ジンチェンコがIHでプレーするべき3つの理由
こんにちは。
tadashiです。
今日はタイトルの通り、ジンチェンコがIHでプレーすべきだということをプレゼンしたいと思います。
目次
始まりのはじまり
SBというポジションは私がサッカーを始めたときから馴染みのあるポジション。
小学校2年生から始めたサッカーでは、気づいたときには左SBとしてプレーしていたことが理由だ。
なんでSBなんだろう、と考えたこともなく、みんなでサッカーをするのに自分は左の後ろの方に配置されただけだった。
自分でもサッカーは下手な方だったから、むしろよく試合に出れていたな、と思います。小学校中学校はボールの扱いが上手い子供、足の早い子供が前のポジションに起用され、そこまで突出した能力のない子供は後ろに置かれてしまうのです。まさにその典型例だった。
そこで小学校の時点でSBの楽しさを知ってしまったが…。
という身の上話は置いといて笑
SBは、下手な選手でもできるのか。だれでもできるのか。
おそらくできる。
例えば、4バックでオーバーラップもせずに、CBとラインを揃えて、ラインの上げ下げを行い、ビルドアップに関与せず、来たボールはすべて跳ね返せばそれだけでなにも起こらずに試合は終わる。
プレミアリーグを見ているとそういったチームも見受けられる。まあ、ただ対マンチェスターシティであるから守備に追われていただけだと思うが。
SBはディフェンスである。それと同時に攻撃の起点となり得る。フィニッシュのピースにもなり得る。ポジションの可能性というのはどのポジションよりも大きいと個人的には考える。
ジンチェンコはその大きな可能性の中でデルフと同じ働きを期待されていたというのがペップシティでのジンチェンコの始まりである。
ジンチェンコのキャリア
今日の主役ジンチェンコのパーソナルデータをご紹介します。
本来攻撃的ポジションであるはずなのに、SBというポジションを受け入れ、一時期レギュラーにまで上り詰めたジンチェンコ。そんな彼を私は彼がシティにやってきたときから気になっていました。
プロフィール
出身国 : ウクライナ
身長 : 175cm
年齢 : 23歳(1996/12/15)
背番号 : 11
キャリア
プロ契約まで
地元ラドミシュルのクラブチームでサッカーを始めたジンチェンコは、13歳の時にシャフタールの下部組織に移籍。14歳までプレーしましたがトップ昇格できず、FCウファというロシアのクラブチームとプロ契約を結びました。
FCウファ。
聞いたこともありませんでした笑
そもそもロシアのチームはCLに出るシャフタールやCSKAモスクワ、ロコモティフモスクワぐらいでした。日本では本田圭佑がレジェンドとなったCSKAモスクワが有名です。
シティへの移籍
そこからシティへの移籍は思いの外すぐでした。
2016年7月4日(私の誕生日の12日前)ロシアからイングランドプレミアリーグへ移籍します。
2008年にアブダビ資本を手に入れたマンチェスターシティは、CFAを開設したり、様々な国とCFGを提携したり、大きく動いていましたが、その他にも未来のシティの選手を育てるために、若い選手を買い、試合の出れる環境へすぐさまレンタルするという手法を取っています。(今もやっており、日本では板倉や飯野がその対象になっています)
さらには、シティはこのようなやり方でマンチェスターシティでの試合経験がない選手を売却し、多くの利益を得ています。(サンチョもその一人ですね)
ジンチェンコも19歳そこらでマンチェスターにやってきました。そこからすぐにオランダのPSVへレンタル。主力選手としてチームの攻撃を牽引しました。
シティに残留したのはその翌シーズンの17-18シーズン。獲得当初から中盤の選手として期待されていましたが、そのシーズンにメンディーの負傷によって左SBとして起用され、攻撃的MFのSBが誕生です。
ペップがバイエルンを率いていたとき、アラバとラームをSBで起用する偽SBという戦術が話題になりました。私はその当時「戦術」なんてことに興味もなく、ただボーッとサッカーを見ていたことを覚えています。元々学生時代はずっとSBでプレーしていたのですが、その世界のトレンドと自分のプレーはなにもリンクはしませんでした笑
ジンチェンコのSBは偽SBとして有効でした。左WGのサネ、スターリングやIHのダビド・シルバと巧妙にトライアングルを形成し、ボールを前進させていました。
ある程度出場機会も得ることができ、現契約は2024年まで残っています。
また、19-20シーズンからは背番号を11番としています。なぜ、11番なんでしょうね。
ボールの扱いはやっぱりうまくて、サイドでパスを繋ぐことはなにも問題ないのですが
大外のレーンでボールを受けたときの選択肢の少なさはやはりメンディーと比較すると物足りない。サイドを突破する選択肢もありながら中へのパスが出せる方がSBとしては幅が広がるでしょう。
今シーズンのスタッツ
プレミアリーグでのスタッツです。
19試合出場(うち13試合に先発)
パス成功率 91%(1097本)
タックル成功率 61%(19回)
クリア 19回
インターセプト 17回
レッドカード 1枚
ゴールもアシストもないのが少し寂しいです。
また、ここ数試合はカンセロが左SBとしてスタメンフル出場。アンヘリーニョがローンバックと考えるとジンチェンコ自身もキャリアについて考え直す時期かと私は思います。
強く主張しますが、キャリアを考えなオフというのは移籍ではありません。決して移籍ではありません。
シーズンが終わり…
移籍市場がすでに開いています。
我がシティはなんとすでに二人の選手を獲得。右利きの右サイドアタッカーのフェラントーレスをバレンシアから、左利きのCBアケをボーンマスからチームに加えています。
と、同時にクラブのレジェンドであるダビド・シルバが退団を決めています。
(まさか11-12シーズンの選手たちはいなくなった…?)
時間は有限です。そして残酷です。
時間は平等でだれにでも、1秒は1秒。ダビド・シルバにも同じように時間は流れ、10年の歳月が過ぎました。
10年間同じ職場で仕事をする、ということがどれだけ大変なことか。
自分が働いている今、身をもって実感します。
一緒に働いていた仲間たちは次々と変わり自分だけが変わらない存在としてあり続ける。相当タフでないと難しい。
私はまだ働き始めてから10年たっていません。これ以上の時間をマンチェスターシティに捧げてくれたダビド・シルバをシティファンとして誇りに思い、一人の人間として尊敬します。
つい先日ダビド・シルバの移籍先がレアルソシエダに決まりました。10年ぶりの母国帰還。楽しみですね。
ダビド・シルバの後継者とは
ということで、空いたシルバのポジションを埋めないといけないですね。
ダビド・シルバはとにかくハーフスペースでボールを引き出すことがうまい。サイドに開くよりも、より内側で相手のプレッシャーが届かない絶妙な位置で受けることも抜群にうまい。
狭いところでのプレーに長けていて、オフザボールではペナルティエリアの角を狙うフリーランもできる。
さらに細かいことを言えば右サイドから中央にボールが展開されたとき、縦へのパスコースを創出し、自ら受けることもできる。
ペップシティに欠かせない選手でした。
具体的にこの本でダビド・シルバのシティでの重要な役割をおさらいしましょうを
つい最近購入しましたが、ペップシティの戦術が知りたい人はぜひ買って読んだ方がいいと思います。チームとしての構造、選手個々の役割が書かれています。
ペップのチームがよくやる右から左、左から右のパス回しが無駄なことではないということがわかります。
ただ、数年前の選手構成での話であったり、相手チームの情報がないので、あくまでペップ戦術の一般論みたいな部分です。それを知るには間違いなく素晴らしいです。
さて、本書ではダビド・シルバのことをこう綴っている。
「8番」と「10番」のハイブリッドに近い役割を創造的にこなすCM
具体的には、
狭いエリア内でペナルティエリアに至る道筋を作り出す能力
とも書かれている。
19-20シーズンを見た中で私が共感した本書でのダビド・シルバについて記された能力を以下に示そう。
1.ハーフスペースでの起点
ずばり空いてる空間を見つけるのがダビド・シルバは天才的なのである。
以下の図を見てください。
ピッチを縦に5分割した左右2番目のゾーンをハーフスペースと呼びますが、ダビド・シルバは中央からハーフスペースへ顔を出し、DFラインからのパスを引き出すことができます。
2.守備ブロック間でのボール受け
この能力は狭いエリアでも容易にプレーが可能な高い技術を持ったダビド・シルバにもってこいのプレーである。
DFが最終ラインでパスの出しどころに困っているところでダビド・シルバはポジションを一列下げ、ボールを受けて前を向く。これにより、ボールを一列前進させることができ、さらにその先の選手へボールを導くことができる。
次のシーンは、アンカーがパスにつまっていたときの場合。この場合もダビド・シルバはあえて狭いところに顔を出し、アンカーからボールを受けるとすかさず前を向き、次のプレーに繋げている。
3.DFライン裏へのパス
元々トップ下やサイドハーフとして、攻撃の中心でいたダビド・シルバだからこそこのポジションでパスを活かすことができる。
特に相手が引いてゴール前を固めているところで彼の良さは活かされる。小さなスペースでボールを受ければどこからでもパスが出せるシルバなので、チームメイトはその瞬間に最高の位置で飛び出す。
同じ8番のデ・ブライネよりも小さなモーションでスルーパスが出せるのがダビド・シルバの魅力だ。
さて、このような素晴らしい能力を持ったダビド・シルバが抜けた穴を補強で埋めるのか既存選手で埋めるのか、シティのフロントの腕の見せ所ではあると思います。
シティにはすでに、デ・ブライネ、ベルナルドシルバ、ギュンドアンと優秀なIH(CM)が在籍していますが、長いシーズンを戦い抜ける戦力としてカウントできるのはダビド・シルバが抜けたあとはこの3人だけです。少ないですね…。
フォーデンはWGや0トップで攻撃性をいかんなく発揮してくれているし、アカデミーに目を向けるとドイルはいるけど…レンタル組もいるけど…即戦力として考えられるかと言ったら、、うーん。。
ペップさん。
忘れてますよ!!
シルバのプレーをしながらも+αを与えられる良い選手いますよ!
オレクサンドルジンチェンコ!
ウクライナの至宝、お調子者、EURO出場を決めてテレビカメラの前でおおはしゃぎ、その二日後にはプロポーズを成功させるジンチェンコです。
ジンチェンコの良さ
突然、ジンチェンコの名前があがり動揺している人たちが多いんじゃないかと思います。
なので、まずはこの動画を見てください。
……。
間違えました。
これはジンチェンコがリードラップを務める曲です。
正しくはこちらです。
ウクライナ代表で中盤の前、IHなどを担当するジンチェンコのプレーを見ることができます。
PSVでのプレーもあります。
YouTubeのプレー動画なので良いプレーが繋ぎあわされてるとは言え、やはり足元の技術は高いですね。
ちなみに性格面で言えばとてもハイテンションのムードメーカー。
デ・ブライネと顔が似ていると言われ、あのデ・ブライネに「僕はこんな不細工じゃない」といじられるほどのコミュ力の高さです。
では、そろそろ本題に入りたいと思います。
ジンチェンコがIHでプレーすべき3つの理由
ようやく本題です。
長いんだよ、ほんとに。自分の悪いところは前置きが長いことです。
昔からそうなんですよ。肝心なことを話す前に無駄な話が多くて多くて…。
もっと悪いところは、それを悪いと思っていないところです。
1.SB落ちができる
「SB落ち」とはSBがいたポジションに中盤の選手が落ちてくることを言います。
SB落ちに期待されることは、同サイドのSBを高い位置に押し上げられること、密集した相手のプレッシングから一時的に逃れられることです。
今シーズンになって、ベルナルドシルバが会得して試合中に何度か見せていましたが、モデルで言うと、他チームですが、レアルマドリードのモドリッチやクロースが行っています。
例を見てみましょう。
シティは、左SBと右WGが幅をとり、ウォーカーが下りて3+ロドリでビルドアップ。
相手チームは4-2-3-1で、トップ下の選手とフォワードでロドリを消しながらサイドに誘導してきます。
相手が4-2-3-1のフォーメーションを採用してきた場合IHはボランチにマークされることが多く、ビルドアップ時に外側からプレッシャーをかけられてしまうも出しどころがなくなり、ロングボールを蹴らされる可能性が高く、シティの形に持っていけません。
では、次の形。
左IHをSB落ちさせました。一人のボランチはマークする相手がいなくなり、中盤にはスペースができます。また、SB落ちしたことでフリーでボールを処理できます。仮に右SHがプレッシャーをかけてきても後ろの枚数も多いので取られるリスクも低い。
この場合ロドリが離れることで、中盤にさらにスペースができ、デ・ブライネや前線の2枚へのパスコースができるはずです。
この位置であればプレッシャーがなければボールを運べば良いし、相手チームが寄ってきていればサイドチェンジもできる。
めちゃくちゃ良いことだらけです。
このポジションでプレーしているジンチェンコは、普段はこのときには、前にはスターリングしかいないのですが、IHとしてSB落ちすればSBとスターリング。さらにはデ・ブライネや逆サイドと選びたい放題。ボールを失うはずがありません。
2.元々のプレースタイル
プレー動画を見ていただければわかりますが、ナショナルチームでのジンチェンコは攻撃性が高いです。前に行く推進力を備えています。
ダビド・シルバが得意とするハーフスペースでのボール受けもペナルティエリア角へのスリーランも難なくこなします。
もうひとつ言えばシティではSBで今までプレーしているので、サイドで斜めのパスを中央に入れるのも慣れています。
デ・ブライネのようにサイドに開き、SBやWGとのレーン移動を促すプレーもできるはずです。
つまりなにが言いたいかというと、ダビド・シルバよりも柔軟だということです。
3.左SBが狙い撃ちされる最近の傾向
ネガティブな理由ですが、シティと戦う相手は右SBのウォーカーよりも左SBを攻める傾向が近年つよくなっています。
メンディーだろうが、アンヘリーニョだろうが同じです。ジンチェンコがSBのときも例に漏れず、さらにはロングボールまで放り込んでくる始末。シティ自体はボールをキープするチームで狙われる回数はそこまで多くないし、連続で狙われることもないですが、相手が強豪になればなるほど長い時間狙われる場合もあるわけで、耐えられるとは思えません。
それならいっそのことジンチェンコのポジションを前に上げてあげればいいのではないか、という発想です。
数年間DFをやった経験は中盤での守備意識にも繋がるし、狙われたら嫌なところも死ぬほど体感したはずなので、そこもプラスのポイントか、と。
おまけ ダビド・シルバと左サイドで多くプレーをした経験
3つと言いながら4つ目笑
やはり、ダビド・シルバと長く左サイドでプレーした実績がジンチェンコにはあります。
左サイドはボールを回しながら相手を動かし、絶妙な位置でのトライアングルを形成。相手に取られず右サイドに展開し、デ・ブライネやウォーカーのインナーラップで仕留める。という重要な役割の一端をダビド・シルバと一緒に担っていたのは大いに重要であります。
仮にその位置にジンチェンコが入ったとしてもいいイメージがあるので、それをプレーに実行できるだろうと私は思っています。
終わりに
なにかの記事でこんな内容の文章を読みました。
元々守備の選手に攻撃を教えることは難しいが、攻撃の選手に守備を教えることはそれほどでもない、と。
これ自体にも苦言を呈したいと思いますが、それは長くなってしまうので別の機会があれば書きたいです。
攻撃の選手に守備を仕込むのはかなり多いかもしれません。
Jリーグでもいますし、学生時代は前のポジションをやっていた選手もとても多い。ヨーロッパに目を向けると、バイエルンのアルフォンソデイビスやユーベのクアドラード、どんぴしゃではないけど、元バイエルンのラーム氏やキミッヒ、バルサのセルジロベルトというところが思い付くと思います。
もちろんジンチェンコもその一人ですよね。
ただ、このジンチェンコが他のコンバートされた選手たちと違うことは中盤前の選手だということなんです。
サイドのプレーヤーではないんです。
トップ下やIHが主線上の選手がクラブでだけSBをやっているんです。これはなかなかすごいことですよ。代表ではCBで、クラブではSBとはわけが違います。
個人としてはジンチェンコには、前例のないカムバックを果たしてもらいたいと思っています。
そしてSBで学生時代を過ごし、今もSBが大好きな私が思うのは、
ジンチェンコはSBの選手じゃないんです
確実に。もったいない。
このチャンス絶対に活かして、中盤に戻ってほしいと切に願うばかりです。
ということで、最後は熱くなってしまいましたが、ジンチェンコが来シーズンシティで攻撃の流れを作る選手になっていることを思い馳せながら筆を置こうと思います。
長い文章を読んでくれてありがとうございました。
それでは!