CL第4節 Real Madrid vs Shakhtar Donetsk
こんにちは。
tadashiです。
本日はチャンピオンズリーグのレビューをしていきたいと思います。
今回の試合は、私の愛するレアルマドリードとロシアの強豪シャフタールの試合です。
レアルマドリードは苦戦しながらもしっかりと勝ち点を積み重ねていくのはさすが。特に相手の勢いを殺すことにかけてはどこか悪魔的です。
それでは、接戦のゲームの中で見られた両チームの戦術を見ていきたいと思います。
スタメン
ホーム レアルマドリード CL男ロドリゴの不在を埋めた愛に溢れたバスケス
クルトワ、カルバハル(⇒66'ナチョ)、ミリトン、アラバ、メンディー、モドリッチ、カゼミーロ、クロース、ルーカスバスケス、ベンゼマ(⇒79’ヨビッチ)、ヴィニシウス
アウェイ シャフタール 優秀なブラジル人はここから
取る便、ドゥドゥ、マルロン、マチュビエンコ、イスマイリ、マイコン、ステファネンコ(80’スダコフ)、テテ(⇒80’マルロス)、アラン・パトリギ(⇒79’アントニオ)、ムドリク(⇒71’ソロモン)、フェルナンド(⇒86’デンチーニョ)
下記フォーメーション図参照
狙いと狙いが交差する前半
猛攻のマドリー
試合開始からハイテンポで両チームの良さが見える展開が見えました。
シャフタールはサイドにマドリーを追い詰め、局所的な数的優位で囲い込みますが、マドリーはそのシャフタールの誘いを得意の右サイドで引き受けることでプレス回避による左サイドへの展開をして攻撃に転じていました。
この流れはマドリーが先制点をあげる前半15分まで見られました。
この時間、そして前半のマドリーは下記の図のように左ハーフスペースをベンゼマが使うことで、攻撃の軸であるヴィニシウスにボールを集めるようにしていました。
右でプレス回避を行い、一気に逆サイドに展開。
その展開の方法はロングボールではなく、ベンゼマのスライドによる中継です。
ヴィニシウスが当然警戒されていたこともありますが、ベンゼマが一度ハーフスペースで受けることで、後ろの選手たちが前に出る時間を稼ぐ効果もあります。
現にこの試合はベンゼマが流れた中央にはモドリッチが入るようになっていました。
ロングボール一発でヴィニシウスの裏を取っていたら相手の守備に対して攻撃の枚数が少なくなってしまっていました。
今のヴィニシウスとベンゼマであれば二人だけで点を取ることもできたでしょうが、被カウンターのことも考えるとファーストチョイスがベンゼマの足元だったのだと思います。
そして、そのファーストチョイスじゃない次の選択から先制点が生まれたのが14分のシーンでした。
ミリトンからのロングボールは裏へ抜けるベンゼマの目の前に落ちるも一度は奪われます。
しかし、その直後に守備への切り替えでぼボールを奪い返したヴィニシウスがベンゼマにアシストをしたゴールでした。
このゴールはヨーロッパカップ戦の1000ゴール目のゴールで、そのゴールをベンゼマがあげられたことが今のマドリーには重要なゴールだったと言えます。
デ・ゼルビの分析
マドリーの後方でのビルドアップに対して、物おじせずに前からはめてやろうと高い位置を取っていたシャフタールでしたが、左サイド(マドリーの右サイド)でうまくいなされ、質的優位のある左サイドに展開されてしまうというなかなか苦しい入りで先制点を与えてしまいました。
しかし、これでマドリーが落ち着いてくれたことで、デ・ゼルビのシャフタールはしっかりとボールを持って、マドリーを揺さぶることでチャンスを作っていくことに成功しました。
デ・ゼルビは前回の対戦も含め、マドリーを分析しました。
それがマドリーの4-4-2守備です。
・IHの1人が一列前に出る
・カゼミーロの脇がマドリーのデッドスペース
・DFラインのマークの受け渡しに難がある
以上のような弱点のあるマドリーの守備に対してデ・ゼルビは以下のアクションでボールを保持、ゴール前まで侵入を成功させます。
・左SBのイスマイリを最前線に上げ、マークを増やす
・アラン・パトリギを上下動させ、カゼミーロの脇や背後を使う
・左CBがドリブルで持ち上がり、IH+ベンゼマの守備を無効化させる
これらを頭にすりこんだところで、下記の図を見てください。
まず、シャフタールが狙ったのが丸で囲っている2つのエリア。
左CBマチュビエンコの前とカゼミーロの脇です。
右CBのマルロンがボールを持つと、ベンゼマは背中でマイコンを消しながら緩くプレス。クロースが一列前に出てマイコンをマークします。
マイコンがボールを受けにマルロンに近づくとそれに合わせてベンゼマとクロースもずれてきます。
そこでフリーになるのがマチュビエンコでした。
横パスを受けたマチュビエンコは何度となくドリブルでハーフラインを超え、危険なエリアへパスを配球していました。
彼の今日のパスのスタッツは97回のタッチのうち74本のパスを成功(成功率89%)
このマチュビエンコのドリブルをどうしてケアできなかったのか。
それはもう一人のボランチ ステファネンコとイスマイリのポジションにつきます。
ステファネンコのポジションは、ルーカスバスケスがマークをつかなければならなくなり、最前線のイスマイリはモドリッチの意識を後ろ向きにさせるに十分でした。
例えば、モドリッチがマチュビエンコのドリブルを嫌って高い位置を取れば、その背後のイスマイリがフリーになり、そのイスマイリをフリーにさせないようにカルバハルが絞れば、大外のムドリクがフリーになります。
次の図ではバスケスが意図的に最終ラインに落ちた瞬間がありましたが、これはCBのドリブルに対してだれかがいかないといけないための苦肉の策のように感じました。
続いて、カゼミーロの脇を狙うアラン・パトリギのプレーですが、これはマドリーの永遠の課題、未来永劫解決しないマドリー七不思議のひとつなので、見ているマドリディスタの方々は諦めているだろうと思います。
私も諦めています。
ただ、今日の試合はそのカゼミーロの脇を狙うだけでなく、足元でボールを受ける次の動きでDFライン上でフリーになっていたのがポイントでした。
おそらく、アラン・パトリギをマークするのはカゼミーロで、アラバはボールとゴールと周辺の選手を見ながら統率を取る役目だったのだと思います。
カゼミーロはボールウォッチャーになってしまうという欠点があり、アラン・パトリギに足元で受けられないように自分の両脇に注意を払ってプレーしていましたが、アラン・パトリギは「受けられなければその背後」というように、カゼミーロの背後、つまりDFラインでフリーとなることができていました。
結局、アラン・パトリギが後半に交代するまで続くことになりましたが、それでも1失点しかしなかったのはクルトワのおかげであり、最後の最後で食らいつくDF陣とカゼミーロも要因でした。
組織的に守れない、というのはもうどうしようもないので、マドリーらしさで片付けてしまいたいなと思います。
華麗な失点
上で説明したカゼミーロの背後で失点をしたのが40分でした。
上下動するアラン・パトリギにカゼミーロは相当手を焼いていて注意はしていたと思いますが、左CBがかなり高い位置まで持ち運んだことで一瞬気が緩み、気づけばアラバとメンディーの間でフリーになるアラン・パトリギの姿が。
あの瞬間アラバはフェルナンドを見なければならなかった。
大外はメンディーがマークしていたので、アラン・パトリギの飛び出しにはカゼミーロがついていくという選択肢しかなかった中でカゼミーロはボールウォッチャーになっていたので、アラバとしてはどうしようもなかったと思います。
あの場面で胸でパスをしたアラン・パトリギには拍手を送りたいですし、あともう少しのところで届きそうだったアラバの反応速度にも賛辞を贈りたいです。
これで完全に勢いはシャフタール。
前半終了間際にはフェルナンドが抜け出し決定機を作られましたが、ここはクルトワがビッグセーブ。
入ってもおかしくない場面でクルトワがチームを救いました。
相手の勢いを殺すマドリーの後半
猛攻のシャフタール
両チームともハーフタイムでの交代はなし。
前半良い形で終えられたのはシャフタール。
前半開始からボールを持ち、46分には後半最初のシュートを放ちます。(これもDFライン上でフリーになっていた)
マドリーもホームで同点のままではまずいので攻撃に出ていきます。
前半よりもペースを高めているように感じます。
メンディーがハーフスペースに上がり、攻撃の圧を高めていたのは間違いないです。
前半最初のマドリーの猛攻に仕返しするように後半開始はシャフタールが攻めます。
およそ10分間で言えばシャフタールの方がチャンスを作っていました。
レアルマドリード相手にアウェイで同点、というのは選手たちの気持ちも昂るものです。
55分には約2分間ボールを持ち、マドリーにプレーさせることなくゴール前クロスまで持ち込んだシーンもあり、マドリーのカウンターもすぐに潰し、常にマイボールで試合を進めていました。
前に出ても人が足りず、なかなかゴール前まで運べないマドリーに我々は少しだけ嫌な予感がありました。
少しだけですけどね。
強者のゲーム運び
そんな不安を消し飛ばしてくれたのがやはりベンゼマとヴィニシウスでした。
シャフタールが勢いに乗り、良いリズムでマドリーゴールに襲い掛かるプレーを連発している中で、マドリーが逆転ゴールを上げます。
しかも、この攻撃は久しぶりに自分たちのボールにできて、後ろから丁寧にビルドアップを始めた最初のプレーだったので、
「レアルマドリードというチームはなんでこうも強いんだろう。技術が高いだけでなく、相手の気持ちをへし折る時間に、なんで得点があげられるんだろう」と思いました。
レアルマドリードに引き込まれるのはこの強者の部分なんだと今日の試合を見て思いました。
攻められている時間の長さなんて関係ない
守備の組織が統率されるかなんて関係ない
決めるべき人が決めるべきタイミングで試合を決める。
相手がやられてはペースが乱される時間帯で、そういったプレーができる。
レアルマドリードの選手としてプレーする選手たちは、この感覚が抜群。
しかもこのゴール。
ペナルティーエリア内で複数のダイレクトパスが重なる非常に美しいゴールでした。
ヴィニシウスが左から右に横断してきたことで、より狭くなっていたにも関わらず、カゼミーロまでペナルティーエリアに入っていました。
ヴィニシウスとカゼミーロのヒールによるワンツーと、それをダイレクトで真横にパスをするヴィニシウス、そしてそこにいるベンゼマ。
白く輝くマドリーの非常に美しく絶望的なゴールでした。
試合はこのままスコアは動かずにマドリーの勝利です。
後半、マドリーは左サイドの配置を変え、守備の時はモドリッチが一列前に出るように少しだけ変化をつけました。
シャフタールはこの状況でも下を向くことなく、自分たちのやり方を貫き、何度となくチャンスを作っていましたが、こうなったときのマドリーは強い。
なんだかよくわかんないけど点は入らないし、あわよくばもう1点取ろうとする。
大事な試合ほどマドリーはとても強い。
それがよくわかる試合でした。
マドリーの左サイドの使い分け
最後に、この試合で感じたレアルマドリードの左サイドのパターンについて感じたことを書いて終わりにしたいと思います。
下の図を見てください。
この図は、後半の左サイドの攻撃の組み立て方です。
メンディーがハーフスペースの高い位置に上がり、クロースがSBの位置に落ちる。そしてヴィニシウスはワイドに大きく開くというこの動きは、パサーであるクロースを意図的にフリーにすることができる非常に有効なマドリーのビルドアップの形の一つです。
メンディーに対してはDFライン以外の選手が下りてこなければならず、マドリーはより優位にボールを後ろで回すことができるのです。
さて、この形は昨シーズンも良く見たし、クロースがいるときは今シーズンも見られたわけですが、どうやらこの形はクロースの有無で行っているわけではないことがなんとなくわかりました。
それは前半はこの位置をベンゼマが使っていたからです。
前半はメンディーはそれほど上がってこないで、クロースも下りてくることもほとんどなく、中央でゲームメイク。
モドリッチが前線に上がるため、後方でサポートというように見えました。
となると、答えは私の中では一つです。
それは、攻撃の圧力を左サイドの配置でスイッチングしている、ということです。
図を再掲します。
前半の形です。
見比べてもらうとわかると思いますが、前線にかける人数が違います。
後半の形だと、初めからベンゼマを中央に据えることができる、かつ、メンディーがペナルティーエリアに入りフィニッシャーとしても動くことができます。
さらに、前に人が多いので、ネガティブトランジションへの移行も素早く行うことが可能です。
前半は失点をしないように効率よくゲームを進めたかった、後半は勝つために前に人を送りたかった。
この使い分けがマドリーの左サイドによってなされているのだろうなと感じました。
ただ、これは今のところクロースとモドリッチがどっちも出ていないと難しいです。
また、左SBがメンディー以外でも可能かどうかも未知数です。
なので、今シーズンはあまり見られていないのかもしれません。
攻撃的にいきたいから前線の枚数を増やすのではなく、ビルドアップから崩しの局面に対して配置を変えてくることで、切り替えていくマドリーにやはり魅力を感じてしまいました。
ということで、以上です。
リーグではオサスナに引き分けていたので勝利できてよかったです。
バルサの監督にシャビが決まったようで、これからラ・リーガはますます盛り上がっていくことでしょう。
CLにあわせて、ラ・リーガも見ていきましょう!
Hala Madrid!!
それでは!