デ・ブライネを救うたった一つの方法 第14節 vs サウサンプトン
こんにちは。
tadashiです。
好調セインツことサウサンプトンとの対戦。ここで踏みとどまれるかが今後のプレミアでの行方を左右する気がします。
フリーキックで3ゴールのウォードプラウズ。シーズン記録はあのベッカムのもつ5ゴール。いかに。
最後のデ・ブライネの話だけ読んでもらえるだけでいいぐらいです。
この試合のポイント
レビューを読んでいただく前に、今日のポイントだけ押さえておきましょう。これ以降は主にこのポイントについて話していきます。
・変貌したウォルコット
・セインツの狙い
・ベルナルドシルバの役割
この3つがポイントだったと思います。
結果
16' スターリング (assist by デ・ブライネ)
デ・ブライネは7アシスト目!
スタメン
両チームのスタメンはこちら。
■ホーム サウサンプトン 4-4-2
中盤がフラットな4-4-2です。ジェネポ以外は前節のアーセナル戦と同じです。
やはり注目はウォードプラウズです。その精度の高いキックをぜひ活かしたいところ。2トップのイングスとアダムスはゴール前でファウルをもらうなどFKを狙いたい。
苦しめられた選手
■ヴェスターゴーア
ロングキックの精度。強いフィジカル。
この2点だけでこのCBを試合に出場させる価値があります。マンチェスターシティは、セインツ陣内後方でのビルドアップにはプレッシャーをかけますが、ある程度運ばれるとブロックを作ります。ヴェスターゴーアは、高確率でフリーでボールを持つことができ、ウォルコットとウォーカーピータースのいる右サイドにピンポイントのロングボールを配球。あれだけスピードがあり、精度の高いボールを対角線に出せる選手がプレミアに、ファンダイクとラポルト以外にいたのかと自分がどれだけマンチェスターシティしか見ていなかったのかと悔やむほどでした。
この試合ロングパスは10本成功。すごいです。
インターセプト2回、タックル4回と守備でも貢献しています。
試合を見て驚きました。
「これは僕の知っているウォルコットか!?」
試合を通してポジショニングに意識をして、マンチェスターシティの意識を自分に集中させながら絶妙なタイミングでウォードプラウズからボールを引き出します。また、このポジションにより右SBのウォーカーピータースがオーバーラップしやすいよう状況となりました。
カンセロは、戸惑い、今日のマンチェスターシティの左サイドは防戦一方になっていました。
アーセナルで見たウォルコットとはまったく違う姿。同じくアーセナルに所属し、その後怪我により思うようにプレーできなかった宮市もこんな未来があったのかもしれない、と少しだけ思ってしまいました。
それにしてもセインツのようなSBがクロッサーとして組み込まれる戦術と対峙すると、SB出身の僕からすると面白いと思い、うらやましくも思います。
バートランドだって、ジェネポが大外、ハーフスペースを行き来するからそれに合わせて巧みにフォローしていたので、どんな選手かと思ったらほらやっぱり、31歳のベテラン。若い選手にはこれはできない素晴らしいSBだなと思っています。数字として他の選手と比較して優れているものが出ているわけではないですが、バランスも含めてセインツを支えている一人としてカウントできるんじゃないかと思いました。
■アウェイ マンチェスターシティ 4-2-3-1
メンディー、フォーデン、ジェズスが前節から変わっています。今シーズンは4-2-3-1がベースなんだろうなと思います。まずは、守備からというペップの意識改革か。たしかに今、リーグで最小失点ですからね。
久しぶりのベルナルドシルバが、期待だし、今日のポイントとなる選手でした。
前半 シティの変化とセインツの自信
前半開始
この試合は試合開始早々から両チームの狙いが見えました。
セインツは4-4-2。守備時には中盤フラットな4-4-2。攻撃時にはSHがハーフスペースに移動し、4-2-2-2の形になります。
ハーゼンヒュッテル監督は、マンチェスターシティ相手にも臆することなく、守備からアグレッシブに仕掛けます。エデルソンにもプレスをかけるほどハイラインに設定。他のチームのようにロドリをマークしてパスコースを徹底的に消すわけではなく、2トップと2センターで挟みます。
ポイントとしては
・ロドリで奪う
・ロドリの次のプレーヤーで奪う
の2点です。
6分、9分と立て続けにマンチェスターシティのビルドアップを阻害し、攻撃の芽を摘んでいたので一定の効果はあったと思います。
6分のシーンは連動したセインツのプレーにカンセロがパスミス。その直後はファウルになったけどロドリに2枚が瞬時にプレスしてボールを狩りにいきました。
9分もウォードプラウズがロドリのボールを奪ったシーンです。
前半10分過ぎまでは明らかにセインツの勢いが強くペースはセインツが握っていました。
一方、今日はいつもより繋ぐ意識の強いシティ。セインツが前から来るのでパスで外せれば一気にチャンスになります。ペナルティエリア前まで引かれて固められるよりはよっぽどやりやすい相手です。
ビルドアップは3-2の形。カンセロがロドリの横に並びます。守備のときは4-4-2となり、ギュンドアンがロドリと並びますが、攻撃ではギュンドアンは4-3-3のIHのような高いポジションを取り、デ・ブライネは右に流れます。
左右それぞれのユニットを使って攻撃を組み立て、ギュンドアンとスターリング、デ・ブライネとベルナルドシルバ、そこにフェラントーレスとSBが絡んでいくのが理想でした。(結局、フェラントーレスは孤立してしまった前半です)
その理想が実現する前にシティは先制点を奪います。
17分のスターリングのゴールです。
セインツに攻められたあとのエデルソンからのロングキックがきっかけとなりました。
エデルソンからのボールはクリアされますが、そのこぼれを回収してベルナルドがキープ。その横をデ・ブライネが駆け上がり、ペナルティエリア深くに侵入。クロスの折り返しをスターリングが冷静に流し込みました。
このシーンは前からハメにくるセインツを利用したプレーでもあります。エデルソンのキックの瞬間は後ろにいるセインツの人数が少なかったというのもあり、クリアを拾った時点で数的優位になっていました。
このシーンから思ったのは、最後にも書きますがベルナルドシルバがデ・ブライネのプレーを限定し、アシストを生み出しました。(詳しくは最後の章)
それでは、先制されたセインツのビルドアップ及び攻撃の狙いを見てみましょう。
20分の攻撃が今日のセインツの狙いです。
ずばりカンセロのサイドを狙えということです。もはや、マンチェスターシティからしたら「あー、はいはい。いつものね。」というレベルのこと。カンセロだろうがメンディーだろうが関係ない!うちにはルベンディアスがいる!ということで、最終的にはクリーンシートで勝利しましたが、個人的には驚きのあった狙いだったので印象的でした。
セインツは守備時は4-4-2でジェネポとウォルコットがサイドの守備を担当しますが、攻撃となると二人はハーフスペースにポジションを移します。システムで表すならば4-2-2-2でしょう。
ビルドアップは、ウォーカーピータースが一列前に上がり、ウォードプラウズがSB落ち。ロメウは中央を担当。左SBのバートランドはジェネポをサポートする立ち位置でバランスを取ります。
前半はウォーカーピータースの方がオーバーラップをしていましたが、試合を通して見るとバートランドもだいぶ高い位置でプレーしていました。
攻撃のパターンとしては、ヴェスターゴーアのサイドチェンジ、ジェネポがカットインしてサイドチェンジです。つまり、左から右へ、そして中央でフィニッシュというのが狙いです。
ウォルコットの立つ位置が絶妙で、そこにウォーカーピータースが絡んでくるとカンセロ一人ではどうにもならないし、セインツは2トップなのでルベンディアスがカンセロのフォローに行くのは優先順位としては後ろになります。
前半だけで5回ぐらいは左から右に展開されていて、対策も特にしなかったペップです。
僕がもっとも驚いたのがキーマンとなる右SHがウォルコットだということです。アーセナルでのスピードを活かしたドリブラーのイメージが強すぎて、同一人物か疑うほどでした。
試合に戻りましょう。20分のあとは動きもなく、29分にセインツの前プレをシティが回避し、一気にクロスまでいったシーンがハイライトです。ウォーカーのオーバーラップ。ウォーカー対決の名に恥じぬ素晴らしい戦いですね。
この直後、フェラントーレスが右に、ベルナルドシルバがトップに変わります。右から の攻撃がベルナルドとデ・ブライネのコンビでかなり良かったので、いまいち理解はできません。試合が終わってもわかりませんでした。流れが完全にセインツになってしまったからです。
デ・ブライネの疲労も見えてるということで、ベルナルド0トップでおりてきてもらってデ・ブライネのフィジカル的な負担を軽減させる考えだったのでしょうか。
いや、僕は単純にこの日のフェラントーレスが封じられていただけだと思います。ボールも受けられない、深さも取れなかった。さらに早々と先制したのでベルナルドを前にしてボールキープしてやろうと思ったんでしょう。
さい先よく先制したマンチェスターシティでしたが、セインツの積極的なアプローチ(ヴェスターゴーアのロングボール、ウォルコットのハーフスペース、インテンシティ高いプレス、ウォードプラウズのパス)によりじわじわと押し込まれました。
追加点が望まれる展開です。
後半 試合を決めるのは
後半開始
後半は前半と一転してカウンター合戦です。お互いがマイボールになると相手の陣形が整う前に早く攻めます。セインツにボールを持たせ、得点がほしいセインツの攻撃を受けて、チャンスを多く作り出しました。4-4-2をコンパクトにしてカウンター狙いができるほど、守備にある程度の計算ができるようになったということと思いたい。
セインツは相変わらずウォルコットの立ち位置が抜群。前半よりも洗練されています。ハーフスペースにいるのは変わらないけど、顔を出すタイミングは良くなっているので、カンセロもスターリングもギュンドアンもつききれないシーンが多かったです。
セインツは後半から入ったレドモンドが、試合に入れません。一方、マンチェスターシティは1トップのベルナルドもトップ下のデ・ブライネも中盤に落ちてきます。そのときは前に人はいないし、セインツDFはみんな揃っているので、崩すことはできないけど、勝ってるので、ボール欲しさに相手が前に出てくれば逆サイドに展開して速い攻めを仕掛けることができます。
決定機は圧倒的にマンチェスターシティが多かったです。
まず53分。
エデルソンから始まった攻撃は相手の中盤の裏をついたポジショニングを取ったデ・ブライネが中央スターリングとのワンツーで、左サイドを突破し、ペナルティエリア内のベルナルドに通しましたが、シュートはミートせず。
続いて70分。
セインツのビルドアップでのミスをフェラントーレスがカット。ここでもベルナルドが現れて左を走るデ・ブライネへラストパス。デ・ブライネはダイレクトでシュート。
すぐさまセインツもカウンター。
忙しい展開が続きます。
78分にはギュンドアンのミドルをキーパーがナイスセーブ。
これさセインツを前に引き出して空いたところからフィニッシュまでいきました。左から右へ。そして中央と流れるように攻める。
最後は92分。
シティのカウンター。デ・ブライネが持ち出し、スターリング、ベルナルドシルバと繋いでペナルティエリアに入ったところで、逆にいたマフレズへ。シュートは枠外へ。
その後、マンチェスターシティは冷静に時間稼ぎをし、無事に1対0で勝利しました。
勝利しましたが、カウンターであれだけチャンスを作りながら点が取れなかったのは、選手たちに問題があります。決定機はそんなに数多くあるわけではない。それをどれだけの確率で決められるかは、CLやリーグの優勝争いで絶対に響いてくることです。
まとめ
良かった点
「好調のセインツにクリーンシートで勝利した」という事実がなによりも大事。
内容は数シーズン前のシティを見ていた人たちからすると物足りないと思うかもしれない。ただ、悪かったわけではない。
スターリングが点を取れたし、ギュンドアンも高い位置で素晴らしいプレーができた。デ・ブライネもアシストし、パスでもセインツの守備を慌てさせた。
守備陣は点を取られていない。かつてないほどの失点の低さ。カンセロは攻撃の方でチームに貢献し、ウォーカーは世界最高レベルのプレー。ストーンズは完全に復調し、パスが出せなければ運べるクレバーさもあり、ルベンディアスはリーダーとしての素質があり、負けない。
書いていて良いことだらけですね。なにをみんなそんなに文句を言うのでしょうか。
そりゃあれだよ。
得点が量産できない。
ポゼッションがゴールに繋がらない。
連動した守備ができていない。
デ・ブライネへの負荷が大きい。
とか色々あるよ。
でも、今は明るい話題をたくさん出して、未来を見ていきたいとも思います。
デ・ブライネを救うたった一つの方法
今日もっとも言いたかったことはここです。
明るい話題のもっともなところです。
それがベルナルドシルバという存在です。
試合の翌日こんなつぶやきをしました。
今日の試合ベルナルドは、他の選手たちと明確に違うところがあった
— ただし (@tadashi0716) 2020年12月20日
それはデ・ブライネに望むプレー
他の選手「ケビンに預けて、前向いたら走るからパスをくれ」
ベルナルド「おれがボール持つからケビンは走れ。ラストパスだけに専念してくれ」
この試合デ・ブライネの負担は相当軽減したはず
意外と反応があって嬉しかったのですが、もう少し詳しく言葉にしてみたいと思います。
今のマンチェスターシティはしばしば攻撃が停滞することがあります。
幅をうまく取れていないことや、シュートが決まらないと、いくつかありますが最大の要因はデ・ブライネの個人能力に依存していることです。
負けている、引き分けている、なかなか追加点が取れない、どんな場面においてもマンチェスターシティの選手たちはデ・ブライネを探し、デ・ブライネにボールを預け、デ・ブライネからのパスをピンポイントの位置で要求します。
デ・ブライネは、チームとして本来狙っているペナルティエリア深くを自らが走ることはできず、中央に密集しているチームメイトからのフォローが得られず、高精度であろうアーリークロスをひたすらあげることになってしまいます。
試合の序盤、中盤でもデ・ブライネへの依存度は高く、デ・ブライネが右に流れるとボールは右に、デ・ブライネが左に流れるとボールは左に。それだけ彼が信頼されていることは素晴らしいことですが、チームとしてボールを前に運ぶために、デ・ブライネはボールを受けることだけを行っているわけではありません。
自分が囮となりスペースを作り出すこともできる、味方が作ったスペースに走り込むことができる。デ・ブライネは自らの能力はもちろん高いが、だれかの動きの意図を読む能力も長けている。
昨シーズンまではダビド・シルバがいて、デ・ブライネが敵を引き寄せて、狭いスペースでフリーとなったダビド・シルバがSBからボールを引き出しているシーンが何度も見られました。
今シーズンはそれが何度あったでしょう。僕はほとんど見られなかったと思います。デ・ブライネがボールを持って、デ・ブライネがパスを出して走って、ボールをもらってというシーンばかり、それでもこれだけチャンスが作れているのはやはりそのパス精度の高さと、ペップシティ5年目の遺産故です。しかし、得点が入らないのはなにかその先のデ・ブライネ以外の決定的なものがないと難しいと感じています。
また、デ・ブライネは疲労にたいして人一倍敏感です。気合いでどうにかするタイプではなく、疲労がプレー精度に直結していると昨シーズン終盤から感じています。集中力も顕著に欠けます。常に試合に出てほしいデ・ブライネのゲームのなかでの負担を少しでも軽減させることが必要なのです。
そこで今日のベルナルドシルバ。
前半30分までは右WGでプレー。幅を取りながら状況を見て中に入りボールを引き出したりキープしたり、攻撃のアクセントになっていましたが、もっとも良かったのはこれまでデ・ブライネがやっていたことを引き受け、その先をデ・ブライネにやらせた、という点です。
特に先制点のシーン。
ペップシティを見てきた人たちはこう言うでしょう。
「久しぶりに見たマンチェスターシティらしいゴールだ」
久しぶりのマンチェスターシティらしさとはなにか。
簡潔に言うと2つ
・ペナルティエリア深くに侵入し、グラウンダーのクロス(マンチェスターシティらしさ)
・クロスを上げたのがデ・ブライネ(久しぶり)
このマンチェスターシティらしいゴールを久しぶりに生み出したのはベルナルドシルバなんです。
エデルソンのロングキックのこぼれを回収した時点で数的優位。チャンスは必ず作れそうな場面で、ベルナルドシルバの選択は自分がキープしてデ・ブライネを走らせました。
あー、これだ。懐かしい。
と思わず声に出すほどの懐かしさ。
今シーズンのマンチェスターシティに欠けているマインドと言ってもいい。
それは、デ・ブライネはアシストができる選手で、組み立てよりもラストパスで真価を発揮する選手。そのためにはその前のプレーまではだれかが運んでやるべきだ。ということです。
右サイドに入ったベルナルドシルバはその意識をもった動きを見せていました。これまで今シーズンデ・ブライネがやっていたどこにでも顔を出してボールを受けようとするのをベルナルドが引き受け、デ・ブライネはアシストの可能な高いポジションを取ることが可能に。結果的に1点しか取れず、相変わらず決定力という部分には課題がありましたが、このベルナルドの起用は今シーズンの今後のシティに大きく影響しそうな気がします。
「なぜデ・ブライネがアシストを量産できたのか」、ということを逆算すると自ずと見えてくることですね。
この試合ギュンドアンもそれが意識されているのか高いポジションでデ・ブライネのプレーエリアと受けるプレッシャーを分散していましたが、守備時の負担を考るとWGにはベルナルドのような選手を置きたいです。今のシティには。
以上です。
最近はレビューというより、感想になってしまっていて、マンチェスターシティ好きなんだなと自分で思います。
シーズンは長いので、最終的な順位を期待して応援を続けていきましょう!CLも!
それでは!