6節 4-3-3

ウォーカーは最初5分は外に開く。試合が落ち着いたらロドリの横へ。

ビラは前3-3がコンパクトに絞る。カンセロもウォーカーと同時にロドリの横にいるときもあった。試合が進むにつれてカンセロの方が絞ることが多くなる。大外に張るWGにボールを通しやすいようにより中央にディフェンスを集中させるためのSBの移動。

 

■8節 4-2-3-1

右SBに入ったストーンズがしぼり、IHベルがロドリに並ぶ2-3ビルド。カンセロは大外レーン。1節、6節以外カンセロは大外レーンでグリーリッシュやフォーデンの中への侵入をサポートしている。右サイドはWGが大外に張り、IHがハーフスペースにいる。ここら辺の構造は今シーズンのスタンダードかもしれない。

 

■9節 4-4-2もしくは4-2-3-1

カンセロはワイド。ウォーカーは中途半端な位置。CBはユナイテッドのFWが1枚でプレスに来たらドリブルで運ぶ。

アンカーとインサイドハーフは大きく距離を開け、ユナイテッドの守備を間延びさせていた。

15分過ぎてからいきなりウォーカーが入り込んで中央から左に展開。

ビルドアップにおけるSBの位置、特にウォーカーは臨機応変に対応していた。

 

■10節 4-4-2

GKにまでプレスに来るセインツに対して、シティは両SBは外に張り、ロドリの横にIHのベルが入る。もし、セインツのCHがロドリやベルに食いついたらさらにその後ろを狙う。重心はやや左より。

ロドリやベルナルド・シルバの後ろの前進の仕方は右はハーフスペースにデ・ブライネが動き、ロドリやCBからの配球。左はカンセロが高い位置を取り、CBからの配球。その際は後方カバーにベル。

 

■11節 4-4-2

シティは3-4-2-1。リーグでは初。

ビルドアップとしては3-2になる。

アゴがうまくハーランドへの縦パスを消して、その他の前線の選手がプレスをかけるリバプール

ビルドアップの出口として見られたのはデ・ブライネが右ワイドからハーフスペースに入り、チアゴを引き出してCBからハーランドに縦パス。

 

■13節 3-4-2-1

カンセロが高い位置を取る3-1のビルドにベルが降りてくるパターンとラポルトが開いて、エデルソンがDFラインに入るパターンもある。(前半はこっちがメイン)

 

■14節 5-4-1

右SBに入ったストーンズがしぼり、ロドリの横へ。カンセロが後方のハーフスペースに位置取る変則的な2-3のビルドアップ。

左はグリーリッシュが張ることが多いので、カンセロは中間ポジション。ストーンズが中央で受けたときは、CBアカンジが右サイドに開いてボールを受ける。残りの5人はレスターの5バックと同数。

 

■15節 4-4-2

右SBストーンズがスライドして、後ろは3枚。3-1もしくはカンセロが入って3-2のビルドアップとなる。

左はグリーリッシュ、右はベルが幅取り、カンセロとデ・ブライネがビルドアップのサポート。SBとWGの間にある左右のスペースを利用する。

 

■16節 5-3-2

右SBストーンズがスライドして後ろ3枚。中央のロドリと3-1を形成し、ビルドアップ。相手のFW2枚の間にロドリ。

左SBカンセロは幅を取る。右の幅取りはベルでデ・ブライネがSB落ち。

10分を過ぎてから後ろを2枚、SBをしぼって2-3に。攻め込んだこぼれを拾えるように中央を厚くしてるように見えた。

 

■17節 4-3-3

リーズは前の3枚を中央にコンパクトに配置。

シティはリコルイスがロドリの横に並ぶ。状況に応じてアケが並んだり後ろになったりと3-2、2-3を使い分け。後ろが3枚のときはワイドに配置している。

マンツーマン気味につぶしてくるリーズに対してギュンドアンとデ・ブライネは3-3のブロックから外れた位置でボールを引き出す。リーズがハイラインなのでハーランドが裏に抜け、シンプルに使う場面もある。

 

■18節 5-3-2

リコルイスが右SBに入り、ビルドアップ時には一列前に出てロドリと並ぶ。前節と違うのは後ろの3枚がそこまで開かないこと。

エバートンがアンカーも使って5枚をシティの後ろ5枚に当ててくる。デ・ブライネはそのブロックのそばで一人を吊り出すように動く。

エバートンは結局押し込まれ、5-4-1になる。

 

■19節 4-4-2

スタートは左SBカンセロの4-3-3。すぐさま3-4-2-1に変更し、カンセロは右ワイドに移動。ベルナルド・シルバがロドリと中盤ダブルボランチを形成。ビルドアップは3-2の形。

チェルシーの前線2枚に対して3枚でビルドアップ。ロドリとベルに対して中盤2枚を引っ張り出してギュンドアンとデ・ブライネを使いたい狙い。

チェルシーは深さも幅もコンパクトにして、追い込んでサイドに散らせてそこに強度を持っていく。必然的にスペースがなくなり、ギュンドアンとデ・ブライネはサイドに開くことになる。

後半リコルイスとアカンジをカンセロとウォーカーに代えた3-2のビルドアップに変更した。

 

■20節 4-2-3-1

スタートのシティは4バックが均等に並び、真ん中にロドリ。可変なし。

久しぶりにリコルイスのいない4バック。ウォーカーとカンセロのSB。

ユナイテッドはロドリをマークする選手を一人置いて、ボールホルダーに一人プレッシング。シティのCBはSBがマークにつかれていたら自分で運ぶ。CBに対してのパスコースを増やしてドリブルでも運びやすくするための横並び4枚。

SBを背中で消しながらSHが当たる。アンカー2枚はシティのIHにマンマーク。シティのSBを意図的にフリーにしている。

ベルナルド・シルバがDFラインまで落ち、ハーランドがセンターサークル付近で縦パスを受けることで打開していく。

 

■7節 3-4-3

3-2のビルドアップだが、後ろに並ぶ3人は幅を大きく取る。中央にロドリとリコルイス。

トッテナムは3トップがペナルティエリア幅程度に開いてケイン頂点の垂線の短い二等辺三角形のような形でにらみ合う。その間をリコルイスが顔を出して複数のパスコースを作っていく。トッテナムは中央の二人ホイビュアとベンタンクールがそれぞれロドリとリコルイスを見る。シティのビルドアップに対して五角形。

プレス回避としては、ビルドアップに対して中央コンパクトにするので、ワイドのCBから幅を取るWG、そしてリコルイス。

もう一つはアカンジからギュンドアンで人を釣りだしてハーランドに当てる。

 

■21節 4-2-3-1

シティは後ろ3枚、前にロドリとリコルイスの3-2ビルドアップ。

ウルヴスはロドリ番を一人つける。1トップはパスコースを消してWG2枚はサイドに流れたボールにプレス。

リコに対しては左WGのファン・ヒチャンがついてくる。幅はグリリとマフレズ。

ウルヴスは右WGも同じように絞ってコンパクトな幅で守る。ラポルテはそこから遠いところでボールを持つ。

レミナがギュンドアン、ネベスがロドリを見る。ギュンドアンは中央からあまり動かないので必然的に中央でレミナを固定。

右サイドは空いたスペースにデ・ブライネが入ったり、マフレズが入ったりする。

 

 

■22節 5-4-1。前プレ時は3-4-3。

シティは今シーズンお気に入りの幅取り3枚+コンパクト2枚の3-2のビルドアップ。リコルイスが左SBから可変。

3-2-1-4で2トップでトッテナムの3バックをピンドメ。ベルはトッテナムの中盤の背後やロドリ、リコが間に合わないときの後ろ3枚へのサポート。

 

■23節 4-4-2

後ろの3枚が幅を取る3-2のビルドアップ。

相手の2トップが背後で2を消しながらボールホルダーを睨む。後ろの4-4のブロックはコンパクト。

パスコースがなければ、エデルソンがDFラインまで上がり、サイドに素早く展開している。幅取りの二人をケアする関係で4-4のブロックでありながらワイドの3枚のサイドの二人はフリーとなる。

ベルナルド・シルバとロドリは場合によってはDFラインまで下がり、相手を釣りだす。ベルナルド・シルバはSB落ちを見せることもある。

70分過ぎぐらいからウォーカーが幅を取り出す。

 

■12節 4-3-3

アーセナルはシティが後ろ3枚でビルドアップしてくると予想して3トップを高い位置から当てている。その対策として幅を取る3バックかアケが絞ってベルがSB落ちするパターンでビルドアップの出口を作り出す。

ベルナルド・シルバの立ち位置は押し込まれたときや右から展開されたときなどその時時で立ち位置を変えている。

 

■24節 4-5-1

ベル左SBフォーメーション。

ビルドアップに詰まって、ロドリがDFラインに降りたときはウォーカーがワイドへ。ベルナルド・シルバが中にいてボールが左にうつったときはギュンドアンがワイドにいたりする。中央はやはりコンパクトにされるのでサイドにスペースができやすいため、必然的にそのスペースに人が流れる。

フォレフトは引いた守備なのでハーフラインまで簡単に運べる。運んだあとどう崩すかという展開。

 

■25節 5-4-1

SBのリコルイスがロドリと並ぶ3-2のビルドアップ。

ラポルトストーンズが不在なので、アケをどう休ませながら起用するかが今シーズンの鍵。アカンジは本当によくがんばっている。

フォーデンとグリーリッシュが幅を取り、シャドーにギュンドアンアルバレスの配置。

5-4-1はワイドをWBで見て、中盤の4枚はコンパクト。後ろで持っているときは5-2-3で後ろ3枚を見ている感じ。リコとロドリに中盤センターが、ギュンドアンアルバレスにCBがいく。

点差を広げてからの後半は、セルヒオゴメスをインサイドハーフからトップ下の位置で動かす場面もあった。

 

■26節 4-5-1

途中2-3のビルドアップ。

本職CBのアケがSBに入った試合ではこれまでは3-2の形でアケは左CBの位置だったがアケが一列前に出るこの形は初めて。

ニューカッスルのWGをアケとウォーカーにマークさせて、幅を取るグリーリッシュとフォーデンへのパスコースを作る。

アケは相手の立ち位置によって自身の立ち位置も変えるため、試合中に3-2の形になる場合もある。後ろが3枚になった場合も後ろはそこまで幅を取らない。

 

■27節 4-2-3-1

後ろ3枚が大きく幅を取る3-2の形。

ストーンズが右SBに入り、そこから可変してロドリの横に立つ。

パレスは前4枚がダイヤモンド型でコンパクト。ロドリとストーンズに近い位置でブロックを作る。その分後ろのアカンジとアケは時間ができる。

幅を取るフォーデンとグリーリッシュがSBをピン留めし、スペースからボールを運ぶ。アカンジやアケとフォーデン、グリーリッシュは高い位置にボールが運ばれると位置をうまく入れ替えながら相手の判断を惑わす。

 

■28節 5-4-1

ストーンズがCBからロドリの横に入る3-2のビルドアップ。後半戦ペップシティの目玉偽CB。

ウェストハムは1トップのアントニオを含めて5枚で前からビルドアップを封じようとする。ベルとアルバレスが5のブロックの背後にいるが、パスコースを封じられる。GKを経由しながら左右に揺さぶり、WGと中盤で打開。

ベルナルド・シルバとアルバレスは中央でビルドアップの出口になるというよりは、WGが降りてビルドアップの出口となったあとのパスコースを意識している。

 

■29節 4-4-1-1

右SBストーンズが絞ってロドリの横に並ぶ3-2のビルドアップ。不可解なのはこの形でボールを運び、守備に回るとストーンズがそのままCBに入る。

リバプールはサラーが前、ガクポ二列目で守るが、シティはストーンズとロドリを置いてるのでどちらかはフリーになる。後ろ3枚のサイドにはリバプールのSHがパスが出たら行くようにしているがその後ろをIHが狙う。中央でヘンダーソンが3-2の2を消しに来たら後ろをまたIHかCFが狙う。

 

■30節 4-4-2

右SBストーンズが絞ってロドリの横に並ぶ3-2のビルドアップ。

セインツは2トップがロドリとストーンズの前、その後ろをセンター2枚でわりと前に配置して見合う形。

シティはエデルソンもズレてゴール前で4-2の形を作って回避するシーンが開始早々から見られた。

 

■31節 5-4-1

ウォーカーが久しぶりにスタメン。ウォーカーが幅を取り、マフレズが一つ内側のレーンに入り、後ろは3-1のビルドアップ。グリーリッシュが左は幅を取る。

IHの二人が同サイド、特に左サイドに寄せて左で数的優位を作っている。相手の5バックに対して前線を6枚にしていると推察。

自陣深くではラポルトが左SBの位置まで開いて、ルベンディアスとの間にエデルソンがサポート。レスターは深追いしないのでボールが持てる。

 

■33節 4-1-4-1→失点後4-4-2

ワントップがボールホルダーに対して横のパスを切りながら後ろの4枚がボールサイドを起点にマークをつける。

シティはストーンズがCBに入るが、これまでの試合のようにロドリの横に動かない。

ビルドアップはCBに対してSB、ロドリ、ギュンドアンが出口に。2-2+SBみたいな形。

前半はその形でビルドアップせずに後方からロングボールを無理せずハーランドに放っている。先制点はアーセナルが前後で分断しているところにストーンズがロングボールを放り込んだことで生まれた。

アーセナルが4-4-2になり、ギュンとロドリにジャカとトーマスがつくようになった。後ろは4枚を崩さず、じわじわとギュンロドリにつけて動かしながら機を見て中盤の背後でボールを受けている。ここも最近の偽CBを数試合ちらつかせてアルテタが対策を取ると見越した戦術。

 

■34節 4-2-3-1

ストーンズがCBの位置からロドリの横へ並ぶ最近実践している3-2のビルドアップ。

相手は、幅を取るWGにはSBが対応し、全体がスライド、降りてくるギュンドアンアルバレスにはアンカーがついてくる。

右サイドでウォーカーが相手陣内でフリーでボールを持ち対角のグリーリッシュへサイドチェンジずるパターンが今日の狙いか。

失点後しばらくしてからエデルソンを交えた3-2+SBのビルドアップに変更?フラムがコンパクトにブロックを作るためその外を使って広げる狙い。

 

■35節 5-4-1

3-2のビルドアップ。リコルイスが久しぶりのスタメンでSBの位置から内側へ入っていく。

リーズが前からプレスはかけずブロックを、作るので前進は容易。

SBの位置にデ・ブライネが降りたりしている。

 

■36節 4-5-1

ストーンズ、デ・ブライネ欠場。

開始早々は相手が前一枚に対して4バックがフラットに4枚並ぶビルドアップ。その後アカンジがストーンズのようにロドリと並ぶ。中央にはハーランドだけ置いてなるべく密集から避けるように人を配置している。ギュンドアンアルバレスがそれぞれ左右のハーフスペース。エバートンは引いてブロックを作るので前進は容易。

気づいたらラポルトがロドリの横に。規則性はあるのだろうか。

 

■37節 3-4-2-1 or 5-4-1

ターンオーバーのシティ。やることは変わらず。

セルヒオゴメスがうちに絞る偽SBの形。リコルイスはスタートからIHで、フォーデンと並ぶ。幅取りはパーマーとマフレズ。

チェルシーギャラガーが少し前目でスターリングが下がってる。リコルイスにはギャラガーが下がって対応

 

■32節 4-4-2

ブライトンがシティの中央ラインをマンマーク気味に対応。

シティは後ろ4枚+ギュンドアンとベルナルドでビルドアップ。SBはピッチ幅に開く。ギュンドアンとベルナルドがボールを受けてに下ながら少しずつ前進し、ハーフライン近くになるとリコルイスが中央に、ウォーカーはよりワイドに開く。

デ・ブライネがCBを背負ったまま降りてきて、ブライトンのマンマークを利用してスペースを作る。

10分をすぎるとリコルイスがギュンドアンと並ぶ。右はウォーカーとマフレズが縦に並び、左はフォーデンだけ。左に関してはリコルイスが動いて空いたスペースはIHの回避用スペースとしていた。

 

■38節 5-3-2

ブレントフォードはキーパーに一人プレス、もう一人は背後でパスコースを消しながらパスがでたところにプレスをかけられる位置に立つ。アンカーのフィリップスには中盤が一人前に出て対応というようにマンマーク気味。

シティは、CBが開き、ウォーカーはワイド、セルヒオゴメスがフィリップスと並ぶ。少し歪な2-3のビルドアップ。IHに入るリコルイスがフィリップスに並ぶ3-3のパターンもあり。

少し前進すれば後ろは完全に3枚気味。マフレズとセルヒオゴメスが幅取り。仕掛けの局面へ。

下がっていく選手に対してもついていくブレントフォード。スペースが開かないようにするための5バック。

エデルソンからのビルドアップは、CBが前に出たり、IHが降りたり、横に移動したりしてマンマークを、ずらしてスペースを作りながらシティは繋いでいく。

 

 

ビルドアップのグルーピング

38試合のすべてをフルで観戦し、試合ごとのビルドアップの形が見えたところで、この章ではペップシティが用いたビルドアップスタイルをわかりやすくグルーピングしていく。

グループでわけるということは、わかりやすくするということである。

決して、複雑に数を増やしてはいけない。

 

現代フットボールのなんちゃらというのはたくさんの素晴らしいブログや書物がある。もちろんここでは説明しない。

マンチェスターシティがどうビルドアップしていたかにしかこのブログでは興味がないのです。

 

■2-3のビルドアップ

 

 CBが後ろ、SBがアンカーの横に移動するいわゆる偽SBによるビルドアップを行うグループ。

 

■3-2のビルドアップ

 このグループには、"片方のSBがアンカーの横まで移動する偽SBによるビルドアップ"と、"中盤と同等の選手がDFラインからアンカーの横に移動するビルドアップ"がある。

これまでも3-2の形は見られたが、今シーズンは後ろの3枚が大きく幅を取る形が見られた。例えばアケ、ルベンディアス、アカンジの場合など。アケ、アカンジがSBのように振る舞い、CBが一人。つまればエデルソンがDFラインに入ったり、中盤から降りてきたりとアレンジが多めの形だった。

 

■3-1のビルドアップ

 カンセロやウォーカーなど片方のSBがビルドアップの出口として幅を取ることでビルドアップを行うグループ。

 上記の3-2の形から3枚のDFは中央に絞り、SBが開き、片方のSBがフリーとなり、プレス回避の選択肢の一つとなる。

 

■4-1のビルドアップ

 4バックがフラットに均等に幅を取り、アンカーが中央に位置するビルドアップのグループ。

 アンカーの脇にインサイドハーフが降りてくるスペースを残し、SBの位置からの展開が基本になる。

 

■4-2のビルドアップ

 上記の4-1+ギュンドアンやベルナルド・シルバが最初からアンカーの横に並ぶ形でのビルドアップを行うグループ。

 

 

 

所属選手と狙いによる違い

今季のマンチェスターシティは“所属選手”と“チームの狙い”の2つの観点から4つの期間に分けられると思っている。

ウォーカーに期待した時期からストーンズの偽SB、リコルイスの起用、カンセロの移籍、そしてストーンズによる最適解である。

各試合のビルドアップスタイルを見てもらえればわかるが、これから4つの時期が順を追って確認できる。

 

簡単にではあるが、一つずつ解説してみよう。

 

■偽SBウォーカーへの期待 第1節〜8節

 シーズン当初はウォーカーを偽SBとして配置する可変を用いることが多かった。

 ウォーカーに期待してのことだし、とてつもない守備力を誇るウォーカーが、守備時にDFライン付近に残っていることも大きい。

 しかし、ウォーカーの怪我やウォーカー自身がペップの思い描く偽SBとしてのプレーができなかったことにより、早めに偽SBとしてプレーさせることをやめた。

第8節だったか、ペップがはっきりとウォーカーのことを口にしていた。これは同時にウォーカーが絶対的なスタメンではないよ、と言っていることと同義。それでも、要所要所でウォーカーを起用していたシーズンでもあり、ウォーカーという選手のキャラクター自身を評価していたのは間違いない。

この時期の特徴は左SBに入ったカンセロが幅を取っていたこと。彼はとてもテクニカルだけど色々と軽いし、浅い。右利きなので左で止めて右足でグリーリッシュにボールをつける。そのボールの置き方だとほぼ100%グリーリッシュにパスが出されるので相手も狙いが絞りやすい。時々右足のアウトサイドで切り替えしたりもしていたが、グリーリッシュも窮屈そうであった。この解決策はカンセロ移籍後に出現する。

 

■ウォーカー怪我による右SBの不在 第9節〜16節

 ウォーカーが怪我したことで、ストーンズが代役を務める。最初の役割としては偽SBがこなせる選手ということで選ばれてる感じがした。左はカンセロとセルヒオゴメスがいたが、右はウォーカーだけだったので、ペップの中にはウォーカーを試してだめならストーンズというのは構想にあったと思う。

 この時期の特徴は、後ろ3枚のビルドアップの際にエデルソンがDFラインに入ること、右SBストーンズが偽SBも、後ろ3枚でのプレーもこなすなどとわりと多種多様なビルドアップが見られた。相手の枚数と配置に対してのことだと思うが、この期間は見返すとなかなか面白い。

 

■リコルイスの台頭と左SBの不在 第17節〜26節

 カンセロが出場時間に不満を表し、移籍を希望したあたりからがこの時期。

ウォーカーが偽SBとしては難しいと判断され、カンセロが移籍に向けてモチベーションを下げていたことで、ペップは左SBにアケ、右SBにリコルイスを起用する。

ペップに小さなフィリップラームと言わしめたリコルイスは、正直なところまったく知らなかった選手。右SBで出場し、ビルドアップ時にはロドリの横をキープし、ボールを引き出し前進させていた。まだ、18歳というので恐ろしい。

この時期の特徴は3-1、3-2のビルドアップ(相手によってフラットな4枚や可変なしの3-2のビルドアップを使用したりしている)で、後ろの3枚が大きくペナルティエリアの幅以上に開いていたこと。基本的には右からアカンジ、ディアス、アケという並び。

ボールを奪われ、ネガティブトランジションの際には後ろの3枚がスライドし、リコルイスが右SBに戻っていく。これはウォーカーのときもカンセロのときも、昨シーズンのジンチェンコのときも、むしろデルフでやり始めたときからこうだったと思うし、だいたいいつもここを狙われて失点をしている。後にペップはここのフラット4への移行に工夫を凝らす。

 

左SBアケは、元々の守備力は申し分なく、ビルドアップ時に右SBを移動させることで、3-1や3-2のビルドアップの“3”を任せることができる。CBが本職の選手なので対人守備も期待ができ、3枚でのビルドアップから4バックに移行するスライドもスムーズ。

そして何よりカンセロ左SBのときと違い左利きのアケが左足でボールを止め、複数の選択肢を持って、グリーリッシュに時間を与えるように預けることができたのも大きい。(後半戦のグリーリッシュなら厳しいパスでも問題なかったかもしれないが。それぐらい洗練されていた)

 

ストーンズによる攻守のバランスの最適化 第27節〜38節

 22-23シーズンの完成形がこの時期。

よく耳にしたのは「ストーンズの偽CB」という言葉。

 初披露は第27節。いつものようにするすると右SBの位置からアンカーの位置に移動したストーンズ。ボールを前進させるだけでなく、自らも前に出る。今までロドリがいたようなところに顔を出す。相手陣内のペナルティエリア近くでサイドからボールを受けるストーンズ。なにより足元の技術が素晴らしい。

 

 ボールを奪われたときは、前述しているフラット4への移行に工夫が。

 ストーンズが中央のポジションからそのままCBの位置に下がり、CBの選手がSBの位置に入る。そしてボールを回収したらまたストーンズはロドリの横へ入る。

 

 この時期の特徴はストーンズの立ち位置。CBの位置から、SBの位置から、ロドリの横に移動する。その偽CBを見せた上でアーセナル戦ではCBのままプレーした。

 ストーンズという一人の選手の存在で対戦相手のシティ対策を自由に崩落させることができたところが最大の特徴だった。

 

 リーグも終盤になり、勝ち点計算やCLとの兼ね合いもあり、すべての試合で偽CBが見られたわけではないが、偽CBという言葉がこれからも対戦相手を惑わすことは間違いない。

 

使い分けの推察

それでは最後に、今回示したビルドアップのパターンがどう使い分けられていたかを推察していきたい。

 

■2-3

両SBがうちに絞り、アンカーと横並びになる形は今シーズンはあまり見られなかった。

というのも相手の守備が4-5-1、5-4-1でかつ1トップがロドリへのパスコースを消して、プレスもかけてこない場合に限定されていた。

後述する3-1、3-2の形では相手が1枚に対して後ろの枚数が余ってしまうので、相手の守備ブロックを動かし、前線の選手にボールを配給するという目的を達成するためにはシティからしたらもっと前(相手陣内)で、ボールを回すべきだ。

同じ守備の形でも相手のWGやSHもシティのビルドアップ時にプレスをかけてくる場合は後ろの枚数を3枚、4枚と増やしていた。

これは対戦相手の監督のスタイルで判断していたように思える。

チェルシーリバプールには3枚、ユナイテッド、アーセナルには4枚を採用したところからもわかる。

 

■3-1、3-2

今シーズンの基本の形がこの2つ。

多くのチームが守備時に4-4-2や5-3-2になり、アンカーを一人が消しながらもう一人がボールホルダーへプレスをかけ、サイドの選手がボールの受け手をとらえる。

この守備ブロックに対して、3-1、3-2は相手の前線2枚に対して3枚と数的優位を作れるだけでなく、アンカーのロドリの立ち位置で2枚のうちの1枚を無効化させることができる。

余っているSBは相手守備の幅を見ながら外か中かを選択していた。

中央圧縮のコンパクトな守備に対しては残ったSBが外に張り出し、DFラインがスライドして生まれたもう片方のスペースにはIHが下りたりする。

アカンジやアケ、ストーンズはボールを運ぶこともできる。ロドリがマークをされている場合はドリブルを開始し、相手守備のマークをずらす工夫も見られた。

 

■4-1

シティのビルドアップに対してチームとして前から押し上げてプレスをかけてくるチームに対して用いた。特にコンパクトに陣形を作り、ロドリへのパスを阻害することに全力を注いでいるチームにはこの形が効いていた。

中央に人が集まるということはサイドが空いているということ。

IH(主にギュンドアンとベルナルド・シルバ)があえてロドリの脇のスペースに顔を出して相手選手を集め、サイドから崩していく。

 

■4-2

スタートからギュンドアンやベルナルド・シルバがロドリの横に配置された形は、4-1のビルドアップのときと違い、対戦相手の守備がシティのビルドアップに対してマンマーク気味のときに用いられた。

というのもこの場合は、後ろでボールを繋ぐというよりは相手を前に引き寄せてハーランドを使うという意味合いのものだった。プレス回避はハーランドへの浮き球のボール。

アーセナル戦やユナイテッド戦で見られた。特にアーセナル戦では前からマンマークでビルドアップを阻害してくるアーセナルに対して4-2の形でアーセナルを引き込み、ストーンズのロングボールをハーランドに当てたところからデ・ブライネのゴールが生まれている。

 

 

23-24シーズンは

ペップは来シーズンもマンチェスターシティを率いてさらなる高みを目指すだろう。

今シーズン、3冠トレブルを達成し、ようやくマンチェスターユナイテッドに肩を並べることができた?と思うのでこれからさらに強さを磨いていくだろう。

現段階では、ギュンドアンバルセロナにフリー移籍で退団、ライプツィヒのグヴァルディオルがDF史上最高額で加入、チェルシーからコバチッチ加入というニュースが入ってきている。

ハーランドという理不尽も手に入れたことで、ペップのまだ開けられていない引き出しがどんどん開けられるかもしれないわくわく感がある。

 

ここまで魅力的なスカッドを手に入れたら、あとは過密日程と怪我人との兼ね合いで選手を決めていくだろうし、対戦相手の監督の戦術に合わせて、ビルドアップスタイルを流動的に使い分けるだろう。

ハーランドが加入するまでのマンチェスターシティに対しては、今シーズンのユナイテッドやアーセナルが実践した守備が有効であったが、今シーズンはハーランドに蹴られて形勢逆転する。

唯一の可能性は、CL決勝で見せたインテルの守備かもしれない。

 

開幕戦に向けてデ・ブライネの欠場が濃厚となっている。

来シーズンのマンチェスターシティについて個人的な願望を述べるとフォーデンのIHとハーランドアルバレスの2トップが見たい。

 

また、来シーズン。