マンチェスターシティ vs tadashi
こんにちは。
tadashiです。
本日は「マンシティの守備を数字で見てみよう」の第2部です。
第1部はこちら。
第2部は、第1部で明らかとなった失点の特徴を踏まえて、マンチェスターシティから得点を取ってみたいと思います。
題して
シティ vs tadashi
まずは、前回のおさらいです。
マンチェスターシティが第25節までに失点した15点の特徴は以下です。
【失点の特徴】
■1試合あたりの失点数はストーンズが0.25失点/試合で最も少ない
■ストーンズディアスのペアは0.23失点/試合で最も少ない
■後半開始直後の15分間での失点が33%で最多
■シティは後半開始直後に攻め込まれると弱く、失点すると勝てない
■PKをとられやすく、両サイドの深い位置からのクロスに失点しやすい
■シティ相手に得点を決めた選手たちの特徴は、スピードのある選手が一番多い
■シティから得点をあげたチームは全部で9チーム
■ポジション別に見るとFWが最多で11点(73%)
■ヨーロッパ大陸の選手に得点を取られる(1位はイングランド)
では、これ以降あなたはマンチェスターシティと戦うチームの監督となって、私の言葉に耳を傾けてください。
ドレッシングルームにて マンチェスターシティの守備
メンバー表を眺める我がチームの監督。
マンチェスターシティとの試合に緊張をしているようだ。
私は、彼のもとにそっと近寄りこう声をかける。
「今日は勝ちましょう。いや、勝てますよ」
スターティングイレブンもすでに確定してるので、試合前のミーティングで選手たちに言葉をかけるだけ。
しかし、監督はマンチェスターシティのメンバーを気にしている。
「試合前のアップを見たか。デブライネ、ギュンドアン、ベルナルドシルバ、スターリング、そしてジェズスもいる。ルベンディアスとストーンズもいる」
「そりゃいますよ、監督。相手はマンチェスターシティです。SBはだれでしょうね。もし、ウォーカーが出ていなかったらもっと楽かもしれませんね」
それでも心配そうにしている監督のために、改めて今日の戦術をおさらいしよう。
これまではマンチェスターシティの失点をいろんな角度から分析し、ある程度の特徴を見出すことができた。
しかし、今回分析したものは、あくまで失点に関する数字を使っただけで、そこにいたるまでの戦術的な分析は度外視している。
このまま試合を始めてもボールを取れずに試合が終わる可能性もある。
ということで、マンチェスターシティの守備について簡単におさらいしてみよう。
マンチェスターシティの基本フォーメーションは4-3-3。
これが守備になることで3パターンの形に変わっていく。
4-4-2
マンチェスターシティが4-4-2で守るときは、相手のビルドアップ時に相手のSBを自由にさせたくないという目的がある。
例としてリバプール、セインツの試合をピックアップした。
リバプール戦は、アーノルドとロバートソンという厄介なSBを自由にさせないようにWGを下げて対応した。
この試合ではアーノルドの機転で出し抜かれた形にはなったが。
セインツ戦でも同様。
セインツ戦で唯一違うのはCHのウォードプラウズがSB落ちしたために、そこに対応する選手としてWGをあてている。
4-3-3
マンチェスターシティが4-3-3を採用するときは例外なく相手チームのビルドアップの核となる選手がいる場合だ。
例としてリーズとチェルシーをピックアップした。
リーズはご存じの通りアンカーのフィリップスが肝。彼の出来でチームの攻撃が決まると言ってもいい。だからこそペップがそこを潰さないはずがない。
1トップをぴったりとつけて前半はなにもさせなかった。
このときのチェルシーはアンカーがカンテだったがおそらくジョルジーニョでも同じだっただろう。
形がリーズ戦と一緒なのはやはり4-3-3を使う目的が明確だからだ。
アンカーを潰してビルドアップをなるべく阻害させる。
GKから外にミドル距離のパスを出すことを警戒している配置なのも共通だ。
また、CBに対してWGが外からプレスをかけるのも特徴の一つ。
SBへのパスコースはある程度諦め、パスが出てから全体でスライド。
シティの問題点はここでSBへプレスをかける選手が、IHなのか、SBなのか決まっていないことだ。
3-2-5
マンチェスターシティのビルドアップはほぼ高確率で3-2-5の形で展開される。
時折2-3-5の形も見られるが9割は3-2-5だと思って良い。
そのため、マンチェスターシティはボールを奪われた瞬間は常に3-2-5が守備のスタートとなる。
この陣形での守備の鉄則は素早くそして複数で囲むこと。カウンターを防ぐためだ。
相手がボールを持った瞬間にボールに近い選手がボールホルダーにプレスをかけ、周囲の選手がパスコースを切りながら追い込んでいく。
リーグ序盤はコンディションも万全ではなく、なかなかこの基本ができていなかったが、今ではこれが面白いようにはまる。
それがGKであろうとプレスをかけるので、頭で意識していなければプレスをかけられてる状態から正確なパスをつなぐことはかなり難しい。
この3パターンすべてに共通することは、前線の選手が前からのプレスをさぼらないことだ。特に4-4-2や4-3-3でトップの位置にベルナルドシルバとジェズスがいたら相当厄介である。全速力で追いかけてくるし、平然と2度追い、3度追いを仕掛けてくるので、プレミアリーグの並みのCBでは耐えられず、すぐにボールを蹴ってしまう。
シティのポゼッションの高さにはビルドアップの質だけでなく、即時奪回の極意も存分に含まれている。
「監督どうですか」
「勝てる気がしない…」
第二部 マンチェスターシティから点を取るには
それでは最後にこれまで得られたデータを鵜呑みにしてマンチェスターシティから点を取ってそして勝つ作戦を考えましょう。
まず、大切なことだが、これだけは守るべきことがある。
後半開始から60分の間に、シティの左サイドをえぐってラストパスを中央のイングランド人FWに送るか、シティの右サイドからイングランド人MFが直接ゴールを狙う。
(相手チームの目線で言い直しています)
ということ。
それではさっそくだが、マンチェスターシティから点を取るためのフォーメーションと戦術をここに置いておこうと思う。
シティ対策のフォーメーション
これはもう5-4-1一択だ。
5-4-1を採用する理由は主に2つある。
1.5レーンをすべて埋める
2.中盤の4枚がその隙間を埋める
これによりシティが使いたいハーフスペースを消し、中央でボールをキープするスペースを消し、外回りにボールを動かさせることができるからだ。
前提条件
失点のデータだけでは、シティの戦術がわからないため、枚試合シティを見ている私が構造上のシティの条件を決めた。
■シティの構造上の条件
- ビルドアップは3-2-5の形(偽SBは一人とする)
- ビルドアップはゴロのパス(浮き球はエデルソンのみ)
- 幅を取るのは両サイドのWG
- 後半残り25分で負けている場合デ・ブライネのクロスに頼る
前半の戦術
第1部の結果にもあるように前半に得点をあげるのは難しい。
(前半を3分割したとき、シティの失点数は全体の14%、7%、20%しかないからだ)
狙うのはデータ上シティがもっとも失点している後半開始から60分までの15分間。
この時間に失点した試合では、シティはほとんど勝てない。
この圧倒的なデータによる優位性を存分に使わせてもらおう。
(もちろんFWとMFにはイングランド人を起用したい。)
なので、前半は耐えることが目的だ。
上で紹介しているシティの4-4-2及び4-3-3の守備のことは考えなくていい。私が書きたかっただけだ。
ポゼッション率は気にしなくていい。どうせボールは持てない。
とにかく耐えること。
なるべく無失点で前半を終えることを考える。
マンチェスターシティは、ビルドアップで3-2-5という形に変化する。
片方のSBがアンカーと並ぶ形になる。
(右SBがカンセロ、左SBがジンチェンコ)
SBが移動するので、SHがついていきたくなるがそこはぐっと我慢する。
マンチェスターシティのビルドアップから崩しのフェーズに対してやるべきことはたった2つ。
- ハーフスペースを消すこと
- サイドチェンジはCBを経由させること
これだけでマンチェスターシティがフィニッシュに持っていける確率がぐっと下がる。
マンチェスターシティがやりたいのは片方のサイドでボールを保持し、相手が寄ってきたらロドリなどを経由して素早くサイドチェンジ。フリーで受けたWGが1対1を勝利し、ラストパスを送る。という形である。
要はその1対1を作らせなければいいということになる。
なぜ、1対1を作られるかというとシティの片方のサイドでのボール保持に焦り、全体的にサイドに偏ってしまうからだ。マンチェスターシティは、持っているサイドから直接フィニッシュにはもっていかない。
より確実な人の少ないところを狙うので安心してほしい。
サイドチェンジをされる前にもう一つ警戒しないといけないことがある。
それは、CBとSBの間のチャンネルランだ。
CBとSBの間をするすると走り抜け曖昧となったマークを潜り抜けたプレーヤーが幅を取るWGからスルーパスを受け、低弾道のクロスを放るシーンは幾度となく見られてきたプレーだが、これをなんとしても食い止めなければ前半を無失点で終えることは難しい。
なのでチャンネルランに対してはCHがついていくことを決まりごとにする。
あくまで5バックは5レーンを埋めることに専念し、そのほかのシティのアプローチに対してはCHが対応することにするのだ。
決定機はもしかしたら2回ぐらい作られるかもしれない。
しかし、マンチェスターシティはそこまで決定率は良くない。シュートの数はいつも多いがそこまで得点はしていない20-21シーズンの現状もある。
第25節時点で、シュート381本で50得点およそ13%ということになる。枠内シュートで見てみると33%なので3本に1本しか入らない。
平均するとシティは1試合あたり15本もシュートを打っており、標準偏差は5.38。
もし、シティの1試合辺りのシュート数が正規分布であったら、9本~21本の間におよそ65%が占めている。なので、シュートは打たれるものと思ってほしい。(攻撃に関する分析はしていないため、失点をしないことはもはや運である。)
ここで注意。
ここまで徹底して守りを固めたらシティのビルドアップの途中でボールを奪えることもある。
しかし、その場合偽SBとアンカーがファーストディフェンダーとして襲い掛かってくる。場合によってはもう一人のSBも加わり、パスコースを消しながらプレスをかけてきてインターセプトを狙われる。今シーズンアンカーのロドリ、SBのカンセロ、ジンチェンコがシティでのインターセプト数トップ3なのだ。
できれば前半はカウンターは確実なときにだけ実行することとして、ゆったりと落ち着いて後ろにボールを下げてもいいだろう。
ということで、なんとか前半を守りきれた。
あと45分。
ここで、ついに仕掛けることになる。
今回は得点を取る方法を2種類用意してみた。
- シティのビルドアップをピッチ中央で奪う場合
- シティのGKからのビルドアップにハイプレスを仕掛ける場合
それではどうぞ。
後半の戦術① シティのビルドアップをピッチ中央で奪う
後半の最初の15分間がやってくる。
ここが唯一無二のチャンスだ。全力を尽くそう。
一時的に5-2-3もしくは3-4-3にし、WBを高い位置にキープすることをハーフタイムで確実に反芻しよう。
戦術①では、シティの偽SBの裏を取りペナルティエリア深い位置からラストパスを狙うのが目的。
後半開始
守備の基本は変わらない。
中央を締め、CBを経由させ、外回りのサイドチェンジをさせる。
前半スコアレスで、なおかつドローの状態になるとマンチェスターシティは少しだけ攻撃のスピードを上げる。縦に入れるタイミングと狭いハーフスペースへの強引なパスが増えてくる。
これを狙うのが①だ。
5-4-1から5-2-3へシフトし、中央はより狭くしたことでシティのIHはスペースを作るためにサイドに移動する。
目的はRCBからFWへのパスコースを作ること。
おそらくここ最近であればジェズスが空いたスペースに下りてくるので、CBがついていき、近くにいるLSHとLCHの3人でボールを奪う。
シティのビルドアップではたびたびこのようにFWが中盤深い位置まで下りてきてボールを受けようとする。基本的にはここまでマーカーのCBもついてこないので、ジェズスは比較的ボールを受ける余裕があり、前を向けるし、別の選手に預けて元の位置に戻ることも容易。
しかし、ここでCBがマークにつくことで時間的に余裕をなくし、判断をあおり、ボールを奪う作戦だ。
CBがここまではっきりとプレスに行けるのも、1トップの選手が下りてきていることが要因。CBが1人いなくなったところでビルドアップ時のシティはFWの位置に人がいないことはよくある。
さらに、負けているときの後半は上の図のようにCBからFWへの縦パスのタイミングが早い。アンカーやデブライネを一度経由するよりも先にジェズスが下りてきたりする。
3人でFWジェズスからボールを奪ったらあとはショートカウンター。
LSHはシティの右サイド深いところを狙い、CHからパスを受ける。
あとはラストパスをゴール前に入れるだけだ。
このときLSHにだれがついてくるかだが、偽SBとしてふるまうカンセロの確率が高い。その場合はスピードで振り切ることが可能なのでフリーでクロスがあげることができる。
もし、右SBがウォーカーだった場合は、左SBがジンチェンコかカンセロとなり、このショートカウンターをまったく同じ形を左サイドで実行すれば良い。
得点の入る時間は57分がいいところだ。
後半の戦術② シティのGKからのビルドアップにハイプレスをしかける
戦術②では、シティの構造上の弱点をついてシティ陣内でボールを奪いそのままゴールを奪うのが目的。
全体的に大きく押し上げエデルソンのビルドアップから足元でパスをつなぐシティを追い詰めよう。
シティのビルドアップでもっとも特筆すべき特徴は、平面的であること。
ミドルパスはエデルソンしか使わないと思っても良い。
グラウンダーのパスを狙うだけでいい。
ただ、その瞬間は一回しかないと思ってほしい。
その一回で決めるべく一週間前からその再現を狙うための練習が必要だ。
シティのゴールキックで、GKエデルソンから大きく開いたCBにパスが出たらSHがプレスをかける。
(ここゴールキックでなくても良い。ビルドアップのやり直しでGKに下げた場合でも同じ。ただ、ハーフラインから下げたボールには深追いしない。あくまでシティ陣内でのバックパスに留意する)
プレスをかけるときは絶対に外側からプレスをかけること。できればスプリントで判断の余地がないほどのスピードが望ましい。
シティのSBには高い位置を取らせるWBをつけよう。これは両サイド前に出てしっかりとマンツーマンとすることを忘れないでほしい。
逆サイドだからといって距離を離してしまうとエデルソンが簡単にその選手の足元にボールを入れてしまう。
そして最後はアンカーを1トップの選手で徹底的にマークする。およそ振り切れないほどの勢いでマークをすればボールを受けたCBも下げてもらうエデルソンも、そのアンカーにパスを出そうとは思わない。
ここまでお膳立てができればあとは様子を見てIHがロドリの位置まで下りるのを待つだけ。
IHへのパスを近くにいる全員で囲いボールを奪う。
あとは深い位置からのクロスがラストパスになるのでイングランド人FWでフィニッシュだ。
得点の入る時間は49分だろう。
試合の締め方
後半開始からの15分間で1点をもぎとったらあとは前半と同じ要領で守る。
サイドにかなり揺さぶられると思うが、基本は忘れない。
ハーフスペースを消すことと、サイドチェンジはCBを経由させること。
この2つが守られればあとは問題ない。
時々見られるCBの運ぶドリブルは、今回のデータからは見られていないので無視する。
これが得点に結びついたことはないからだ。
こうなったときにデータにはないが、マンチェスターシティはデブライネでひたすらクロスを上げる時間が必ず訪れる。
もし、その場面になったら勝利の確定演出だと思ってもらいたい。
長身でエアバトルに強いCBを投入できたらなお良い。
慎重に中央を固め、冷静にクロスを跳ねかえす。
30分間は長いかもしれないが、クロスをはねかえし、こぼれ球に必ず1人は反応し、ペナルティエリア手前でフリーにさせなければ失点は防げる。
マンチェスターシティにこの状況を打開できる選手はいない。
90分警戒し、ロスタイム。
シティはGKエデルソンが上がってくることもない。
そういうリスキーなプレーはペップがもっとも嫌がる。
試合はそのまま1-0で勝利。
ここまで狙い通りであれば最高だ。
ということで本分析は以上となる。
勘違いしないでほしいのだが、私はマンチェスターシティを愛している。
今、世界のどのチームよりもマンチェスターシティが好きだ。
だからこそ、今のマンチェスターシティの特徴も弱点もわかるし、データからわかる攻めどころも見えた。
この勝利で我がチームは降格圏を脱出。監督は、ペップを出し抜いた戦術家として2週間ほど現地で話題になった。
~fin~
長い時間をかけ、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
とてもうれしいです。
プレミアリーグでの圧倒的な勝ち点差はよほどのことがない限りひっくり返らないと思うので、心配はしてないが、ここら辺をしっかりと攻め込まれたらCLでは簡単にやられてしまうのではないかなと思っている。
これを見て、みなさんがどう思うかはわからないが、私がシティと対戦する監督であれば必ずこの戦い方をして、それで負けても仕方ないと思うだろう。
今回は、データを活用して数字上の分析をしてみたが個人的には数字と構造を用いて、シティを倒すことができそうだと感じた。
ここまで見ていてウェストハム、レスター、トッテナム、ユナイテッドあたりはこの戦術を容易に遂行できそうだ。
それは5-4-1も使えて、FWにイングランド人がいることも影響している。
マンチェスターシティがどこまで高みを目指すかはわからないが、私はCL制覇を願っているただのファンである。
※これを書いている間に第26節から28節までの試合が行われたが、まさに今日書いていたような攻撃を繰り出すチームもいた。さらに、ペップはカンセロを大外に張らせたり、ミドルパスでボールをつなぐ瞬間を見せたりとこの短時間でさらに歩みを進めようとしているのがわかった。また、この3試合でPKを2つも取られていた。
サッカーの加速度的な進化と思い通りにいかないカオスをまとう空気にはより引き込まれざるを得ない。
それでは!