だれを輝かせるか ~第26節 vs ウェストハム~
こんにちは。
tadashiです。
前節アーセナルを下し、ミッドウィークにあったチャンピオンズリーグラウンド16では見事ボルシア・メンヒェングラートバッハを2対0で下し、アウェイで白星。公式戦の連勝を19に伸ばしたマンチェスターシティ。
今節は、好調4位のウェストハムとの試合です。
冬にマンチェスターユナイテッドからリンガードをローンで獲得したウェストハムはモイーズのもと2月のリーグ戦3勝1分1敗。前節はトッテナムに勝利し、ノリに乗った状態でマンチェスターシティと戦います。
スタメン
両チームのスタメンはこちら
■ホーム マンチェスターシティ 4-3-3
前節アーセナル戦からは、2人を入れ替え、フェラン・トーレスとアグエロがスタメン。
アグエロのスタメンは実に1年ぶり。その最後のスタメンでの出場もウェストハムだったそうです。フェラン・トーレスは、第21節ブレイズ戦以来のスタメンです。
CLボルシア戦からは7人を入れ替えています。中2日の過密日程でもこれだけの選手をそろえられるマンチェスターシティ。なにより怪我人が少ないことがうれしいです。
ギュンドアンとデブライネは途中から左右を入れ替えていました。
■アウェイ ウェストハム 3-4-2-1
普段の4-2-3-1ではなく、3-4-2-1を採用。1週間かけてじっくりとマンチェスターシティ対策を練った結果のシステム変更。
前節トッテナム戦からはボーウェンをジョンソンに変更。普段右サイドのジョンソンを左で起用。これはおそらくSBおよびWBがいなかったことが原因でしょう。
1トップのアントニオに下のリンガードとフォルナレスを配置し、3人でのフィニッシュを狙います。
苦しめられた選手
・リンガード
この冬にマンチェスターユナイテッドからローンで加入した攻撃的ミッドフィルダーがマンチェスターシティを苦しめました。マンチェスターユナイテッドの選手というところが嫌ですね。
アシストを記録したのもそうですが、フェルナンジーニョを自由にしない守備のタスクをこなしながら攻撃時にはバイタルエリアに頻繁に顔を出し、マークにつききれずフリーで前を向かれることも多かったです。
・アントニオ
30歳のこの屈強なフォワードは、ウェストハムでマンチェスターシティを大いに苦しめます。
前回対戦でもそのフィジカルでマンチェスターシティ相手に得点し、これにより2回の対戦のどちらでも得点をあげる珍しい選手となりました。
経歴を見ると2007年からサッカー選手としてスタートし、様々なクラブを渡り歩き2015年からウェストハムに所属しています。
身長は180cmとそこまで大きくはないのですが、80㎏を超える体格を活かし、前線のボールをほとんど自分のものにし、ストーンズ、ルベンディアスにはまったく力負けはしませんでした。
また、前半終わりにリンガードからのパスを受けようと瞬時に左に走るコースを変えたシーンがありましたが、的確にシティの弱点をつこうとする狡猾さも見えました。
ウェストハムの攻めの5バック
上に今日の試合のスタッツを示しています。
ポゼッションの高さやパス本数を見るといつもの勝利だと思われるかもしれないが、現実は数字で見るものとは異なることがよく知られている。
枠内シュート数は3本と同数。
前半20分までシティのシュートは0で、ゴール期待値と呼ばれるxGは、90分間でシティ0.46、ウェストハムは1.93です。
さらに前半だけで言えば、xGはシティが0.13で、ウェストハムは1.81でした。
前半終了時点のスコアは1対1です。
前半のウェストハムは間違いなくシティを上回り、狙い通りの展開を作り上げていました。
そこで今日はモイーズの考えたシティ対策をピックアップしたいと思います。
5レーンを埋めるため
まずは守備からです
基本システムは3-4-2-1のウェストハム。
普段の4バックを変えた理由は2つです。
・5レーンを埋めるため
・サイドチェンジによるWGの単独突破を最大限抑えるため
ここ最近のシティはビルドアップ時には3-2の形(4バック+アンカー)となります。IH及びFWの計5人はそれぞれピッチを縦に5分割したレーンにそれぞれ配置される形になります。
ビルドアップにより相手ディフェンスをずらしながら片方のサイドに集め、一気にサイドチェンジすることで、フリーとなったWGが単独突破もしくはカットインからのワンツーで仕掛け、チャンスを作るのがシティの攻めの形です。
ウェストハムのキックオフで試合が始まりましたが、クレスウェルのロングボールを合図に全体を押し上げるウェストハム。
ビルドアップに対してGKまでプレスにいくアントニオからも見られるようにシティのビルドアップに対して引いて守ることは選択しないことがわかりました。
また、ビルドアップを司るフェルナンジーニョにリンガードを、ジンチェンコにフォルナレスをつけます。後方ではライスとソウチェクが中央を締め、ハーフスペースを含めた5レーンすべてにディフェンダーを配置することで中央でのプレーエリアを狭め、そこからの展開を封じることとしました。
上の図は6分のシーンです。
ウェストハムがボールを奪われたあとにGKのエデルソンまでプレスにいったシーンを表しています。引かずに前からプレスをかけています。
ルベンディアスからエデルソンに渡ったボールに対し、リンガードはルベンディアスを背中で消しながら、またアントニオがストーンズのパスコースを消しながらプレス。唯一のパスコースであるフェルナンジーニョには後方からソウチェクがプレス。
ファウルとなってしまいましたが、素早いプレスでシティを追い込んだシーンでした。
リンガード、フォルナレスはそれぞれマーカーを持っていますが、アントニオのプレスに合わせて前に連動するようなタスクも与えられていたと思います。
さらにはそれにあわせてSHとCHが前にスライドし、奪える位置でインターセプトを狙っていました。試合を通してインターセプトの回数が20回でしたがそのうちの半分以上の12回は前半に生まれています。
マンチェスターシティのビルドアップはあくまで平面的なパスによるものがほとんどで、エデルソンから開いたSBへのプレス回避以外はミドルボールすら使わない特徴があります。
モイーズはその特徴をしっかりと研究し、本番で結果を出しました。
何度かサイドチェンジを許した場面もありましたが、中央締めているおかげでロングボールの出る位置が後方となるため、ゆとりをもってSHがマフレズやフェラン・トーレスへスライドできました。
変化を加えるシティ
中央を経由したサイドチェンジができず、サイドチェンジしても素早くスライドされ、WGが良い状態で仕掛けられない状況が続いたマンチェスターシティは、この男の動きにより変化を与えます。
デブライネのポジション移動です。
デブライネが加えた変化を図に表しています。
元々右のIHで始まったデブライネは、少しずつポジションを変え、ギュンドアンと入れ替わるように左へ。そして中央が窮屈となるとウェストハムのCH2枚の脇に移動したのです。
これによりデブライネはフリーでボールを持つことができ、チームメイトの動きに合わせて高精度の配球が可能となります。それだけでなく、デブライネをフリーにさせたくないウェストハムの心理を読みとり、自分にフォルナレスを注視させることで、ジンチェンコをフリーにさせていました。
もちろんこのデブライネの動きにいち早く反応し、フォルナレスを下げたウェストハムの対応も素晴らしいものでした。
さらに、デブライネは5レーンをすべて埋めるウェストハムのディフェンスラインのチャンネルを横切るドリブルを見せる場面も。
彼の判断と能力で、シティは相手陣内でボールを保持。
28分にマフレズが仕掛けファウルを受けたように、WGが1対1となるシーンを作れるようになったところで待望の先制点が入りました。
コーナーキックのこぼれ球をデブライネにつなぎ、左足で正確なクロス。コーナーキックから中に残っていたルベンディアスとストーンズめがけて放たれたボールはきれいな放物線を描き、ルベンディアスのヘディングシュートをアシストしました。
ひとつ前のフリーキックの場面でもセカンドへの対応が悪かったウェストハム。
このコーナーキックでも同様にセカンドへの対応が悪く、失点をしてしまいました。
攻めあぐねていたシティが先制し、ルベンディアスは初ゴール。デブライネはケインに並ぶ11アシストでアシストランキングトップタイとなりました。
偽SBは弱点
続いてウェストハムの攻撃についてです。
今日のマンチェスターシティはジンチェンコが偽SBとしてビルドアップに関与していました。左SBの位置からするするっとフェルナンジーニョの横に移動し、WGのフェラン・トーレスへのパスコースを作りながら中央でボールを出し入れする役目を担っていました。
モイーズはこのシティの生命線である偽SBを自分たちの攻撃の狙いとしたのです。
前半の15分間をシティのシュート0に抑え、この対策に手ごたえを感じたウェストハムはじわじわと攻撃に転じます。
フォルナレスがデブライネとジンチェンコの対応に追われていましたが、その他の部分ではボールを奪えていたウェストハムは、ボールを奪った瞬間に前線の3人が連動しながらシティの裏のスペース、特に左SBのスペースを虎視眈々と狙っていました。
それが見事に実ったのが39分のアントニオの決定機となったシュートと43分のアントニオの得点です。
39分はジンチェンコをつり出してCBとの間に選手を走りこませたことでジンチェンコの裏をついています。
そして同点となった43分は、前半から繰り返していた引かないプレスから偽SBの裏をつくという最高の形で得点をあげています。
マンチェスターシティを長く見ている人からすれば「いつになったらスローインからボールが繋がるようになるんだよ」と思っていることでしょうが、私も同じです。
アグエロがおりてくるまでスロワーのウォーカーの近くの選手たちは足元でもらうばかり考えているようでした。アグエロにボールが投げられたときにはすでにウェストハムの二人の選手で囲まれていて、ロストの瞬間も先に動き出していたのはウェストハムの選手たちでした。リンガードがデ・ブライネを出し抜いてフリーで受けたときには「あ」と声をあげていました。
アントニオはマンチェスターシティとの1シーズンの対戦で2点をとった選手となりました。
トラオレと言い、こういうフィジカルの強い選手とはことごとく相性が悪い…。
アグエロへのスローインがとられる前のプレーでもウェストハムに追い込まれ、CBからウォーカーへのパスを狙われていました。
嫌な流れを断ち切ったのは前半終了のホイッスルでした。
デブライネとギュンドアン
さて、試合のレビューを一時中断し、この問題を考えてみたいと思います。
デブライネとギュンドア問題です。
今日の試合デブライネとギュンドアンが同時にスタメンで起用されました。
見ている人たちも気になったはずです。
交代時のギュンドアンの険しい表情は、走り疲れたからというわけではないと私は思いました。
ここ数試合と違うのです。
デブライネがピッチにいるのです。
デブライネの怪我により、シティはより戦術的なチームとなりました。
守備の時にはコンパクトな4-4-2もしくは4-3-3で中央を締め、ボールロストしたら素早く囲む。攻撃ではベルナルドシルバが全方位に顔を出し、カンセロとジンチェンコで回し、ジェズスがキープしてWGで仕掛け、最後にギュンドアンで仕留めていました。
しかし、デブライネが入ると良くも悪くも手数が減ります。
攻撃はデブライネからの大技が主体となり、スピードがあるわけではないギュンドアンがゴール前に飛び込む時間はありません。
また、デブライネの守備は大味です。前で追ってはくれますが、雑になることもしばしば。今日の試合のように4-4-2のセンターにいても背後を取られたり、失点シーンのリンガードとの駆け引きでも下がる選択がありませんでした。
前線に残ることも多く、デブライネが持った時の最初の選択肢はゴールに近い人。いなかった8試合と比べてゴール前への到達時間も一人でチャンスを創出する回数も桁違いでした。
ここまで読んでいただいてもうおわかりだと思いますが、デブライネとギュンドアンは両方同時に輝くことが難しい可能性が非常に高いです。
個人的にはそんなこと考えたくもないのですが、バランスを考えたときにはデブライネと”今のギュンドアン”を同時起用するのは少し怖いなと感じました。
試合は、5-4-1に切り替えたウェストハムにボールを持たされていましたが、セットプレーのセカンドへの対応の改善が見られなかったウェストハムに救われ、ストーンズのゴールで勝ち越すことができました。
ジンチェンコやフェルナンジーニョがボールを持つことは許容され、そのパスの先をしっかりとマーク。取れるチャンスがあればトライし、奪えればアントニオとリンガードに預ける。シュートは打てど、得点にならない。これまでのシティであれば敗戦濃厚な試合でしたが、なんとか勝てました。
鉄壁の守備を誇るCB2人が、チームを救う得点をあげたのはチームとして非常に良いことです。
苦しく勝てるか微妙な試合に競り勝つことができることはこれまでシティになかった部分です。
このぎりぎりで勝ち切る力があればCL制覇だってプレミアリーグ優勝だってものにできるだろうと思います。
話を戻します。
以前、私はこんな記事を書いています。
シティの状況が好転したセインツ戦で感じたデブライネを救う方法です。
これを久しぶりに読んでみて思いました。
ギュンドアンを救うのもベルナルドシルバかもしれないと感じてしまいました。
ギュンドアンはベルナルドシルバのようにデブライネを走らせて、デブライネを使うプレーをするとは思えないです。できないのではなく、同じサイドに偏るという選択を取らないと思います。
デブライネとペップならすぐに答えを出してくれると思いますが、私が以前ブログでも話した「王様デブライネシステム」か「デブライネを戦術に組み込むか」という2択を今シーズンはこれまでうやむやにされているようです。
結果
30' ルベンディアス(assist by デブライネ)
43' アントニオ(assist by リンガード)
68' ストーンズ(assist by マフレズ)
HIGHLIGHTS | CITY 2-1 WEST HAM | BEST OFFENCE IS DEFENCE
まとめ(今日のジンチェンコ)
それでは今日も最後にジンチェンコの振り返りをしておきましょう。
まずはスタッツです。
今日もフル出場。
ジンチェンコに今日与えられた役割はビルドアップです。終始首を振りながらCBをとパス交換をし、味方に指示をしていた姿は感慨深いものがありました。成長が期待されます。
ボールタッチ数は両チーム最多の118回、パスコ成功率は92%。キーパスも2本記録しています。
アーセナル戦でも同様でしたが、ファウルを与えてないことはやはり素晴らしい。
インターセプトが4回で、チームの約4分の1を記録。今日の試合はフェルナンジーニョがインターセプト5回と二人でしっかりとフィルター機能を果たしていました。
続いて、ジンチェンコのヒートマップです。
ボールタッチの数もそうですが、左SBの位置を起点に、ピッチ中央はたまたペナルティエリアの前まで入り込んでいました。
赤いエリアがより多くプレーした位置になりますが、左サイドはほほジンチェンコが制圧していたと言っても過言ではないと思いました。
11分のマフレズへのサイドチェンジや17分のデブライネへの縦パス。これはカンセロとは異なるジンチェンコがビルドアップすることの特徴です。
カンセロは、アンカーの横から一気に前進し、ラストパス、フィニッシャー、ラストパス前の仕掛けのパスが出せる特徴がありますが、ジンチェンコにはずっしりと構えてじっくり相手の動きをコントロールする技術をぜひ会得してほしいと思います。
最後に上の図を見てください。
これはヒートマップとほぼ変わらないとは思いますが、ジンチェンコのパスの位置において一番外側を繋いだものです。
これからわかることはジンチェンコがこの試合でカバーしたエリアの広さです。
攻撃方向は左から右。
攻撃方向に向かうにつれてピッチ幅をより占有しているのがわかります。縦方向に関してはほぼすべてをカバー。しかし、縦方向には深くまで踏み込まず、ボール回しに徹していました。
ピッチ面積に対するこの専有面積の割合とその他のデータを活用して、なにか新しい指標を提唱したいなと思っています。
マンチェスターシティはこれで公式戦20連勝。リーグ戦14連勝です。
怖いほど勝っています。
リーグ2連覇をしたときが怒涛の14連勝でリバプールを1ポイント差で負かしたのですが、それを上回る勢いです。
デブライネとギュンドアンなんて問題を書きましたが、正直ぜいたくな悩みです。こんなに勝っているのに何を心配することがあろうか。
シティファンは心配性なんです。
続いてはウルヴス戦。
今シーズンまだ1得点も取れてないという噂のアダマトラオレが覚醒しないことを祈りましょう。
それでは!
アーセナルはデザインの製作途中 ~第25節 vs アーセナル戦~
こんにちは。
tadashiです。
師弟対決再び。
アルテタ率いるアーセナルとの試合でした。
リーグ戦では実に7試合勝てていないアーセナルは、どのように試合を進めてくるのかアルテタの采配や戦術に注目が集まる一戦。
試合自体はシティのもう何試合目になるかわからないクリーンシートでシティが勝利しました。
レアルマドリードから加入のウーデゴーや、今、調子の良いブカヨ・サカ。中村俊輔を崇拝するティアニーなどプレーを見たかった選手が多かったアーセナルの試合は単純に興味深く見ることができ、アルテタの細やかな気配りを感じました。
アーセナルはリーグ戦での対シティ8連敗。引き分けを挟むと2015年まで価値がないので本当に相性が悪いのか、いつの時代もシティが強いのか…。
(私としてはうれしいですが。)
スタメン
■ホーム アーセナル 4-2-3-1
リーグ戦では長らく勝てていないアーセナル。
オーバメヤンを1トップに据えた4-2-3-1で挑みます。ティアニーが先発に復帰し、冬に加入したウーデゴーをトップ下に起用します。
好調のブカヨ・サカは左SHをスタートポジションに自由にハーフスペースに侵入してきます。
CMは、エルネニーとジャカ。セバージョスはベンチスタート。
H&Mとコラボをしているベジェリンは右SBでスタメン。相変わらずのおしゃれさです。PSGからのオファーがあるとかないとか。
前回直前で怪我をして出られなかったホールディングは満を持してスタメンに名を連ねます。
ウーデゴーとサカは、ポジションが被らないのか。
オーバメヤンは左に流れてしまわないか。
ジャカはビルドアップができるのか。
など、気になる点はいくつかあります。
苦しめられた選手
・ブカヨ・サカ
2001年生まれの19歳。
19歳とは思えない落ち着きとハーフスペースでの佇まいはシティを少しだけ苦しめた。
SHなのに、ほとんどサイドにいなくて良かったのはティアニーがいてくれたからだと思いますが、前に同じ左利きのゲームメイカーがいながら左ハーフスペースを陣取るメンタルの強さも魅力。
前半にティアニーとのコンビネーションで放ったシュートとフェルナンジーニョに止められた右サイドへのパスまでの展開がハイライト。
・ティアニー
前半8分間でマンチェスターシティに自らのサイドを攻め込まれたが、即座に切り替えて攻撃の起点となっていたのはさすがセルティックで中村俊輔を崇拝していただけあります。(関係ない)
1本しか成功していないが、9本のクロスを1人であげているところも見逃せない。アップダウンをいとわない運動量と献身性は魅力の1つ。
エルネニーが下がってくれたので、高い位置をキープでき、ブカヨ・サカが空けてくれているサイドのスペースを楽しそうに使っていました。
左サイドにこの二人がいて、オーバメヤンを前線にいる中でカウンターがなかったのが不思議でならなかったです。
■アウェイ マンチェスターシティ 4-3-3
シティは、木曜日に控えるCLを見据えての布陣かとも思いましたが、休ませているのはロドリとフォーデンのみ。
デブライネが先発に復帰し、フェルナンジーニョをアンカーに置いた4-3-3。SBはカンセロとジンチェンコ。CBはクリーンシートの請負人ディアスとストーンズです。
ベルナルドシルバが真ん中に入り、0トップを採用。試合が終わってヒートマップを見るとなんとほぼピッチ全体を動いていた。ベルナルドシルバにラストパスの能力が加わったら世界を取れると勝手に思っている。
分けたいフェーズ
エバートン戦は、そこまで展開の変化がなかったのですが、アーセナル戦ではやはり見えました4つのフェーズ。
今回は以下の4つに分割します。
- フェーズ1 復帰した選手を狙う
- フェーズ2 アルテタの特殊な命令で起きる均衡
- フェーズ3 つなぐアーセナルとデブライネのパス
- フェーズ4 試合をおさめるシティ
※時間帯は下を読む前に想像してみてください。
それではいってみましょう。
フェーズ1 復帰した選手を狙う【キックオフ~8分】
フェーズ1 | ||
アーセナル | シティ | |
ポゼッション(%) | 16.3 | 83.7 |
シュート(本) | 0 | 4 |
パス(本) | 15 | 80 |
パス成功率 | 88 | 94 |
ドリブル成功(回) | 0 | 3 |
クリア(回) | 3 | 0 |
インターセプト(回) | 0 | 0 |
空中戦 | 1 | 0 |
マンチェスターシティが先制点をあげ、アーセナルのゴールキックになるまでの8分間がフェーズ1となります。
なぜこのたった8分間を一つの区切りとしたかというと、アーセナルが、0トップに対応できない、CBへのプレスが緩い、ティアニーが久しぶりの先発という点をつかれ、先制され、さらにピンチを2回招いた中で、落ち着きを取り戻し、五分の展開に引き戻したからです。
マンチェスターシティは右SBカンセロがアンカーの位置まであがり、3-2もしくは2-3の形でビルドアップをします。前線はベルナルドシルバの0トップで、中盤の枚数を厚くし、サイドの質的優位性で勝負をかけたことで先制点を得ています。
ベルナルドシルバも下りることで常に中盤に6人(ベルナルドシルバ、デブライネ、ギュンドアン、フェルナンジーニョ、ジンチェンコ、カンセロ)がいることとなります。
一方のアーセナルは、ペペ、オーバメヤンがCBとSBを見るタスクを持ち、アンカーのフェルナンジーニョをウーデゴーが見る形。サカがインサイドに入り4-3-1-2のような陣形を保持していました。
上述したように中盤6枚でポゼッションが可能なシティ。アーセナルが守備に中盤の枚数を増やすには、SHのペペが下がるか、CBがベルナルドシルバについていくか、SBが絞るかの3つがありますが、アーセナルはそのどれも選択しませんでした。実行したのは4バックを締めることだけでした。
こういった状況の中、1人が2人を見るというやり方にペペのCBへのプレスが曖昧になり、シティはCBからの斜めのロングボールを使い、5分間で3度マフレズへ通し、ティアニーとの1対1を作り出しました。そのうち一回はデブライネがボールを持つマフレズの外側を回り、局面2対1も作り出し、シティは右サイドを積極的に仕掛けていました。
ホームのアーセナルは、完全に出鼻をくじかれ、受け身一辺倒。
6分には、ストーンズとデブライネが右サイドライン際で縦関係を作り、ボールを受けたデブライネが中央へスルーパス。スターリングが飛び出し、追加点のチャンスも得ました。
8分にようやくゴールキックからのビルドアップを始めることができ、試合はようやく落ち着きました。
それだけでなく、打ち込まれていたティアニーも下を向くことなくこのあとの時間帯からシティに猛威を振るうのです。
フェーズ2 アルテタの特殊な命令で起きる均衡【9分~前半終了】
フェーズ2 | ||
アーセナル | シティ | |
ポゼッション(%) | 47.3 | 52.7 |
シュート(本) | 3 | 2 |
パス(本) | 228 | 263 |
パス成功率 | 87 | 88 |
ドリブル成功(回) | 3 | 4 |
クリア(回) | 7 | 11 |
インターセプト(回) | 3 | 4 |
空中戦 | 6 | 2 |
ようやくアーセナルは用意していたプレーを見せ、均衡した試合展開を見せたのがフェーズ2となります。
アーセナルのビルドアップをおさらい。
CBが大きく開き、エルネニーがその間にサポート、SBはライン際まで開き、高い位置に進出します。
GKからCBやエルネニーを経由しながらシティのマークのずれを見て、ジャカやサカが間に入ることで突破する、だめならSBへロングパスというプランでした。
試合を通して、前からハメにくるシティのプレスを回避することができていたし、それにより中盤+サカが前向きで運べることも多くありましたが、オーバメヤンやペペの快速を活かしたカウンターをするわけでもなく、少し時間を使いながら人数がそろうのを待っていました。
プレス回避がこれだけデザインされながらファイナルサード(ピッチを3分の1にわけた相手陣内)でのプレーがとても曖昧だったと感じました。
シティとしてはプレスをかいくぐられても戻る時間があり、カンセロとフェルナンジーニョがフィルターとしてファーストディフェンダーにいけるので、引かずに攻めたディフェンスが可能だったと思います。
アーセナルがチャンスを作れていたのはティアニーのいる左サイドでした。
エルネニーがCB間に入り、SBを高く押し上げたことで、ティアニーとサカが前線でカンセロと対峙することができ、局面2対1の状況を作りクロス、シュートまでもっていくことができていました。(前半8分間とは逆)
44分には、ジンチェンコのサイドで同じようにベジェリンとペペが近い位置を取り、ジンチェンコサイドへのロングボールからアーセナルボールにし、最終的にはフィニッシュまでいっています。
アーセナルの左サイドではサカとティアニー、右サイドではペペとベジェリンで攻撃を仕掛けていましたが肝心のオーバメヤンが完全に消えていました。
シュート 0
タッチ数 9
パス数 5
とサイドを使いシティ相手によく戦っていたように見えて、シティは要の選手を自由にさせていませんでした。
で、ここでアルテタの特殊な命令についてです。
アルテタはシティエバートンの試合からおそらく構想を得たと思うのですが、IHに対してマンツーマン気味にセット。ジャカとエルネニーはシティのIHをマークします。アルテタがさらにこだわった部分が、サカにカンセロをマンマークさせることです。
内に絞ったカンセロにも、裏に抜けだすカンセロにもサカはついていっていました。これが功を奏していたとは言えませんが、エバートン戦よりもカンセロの自由はなかったように思えます。(デブライネがいたからだとも思いましたが)
攻撃もスピードを使わず、キープレイヤーであるギュンドアン、デブライネが、カンセロにマークをつけることで、均衡した試合展開を作ったのだと思います。
フェーズ3 つなぐアーセナルとデブライネのパス【後半開始~63分】
フェーズ3 | ||
アーセナル | シティ | |
ポゼッション(%) | 52.3 | 47.7 |
シュート(本) | 2 | 6 |
パス(本) | 114 | 105 |
パス成功率 | 88 | 92 |
ドリブル成功(回) | 3 | 2 |
クリア(回) | 1 | 3 |
インターセプト(回) | 1 | 2 |
空中戦 | 0 | 0 |
アーセナルがポゼッションで勝りボールを繋いだ時間がフェーズ3となります。
前半の終了間際から見られたシティの前からのプレスが弱まったことが継続しており、アーセナルがボールを少しずつ前進するのが見て取れました。
終了間際のウーデゴーへの縦パスや61分のサカへの縦パスなど、前半よりもプレスが弱まり、ジャカやエルネニーが角度をつけてパスを通すことができていました。しかし、何度も言いますが、これによってスピードをあげて攻めるわけではなかったアーセナル。オーバメヤンがなぜ1トップに入っているのか不思議でなりません。
ちなみにこの時間帯のオーバメヤンはタッチ数2、シュート、パスは0回でした。
シティは少しだけアーセナルに傾いた時間帯でもシュートチャンスはしっかりと作っています。
それはデブライネのチャンスクリエイトの能力のたまものです。頼りたくなる気持ちもわかる。
試合を通して、クロス2本、キーパス3本、シュート3本と63分間のプレーで、かつ9試合ぶりの先発で素晴らしい活躍でした。あの47分のループシュートも時が止まりました。追加点は奪えませんでしたが。
やはり彼がひとりいるだけでチャンスの数は格段と増えるのは間違いないですが、今のシティはデブライネを使うこともできる。デブライネがボールを受ける側に回ることがあって初めて、この彼の能力は何倍にも効果を発揮するんだと個人的には思っています。
フェーズ4 試合をおさめるシティ【64分~試合終了】
フェーズ4 | ||
アーセナル | シティ | |
ポゼッション(%) | 45.3 | 54.7 |
シュート(本) | 2 | 3 |
パス(本) | 122 | 151 |
パス成功率 | 79 | 83 |
ドリブル成功(回) | 4 | 10 |
クリア(回) | 1 | 3 |
インターセプト(回) | 2 | 1 |
空中戦 | 6 | 7 |
デブライネが下がり、ジェズスが出てきたシティがプレスのスピードをあげて試合を締めた時間帯をフェーズ4とします。
交代の意図は、もともとデブライネのプレー時間を決めていたことに加え、前からのプレスが弱まっていたからです。
IHはベルナルドシルバ。4-3-3、4-4-2のセットをベルナルドシルバの立ち位置で使い分け、ジェズスがハイプレスを仕掛けることでCBのミスを誘発していました。
アーセナルはスミスロウとラカゼットを投入しますが、効果的な攻撃は見られず。
守備では、シティのビルドアップに対して引かずに前からいきますが、CBに持ち運ばれるなど、シティの選択するプレーになんとか追いつくのが精いっぱいだったように見えました。(CBにボールを運ばせるというのはそれだけ守備時の配置が良いとも言えます)
最後に訪れたカンセロの79分の決定機は決まらず、試合はそのまま終了しました。
FW関与率
最後にデータ的なところを一つ。
このアーセナル戦を見ながらぼんやりと「チームにおいて、FWのプレーへの関与と得点にはなにか相関があるだろうか」「そもそもFWの関与率ってどう考えられるかな」と思っていた。
それはアーセナルのオーバメヤンがほとんどボールに絡めず、実況に名前も呼ばれず、数字上もほとんどいないような数字だったからだ。
いつものようにWHoScoredを眺めながらオーバメヤンとベルナルドシルバ and ジェズスのプレー関与について率を出してみた。
①シュート
これはFWなら必須の条件。試合を決定づけるゴールを決めるにはシュートが不可欠。
シュートに関する関与率を以下の式で表すことにする。
シュートの関与率(%)=そのプレーヤーのシュート数/チーム全体のシュート数
※交代選手は出場時間におけるチーム全体のシュート数
結果は以下
- オーバメヤン 0/7=0
- ベルナルドシルバ 0/15=0
- ジェズス 1/3=33.3
②タッチ数
そもそもボールに触れなけらば試合に関与することなんてできないので、その後のプレー選択がどんなものかにもよるが、まずはボールに触ること。
タッチ数の関与率(%)=プレーヤーのタッチ数\チーム全体のタッチ数
※交代選手は出場時間におけるチーム全体のタッチ数
結果は以下
- オーバメヤン 19/609=3.1
- ベルナルドシルバ 46/738=6.2
- ジェズス 19/193=9.8
③パス数
最後にパス。FWは背を向けてボールを受け走りこむ選手に前を向いてプレーできるようにパスをしなければならないし、時としてサイドや中盤に降り、クロスやスルーパスも出さなければならない。
パス数の関与率(%)=プレーヤーのパス数\チーム全体のパス数
※交代選手は出場時間におけるチーム全体のパス数
結果は以下
- オーバメヤン 11/479=2.2
- ベルナルドシルバ 41/599=6.8
- ジェズス 11/151=7.3
①~③を統合すると、ジェズスが1位となりました。
いったい何の結果なのかいまいわかりませんが、オーバメヤンが試合に関与できていないのはこの数字からも見て取れます。
ちなみにそれぞれの両チームあわせた1位は、①スターリングとデブライネ②ルベンディアス③ジンチェンコとルベンディアスでした。
しかし、世の中にはラウールゴンザレスのような、フリーランニングだけでチームを勝利へ導く選手がいますので一概にこのデータだけで試合への関与を語ることはできないです。では、どうすればいいのか、というのはいまだにわかりません助けてください。
それでは最後に、この3選手のヒートマップを載せておきます。
ベルナルドシルバの広さに脱帽。彼に関しては数字以上の試合への関与が見られていたはずです。
結果
2' スターリング(assist by マフレズ)
HIGHLIGHTS | Arsenal 0-1 City | RAHEEM STERLING GOAL AFTER 80 SECONDS?!
まとめ(今日のジンチェンコ)
さて、フル出場のジンチェンコを振り返ります。
プレイ時間:分 | 90 |
ボールタッチ:回 | 94 |
パス数:本 | 80 |
成功率:% | 93.8 |
キーパス:本 | 2 |
シュート:本 | 2 |
クリア:回 | 3 |
インターセプト:回 | 1 |
タックル:回 | 1 |
空中戦勝利:回 | 2 |
1対1勝利:回 | 1 |
ファウル:回 | 0 |
上の表はジンチェンコの試合スタッツのまとめです。
特筆すべきは与えたファウルの数が「0」という点です。
セットプレーを与えていないというのはディフェンダーとして素晴らしいです。SBですし、今日のようにアーセナルがカウンターを仕掛けてこなかったこともあり、戦術的なファウルをする必要がなかったことも要因の一つです。
空中戦での勝利はペナルティーエリア内でのもの、タックルも自陣左サイドの深くでボールを回収したシーンとディフェンス面でも貢献を見せました。
シュートは46分と55分。左右それぞれで放ったシュートは、枠外とDFにブロックされましたが、積極的に前線にも顔を出していることがわかります。
パスに関しては、前方へのパスと後方へのパスが半々です。しかし、消極的なパスというよりは、サイドへ転換するためのCBへの落としのパスが多いので、攻撃への関与という点では変わりはありません。
キーパスが2回ありました。
89分のパスは縦パスですが、47分のプレーはデブライネのループシュートを呼んだペナルティーエリア内でのパスでした。おそらくデブライネが意図したところよりは右寄りに出てしまったパスですが、その前のスターリングが囲まれたところで見せたインナーラップからの流れを見ると素晴らしいプレーと言えるでしょう。
アーセナルがボールホルダーに3人寄っていったのでアーセナルの左SB裏が空いたのですが、(なんとSH、CM、SBがスターリングにプレッシャー)スターリングがキープした少しの時間で持ち場を離れる判断をしたジンチェンコの良いプレーでした。
試合はマンチェスターシティの勝利。
リーグ戦13連勝、公式戦18連勝。対策をされながらもそれをはねのけた本当の強さをシティからは感じます。
アーセナルは、アルテタのサッカーが落とし込まれているようには思いますが、ファイナルサードでの戦い方がいまいち見えてこなかったです。特にオーバメヤンへパスを出せる選手がだれもいないのは大きな問題ではないかと…。
また、左利きのサカとウーデゴーが同時に出場する難しさも感じました。
どちらもハーフスペースで前を向きたい選手。しかし、どちらかは右のハーフスペースにいかなければなりません。この試合は結果的にウーデゴーが右のハーフスペースでプレーをしましたが、攻撃が左に偏っており、見せ場は作ることはできなかったと思います。
次は、CLラウンド16のボルシア・メンヒェングラートバッハ戦。
勝って頂を目指してもらいたい。
応援しましょう。
それでは!
アンチェロッティの罠にはまったジェズス 第16節 vs エバートン
こんにちは。
tadashiです。
今日はマンチェスターシティに新型コロナウイルス感染者が増えたときの延期分のエバートン戦です。
エバートンにはとても相性が良くて、10年間で負けたのは一度きり。また、ジェズスが7試合中5得点という相性の良さを発揮。
今シーズンはレアルマドリードからハメスロドリゲス、ノリッジからゴードフリー、ワトフォードからドゥクレ、ボーンマスからキングなど戦力の上積みを行ったエバートンは、名将アンチェロッティのもとでどのようなシティ対策をしてくるのか楽しみでした。
一方、ギュンドアンが怪我により出場不可。SNSでは「ストライカー不在」と書かれるほど、今のギュンドアンはシティにとっての得点源。
驚きの対策を披露してきたエバートンに対してもシティはいつも通りの戦い方を見せ、しっかり勝ち点3を獲得。
それではこの試合を時間もないのでさくっと振り返っていきましょう。
スタメン
両チームのスタメンはこちら
■ホーム エバートン 4-4-1-1
前節から3人を入れ替えたエバートン。
ディフェンスラインの4枚は全員がCBをこなせる選手たちを並べています。
普段SBでプレーしているディーニュが今日はSHに入ります。
カルバートルーウィンが怪我で欠場のトップにはリシャルリソンが入ります。
起点を作れるのかがポイントですが、重心を低く守ることになると予想されました。
ハメスロドリゲスが、ベンチ入り。
■アウェイ マンチェスターシティ 4-3-3
さて、前述したようにエバートンには相性が良いマンチェスターシティは、前節から3人を入れ替え。
怪我のギュンドアンは欠場。フォーデンが久しぶりにIHに入ります。
両WGはスターリングとマフレズ。逆足の配置。
デブライネが8試合ぶりにベンチ入り。80分からの出場を果たし、フォーデンへのアウトサイドでのらしいパスを1本通しています。
エバートンの対策とは
エバートン | マンチェスターシティ | |
得点 | 1 | 3 |
ポゼッション(%) | 29.6 | 70.4 |
シュート(本) | 3 | 16 |
パス(本) | 313 | 755 |
パス成功率 | 73 | 90 |
ドリブル成功(回) | 5 | 15 |
コーナーキック | 0 | 10 |
クリア(回) | 28 | 6 |
インターセプト(回) | 14 | 4 |
空中戦 | 16 | 14 |
参考:WhoScored
本日の試合のスタッツが上の表です。
圧倒的です。守備のスタッツでエバートンが勝っているのはそれだけ攻められていたからです。
それにしてもポゼッションの低さ、パスの少なさは異常です。これだけタレントの揃っているエバートンがここまで圧倒されるのはなぜか。
それは、アンチェロッティがシティに勝つために施した対策が原因でした。
シティのIHとSBをマンマーク
シティはいつものようにカンセロをロドリの横に並べる3-2のビルドアップで試合を進めます。当然、攻撃時には中盤の選手としてふるまうカンセロは、時に右サイドやゴール前まで移動します。
2分のシーンでは、右SHのイウォビがカンセロの中央へのドリブルに対して戸惑いながらの対応が見られました。それに対してチームのだれかがサポートするわけではなく、あくまでイウォビが対応するべき相手というような意思の統一が見られ、これ以降イウォビはカンセロを徹底マークすることになります。
38分にはルベンディアスからゴール前に飛び出したカンセロへ浮き球のパスが出ますが、ついていったのは右SHのイウォビでした。
というように、アンチェロッティは、CMのデイビスとドゥクレ、SHのイウォビとディーニュにマンマークをするように指示していました。
【マークの相手】
- デイビス ⇒ ベルナルドシルバ
- ドゥクレ ⇒ フォーデン
- イウォビ ⇒ カンセロ
- ディーニュ ⇒ ウォーカー
シティのIHは中央に留まることはあまりなく、サイドにスペースがあれば開いてボールを受けることもあります。チャンスがあればCB-SB間を抜けるプレーも見せますが、特に前半はその行動すべてに張り付いていました。
後半では、デイビスやドゥクレがマークを受け渡す瞬間も何度か見られましたが、シティ3点目のシーンでは中央ががら空きでした。マークの受け渡しもマンマークもダイレクトプレーにはなす術がないということです。
アンチェロッティの策は少なくとも2失点目を奪われるまではシティに対して有効に機能していました。
まず、コーナーキックの数。
これは中央を締め、サイドからの攻撃に終始させ、クロスを上げさせない、もしくはクリアしていたことによるものでした。
また、ジェズスのプレーエリアをゴール前から遠ざけることに成功。
エバートンのCMが動き回るIHにマンマークでついていくのだから必然的に中央には、敵も味方もいない瞬間がありました。そこでジェズスに下りて受けさせることで、ゲームメイクの必要性をジェズスに与え、ミスを誘発していました。
ジェズスのタッチ位置をプロットしたものです。
ボールを受ける位置が比較的低い位置で、その回数も多いことがわかります。
このようにエバートンはマンチェスターシティの選手がゴール前から離れるように誘導するこができていました。
コーナーキックの数が増えつつもなかなか決定機を作れなかったのはアンチェロッティの策にはまっていたからだと思いました。
そんな中で32分のフォーデンのゴールは流れを断ち切る意味もあり非常に良かったと思います。コーナーキックのこぼれ球からつながれたものでしたが、予測をしたポジショニングと利き足ではない右足でのシュートと、フォーデンは今シーズン絶好調のリーグ6ゴール目です。
先制点を取ってさらにシティの時間になるかと思いましたがその5分後の37分にエバートンが同点のゴールをあげます。
これは唯一といってもいいSBのインナーラップに、シティDFが対応できずペナルティーエリアの深くでフリーにさせてしまったことが原因です。
ここに関してはSBの侵入をだれが寄せるのかという決まりを作っておくべきだと強く感じました。あまりこの位置に侵入されることがないのでなおさらチームとしての共通認識が必要と感じさせる失点だったと思います。
前半はその後エバートンの時間帯。
デイビスを中央に残し、ドゥクレが高い位置に進出し、攻撃に転じることができていました。
エバートンのCMの二人のタッチ位置をプロットしたものです。
最後の10分間においては、ドゥクレが高い位置をキープ。8回のタッチのうち相手陣内でのボールタッチが半分以上を占めています。
エバートンは、3本のシュートのうち2本はこの10分間で打ったもので、1点を取っています。好調のシティ相手に前半を同点で終えられた。これはアンチェロッティの作戦通りだったと言えるでしょう。
一方のシティはサイドから起点にクロスを試みるもエバートンの高さによってシンプルなクロスがあげられず、チャンスを作ることができませんでした。
(残り10分間のクロス数はエバートンと同数の3本)
右サイドの微修正
同点で迎えた後半は、前半よりもマンチェスターシティのペースが顕著でした。
前半からボールを持たれていたリシャルリソンに対してより厳しくぶつかるようになり、起点をつぶし始めたシティ。
リシャルリソンは、前半13本パスを出していましたが、後半は6本と半分以下に減。
シティは、対抗できていたリシャルリソンを止め、一方的な展開を作ります。
マンチェスターシティの具体的な変更はウォーカーのポジショニング。
前半よりも開いた位置でボールを受けるようにしたり、高い位置に進出したりとエバートンのマンマークを利用して(ウォーカーが高い位置に行けばディーニュがついてくる)、攻撃をしながら守備を考えたプレーを見せることができました(カウンター封じ)。
逆サイドも同様で、イウォビがどこまでタスクを与えられていたかはわかりませんが、左から中央へ入り込んだカンセロの右足でのパスから決定機を作っています。
51分、55分の決定機は、それぞれカンセロとウォーカーのパスから生み出されたもので、これによりエバートンのSHは重心を低く、その危険なプレーに注意する必要が生じました。
イウォビ(左図)とディーニュ(右図)のヒートマップを表しています。(攻撃方向は左から右)
二人とも自陣でのプレーが多く前線に上がることが少なかったことが見て取れます。アンチェロッティの策は、キーマンとなるSBを封じ、ボールを奪った後、1トップでキープして次の展開を考えていたのだと思いますが、シティの圧はそれ以上で、SHはほとんど高い位置でのプレーができていなかったです。
そして試合を決めたのが右サイドから生まれた2本のゴールです。
これは前半から何度もシティが仕掛けていたベルナルドシルバとマフレズのコンビからなるものでしたが、前半と比べて少しだけ彼らは変えています。
それがサイドライン際から中に入るタイミングです。
前半は、例えばベルナルドシルバがペナルティーエリア付近でボールを持った時、マフレズが外を回って後方にポジションを取ったのを確認してからつっかけるドリブルを開始していました。これはディフェンスからしてもタイミングがとりやすくマークもつきやすいため、2対2という状況でもカットインを防ぎ、クロスに対してもパスコースに入り込むことができていました。
しかし、後半はドリブルの開始のタイミングを早め、マークに来ている目の前の選手を先に動かすことを意識。
63分のマフレズのゴールは、そんな細やかな修正から生まれたものでした。
ベルナルドシルバがデイビスを引き連れて縦につっかけるドリブルを見せているころには、マフレズが外を回ってベルナルドシルバの後方へ。SBとデイビスがベルナルドシルバに釣られていることでフリーとなったマフレズが左足できれいな弧を描いてゴールを決めました。
77分の3点目はこれまでのエバートンのマンマーク守備をあざ笑うかのようなダイレクトプレーでディフェンスをはがしてベルナルドシルバのミドルシュートが決まりました。
マンマークはたしかに有効だけど、すべて1タッチでプレーすれば寄せる暇もなくゴールできるよ、と教えてくれたようでした。
ちなみに70分から出場したハメス。トップ下に入りましたが、シグルドゥソンと違ってあんまり動きもなく、中央を意識していたシティにとってはより守りやすくなってしまったと言えるでしょう。個人的にはなにか見せてくれるかと思っていたので残念でした。
結果
32' フォーデン
37' リシャルリソン
63' マフレズ(assist by ベルナルドシルバ)
77' ベルナルドシルバ(assist by ジェズス)
HIGHLIGHTS | EVERTON 1-3 MAN CITY
まとめ(今日のジンチェンコ)
今日のジンチェンコは、ベンチスタート。
そのまま試合に出ることはありませんでした。
次回のジンチェンコは、2月21日アウェイのアーセナル戦。
出場に期待。
アンチェロッティの策は個人的には驚きでした。
あれだけのタレントを抱えながらマンマークのディフェンス。SHにマンマークを課すことで、カウンターへの移行も遅くなるなんてことはアンチェロッティもわかっていたはず。
それだけリシャルリソンのキープ力を期待していたのか、セットプレーやコーナーキックなど一発だけを狙っていたのかそれはわかりませんが、少なくとも今のシティにマンマークを強いても無駄だということがわかりました。
攻撃に転じる形が見られずSHが押し込まれる。ポジティブな展開を思い出すことも難しいそんな試合になっていたと思います。
さて、マンチェスターシティは公式戦16連勝、リーグ戦13連勝。
独走態勢です。
このまま優勝まで突っ走りたい。
アケが個人練習に戻り、ギュンドアンが全体練習に復帰したマンチェスターシティ。ついに全員がそろう時がくるのか!
次節はアーセナル。
アルテタの作戦はいかに。
それでは!
自分の得意なことで、相手の嫌なことをしよう ~第24節 vs トッテナム~
こんにちは。
tadashiです。
雪もちらつくバレンタイン。
思いを伝える相手には言葉で伝えないと伝わらない。しかし、サッカーではその思いをボールに込める。
今日の試合はモウリーニョ率いるトッテナムことスパーズとの対戦。
第9節ではトッテナムのホームで惨敗し、リベンジを果たすときがやってきました。
この試合以降マンチェスターシティは負けておらず、第20節では首位に立ちました。その勢いはそのままに前節リバプールを粉砕。スパーズも見事にはねのけてしまいました。
一方のトッテナムは一時首位に立ちながらも勝てない時期が続き、EL圏内からも離脱。踏みとどまるには勝利が必要でしたが、この試合はマンチェスターシティにいや、ニヒルな笑みを浮かべるサイコパスにやらてしまうのです。
入場時に同国出身のベルナルドシルバとカンセロとひじを合わせたモウリーニョ。今日はどんなプランで「戦術勝ち点3」を選手たちに伝えたのでしょうか。
今日も前節のレビューと同様に時間の経過を4つのフェーズに分割して見ていきたいと思います。
スタメン
両チームのスタメンはこちら
■ホーム マンチェスターシティ 4-3-3
スターティングイレブンを見て、すべてのシティファンが思ったことが、そう。
ルベンディアスがベンチということです。FAカップスウォンジー戦を胃の不調で欠場していましたが、この試合の前には練習に復帰したとかなんとか。今日は大事をとって休ませたのでしょう。
前節リバプール戦からは2人を変えています。マフレズをジェズス、ルベンディアスをラポルトです。ラポルトとストーンズがCBでコンビを組むのはなんと今シーズン初めてです。というよりも昨シーズン開幕戦までさかのぼることになります。なおさら今日の勝利は格別だったことでしょう。
Big John 🕺🏻🚪⛔️ #cantpassthis pic.twitter.com/LhPuprCfy3
— Aymeric Laporte (@Laporte) 2021年2月13日
最高の笑顔ですね。
■アウェイ トッテナム 4-2-3-1
前節WBA戦からは同じく二人を変更。アルデルヴァイレルトをサンチェス、オーリエをタンガンガに代えています。
怪我人が多く、ロチェルソ、オーリエ、レギロンが欠場。
エンドンベレがアンカーに入り、ルーカス・モウラがトップ下。ケインとソンフンミンはしっかり出場しています。今シーズンのケインとソンフンミンのコンビは凄まじく、だからこそ依存している印象です。現にケインが怪我をしてからというものスパーズは失速し、順位表でも中途半端な位置にいるのです。
苦しめられた選手
■ベイル
この試合は、ケインもだめ、ソンフンミンもだめ、エンドンベレもいないようなものだった。ホイビュアもシティのチャンネルランに対応できず、ゲームも作れていなかった。そんな中で72分から出場したベイルは、出場はラメラと変わって入ったので右SHでしたが、中央にポジションを取り、18回のタッチで2本のシュート。特に1本目のシュートは密集したシティ守備陣を柔らかいタッチでかわし、左足を振りぬきました。
もちろんこれまで対戦したチームの選手たちと比べたら苦しめられたうちに入りませんが、この試合のトッテナムのメンバーの中では良いプレイを見せていました。
分けてみるべきフェーズ
前回対戦では、見事にあの時点でのシティの弱点を突かれて開始早々に失点しました。さらにはシティの攻撃もシャットアウトされてしまい、終わってみれば0-2の敗戦でした。
今回はそのリベンジができたことでシティファンからすると大変気持ちの良い試合でしたが、不可解な点がいくつかありました。
それは、モウリーニョのチームらしからぬ守備のほつれが何度も見られたことです。
簡単に羅列すると以下の通り。
- ラインがバラバラでオフサイドが取れない(2分)
- DFラインの裏を簡単に取られる(4分、8分)
- IHのチャンネルランへの対応が曖昧(試合を通して)
- WGのカットインに対するプレスの甘さ(50分の失点シーン)
負けないサッカーをして、相手の嫌なところを突いてくるモウリーニョがどうしてこのような負け方をしたのか、本日も4つのフェーズに分けて試合を見ていきたいと思います。
今日は以下のようなフェーズが考えられると思います。
- フェーズ1 曖昧な守備のスパーズ【キックオフ~25分】
- フェーズ2 WGを入れ替えて狙いを定めるシティ【26分~前半終了】
- フェーズ3 注目のギュンドアン【後半開始~70分】
- フェーズ4 ベイル躍動、孤立ケイン【71分~試合終了】
それではいってみましょう。
フェーズ1 曖昧な守備のスパーズ【キックオフ~25分】
フェーズ1 | ||
シティ | トッテナム | |
パス(本) | 210 | 102 |
ポゼッション(%) | 67 | 33 |
シュート(本) | 5 | 2 |
ドリブル成功(回) | 4 | 4 |
クリア(回) | 1 | 3 |
インターセプト(回) | 1 | 4 |
シティがPKで先制するまでをフェーズ1とします。 このフェーズはシティの保持とそれに対するスパーズという構図が見てとれました。
13分のケインのフリーキックが決まっていれば結果は大きく異なっていたかもしれません。
トッテナムのキックオフで始まったこの試合はCBからケインを狙ったジンチェンコ側へのロングキックで全体を押し上げ。
その後はブロックを作ってシティのビルドアップを受けて立つアウェイの戦い方を選択します。なんせモウリーニョですから。
シティは、SBをロドリの横に並べて2-3の形でビルドアップします。ジェズスも偽9番のような振る舞いを見せ、2-3-5という配置でスパーズを崩しに行きます。サイドに幅を取るのは両WGです。
リバプール戦もそうでしたが、今日のカンセロも役目としては偽SBで、カンセロロールではありません。(この二つの定義がいまだ不明瞭ではありますが)
それはリバプールもスパーズもカウンター時のスピードが抜群で後ろにある程度人を残しておきたいという気持ちがあるわけです。また、下図にも書いていますが、ロドリと並んでSBが位置しているので、仮にビルドアップの途中でボールロストしてもSBがファーストディフェンダーとして機能することができます。
これは、ロドリがファーストディフェンダーとしての役割に苦手意識を持っていて何度かプレスがかからないことがあったというシティの弱点に対する一つの答えであると言えます。(違ったらごめんなさい)
スパーズは上の図のようにボール非保持には4-4-1-1でセット。ケインとルーカス・モウラでケインを挟みます。
幅を取るWGにはSBが対応します。サイドにボールが寄ったときは全体的にスライドし、逆サイドにはパスが出てから対応していました。前半始まって少し気になったのはスパーズのプレスが、シティの選手のトラップの方向を意識していたように思えたことです。なんてことない部分ですが、パスミスを狙うプレスではなく、ボールを奪おうというプレスに見えたというだけです。
さて、パス本数がスパーズの2倍、シュート数が2.5倍のシティはどのように4-4のブロックを崩したのか。
それは局所的数的優位性の確保です。
下の図を見てください。
左サイドに配置されているジンチェンコ、ギュンドアン、フォーデンにベルナルドシルバを加えてスパーズ守備のSHとSBを4対2で圧倒します。たまらず、DHとCBが寄せてくることになり、それにあわせて全体的にシティでいう左サイドにスライドします。(ディフェンスのセオリーなので守備側は絶対に行う行動)
そのタイミングで後方に控えるロドリへ下げ、フリーで待つWGめがけてサイドチェンジです。
右サイドも同様です。
左サイドと異なるのは、ベルナルドシルバがサイドに出て、ジェズスが絡んでくることです。このときにギュンドアンが中央付近にいることもポイントかもしれません。
ベルナルドシルバはどれだけ働き者なんだよって感じですね。
比較できるように前半のギュンドアン、ベルナルドシルバ、ジェズスのタッチ位置のプロットを貼っておきます。
ギュンドアンの右サイドでのプレーはフリーキックなのでほぼ、左から中央にエリアが限定されていますが、ベルナルドシルバは右サイドライン際から左サイドまで大きく動いていることがわかります。ジェズスも中央でのプレーはほとんどなく、下がったり左右に流れたり、ディフェンスのずれを生み出し、シティがボールをキープするのに大いに貢献していました。
何もできなかったスパーズというわけでもありせん。
このフェーズ1において、一度だけ素晴らしいスパーズのプレス回避がありましたのでご紹介。
GKからのビルドアップのシーンです。両側に開いたCBに対してスターリングとフォーデンが寄せ、ジェズスとベルナルドシルバが縦に並ぶ。その他の配置は図の通りです。
ロリスは下りてきたホイビュアにパスを出すと、ホイビュアはダイレクトで右サイドに張っているタンガンガにダイレクトではたきます。
そして次の図。
ホイビュアはそのままタンガンガに近寄る。タンガンガはギュンドアンがプレスに来たことを見て、ダイレクトで寄ってくるホイビュアに落とします。それにあわせて前線ではルーカス・モウラが一度受ける動きをして右サイドに抜けます。ロドリがそれについていってしまったことにより中央に大きなスペースが発生。ホイビュアはまたもダイレクトでケインに預けました。
残念ながらフィニッシュにつながりはしませんでしたが、スパーズとしてはいい形でシティのプレスを回避することが可能だと感じたはずです。
しかし、その数分後にPKにより失点して、流れは一気にシティに傾くのですからサッカーは残酷です。
フェーズ2 WGを入れ替えて狙いを定めるシティ【26分~前半終了】
フェーズ2 | ||
シティ | トッテナム | |
パス(本) | 143 | 93 |
ポゼッション(%) | 60.4 | 39.6 |
シュート(本) | 4 | 0 |
ドリブル成功(回) | 3 | 1 |
クリア(回) | 2 | 7 |
インターセプト(回) | 1 | 0 |
シティの得点が入ったあとから前半終了までがフェーズ2です。
スタッツから、シティが圧倒していることがうかがえます。当然、攻撃に転じようとしたトッテナムですが、19分に見せたようなプレス回避はこのフェーズでは見ることはできず、シュートは0。中盤底に構えるエンドンベレとホイビュアはそろってゲームを作ることができていませんでした。
唯一対抗できていたのがソンフンミンとラメラ。中盤からボールを引き出して、なんとか攻撃に転じようとしていました。この時間帯で、ケインとモウラがタッチ数がそれぞれ6回と5回だったのに対して、ソンフンミンとラメラは13回のタッチ数が記録されています。
逆に決定機を作っていたのは、マンチェスターシティ。
得点後から左右のWGを入れ替える指示をペップはピッチに送ります。
得点前は、右に左利きのフォーデン、左に右利きのスターリング。得点後は、右に右利きのスターリング、左に左利きのフォーデンとしています。
マンチェスターシティは、試合や相手によって逆足のWGを置いたり、順足のWGを置いたりと臨機応変にポジションを変えています。もちろん今日のこの変化も意味があり、たくさんの人が考察しています。
しかし、私が思う今日の試合のWGのポジションチェンジの理由はこれだと思っています。
タンガンガがいい守備をしていたので、ベンデイビスを狙おう
です。
この試合の時間の経過で見てみると、左サイド(スパーズの右サイド)をドリブルで仕掛けた選手は0でした。スターリングも一度もドリブルを仕掛けていません。
スターリングはこの試合5回のドリブルを試みていますが、それはすべて右サイドにポジションを移してからのことです。
また、前半の10分間で2本も裏を取られたスパーズ右サイドの連携の脆さもベンデイビスを狙うには十分すぎる材料でした。
スピードに関してもベンデイビスよりスターリングの方が上回っていて、41分の決定機はカンセロとのワンツーで抜け出したスターリングが簡単にベンデイビスを置き去りにしていました。
苦悩ですね。SBからしたら。なむなむ。
繰り返しになりますが、トッテナムはピッチ上にゲームメイカーのいない状態で前半を過ごしたようでした。ホイビュアが最終ラインまで下がることもありましたが、エンドンベレはただ中盤に立っていただけでした。
フェーズ3 注目のギュンドアン【後半開始~70分】
フェーズ3 | ||
シティ | トッテナム | |
パス(本) | 213 | 140 |
ポゼッション(%) | 60.6 | 39.4 |
シュート(本) | 3 | 2 |
ドリブル成功(回) | 5 | 9 |
クリア(回) | 0 | 1 |
インターセプト(回) | 2 | 3 |
ギュンドアンが2得点をあげたこの時間帯がフェーズ3となります。
トッテナムは、ルーカス・モウラを下げシソコを投入。エンドンベレをトップ下にあげました。
後半が始まってすぐのところでは、シソコが中央で左右に展開するシーンが見られたり、DFラインのビルドアップでシティの4-4-2の中央を開かせ、縦パスを通すシーンなどが見られ、1点失っているスパーズも攻めに転じる姿勢を見せていました。
ところが、今シーズンのシティは相手の流れになる前に、その流れを断ち切る術を良く心得ています。
それが50分のギュンドアンの追加点でした。
前半何度も縦の突破を意識づけられたベンデイビス。
しかし、スターリングが選んだのはカットインでした。簡単に中央に入られたスパーズ守備陣はシュートブロックに人数を割きました。シュートは打たれずに済みましたが、そのまま逆サイドまでドリブルしたスターリングはそこに留まり、フォーデン、ギュンドアンというパス交換の後、再度パスを受けます。
ペナルティーエリア内左サイド。スターリングがカットインからシュートを打てる格好のエリアでした。
右足で持ち出したその瞬間、2回首を振って状況を把握したギュンドアンが密集地帯へ走り込みます。スターリングはギュンドアンにパス。左足で1タッチしたギュンドアンはそのまま左足でゴール左にシュート。見事にゴールネットを揺らしました。
モウリーニョのプランはいよいよ崩れます。
この直後からホイビュアをCB間におろし、両SBの位置を押し上げ、より攻撃的にシフト。中央を締めているシティに対してサイドを起点にと考えたのかもしれません。
パスをつなぐのではなくドリブル。9回のドリブルでボールを運び2本のシュートを打ちましたが、得点には至らず。(1本のシュートはカンセロの怠慢だと思いましたが)
シュートを打ったのはケインとエンドンベレ。消えていたエンドンベレはシュートを打った後デレアリと交代しました。デレアリも消えていたんですけどね。
試合はというと、66分前がかりになったスパーズDFの裏にエデルソンのロングパスがさく裂し、それを受けたギュンドアンが華麗にサンチェスをかわして2点目を取り、3点差。
試合はこれで終わったようなものでした。
フェーズ4 ベイル躍動、孤立ケイン【71分~試合終了】
フェーズ4 | ||
シティ | トッテナム | |
パス(本) | 132 | 121 |
ポゼッション(%) | 51.9 | 48.4 |
シュート(本) | 3 | 3 |
ドリブル成功(回) | 5 | 6 |
クリア(回) | 4 | 3 |
インターセプト(回) | 4 | 1 |
最後のフェーズです。
これは中央を締め、余裕をもって試合を進めるシティに対して72分にベイルを投入し、何か起きることに望みをかけるスパーズの攻防という時間帯です。
スタッツが均衡していますが、一矢報いたいスパーズと試合を終わらせようとするシティでようやく均衡するというのが今日の試合の結果だったのかもしれません。
この20分間はベイルが躍動しました。
得点になりかけた80分のシュートを含め、ベイルはこの20分間で、タッチ数18、パス8回、ドリブル4回、シュートが2本と何かしらの形となるものは見せたと思います。
一方で、完全に孤立したのがケイン。
デレアリは中途半端なプレーで役にも立たず、ケインにパスは来ませんでしたし、ケイン自身は、パス4回、シュートは0本でした。
ソンフンミンもDHがふさがないハーフスペースのケアに追われ不発だったこの試合。スパーズはまるでいいところなく完敗。
これはソンフンミンのヒートマップ。これだけ後ろにいる時間が多いとカウンターでも効果は発揮しないですね。
続いて、ラメラのヒートマップです。ラメラもだいぶ低い位置でのプレー。生命線でもある両サイドが押し込まれているということがこの図からもわかります。
前回対戦のようにSBのフォローをDHにさせるのはアウェイでは危険すぎてできなかったんだろうなと思います。
シティはこれでリーグ戦12連勝のようでこれは1902年以来の記録ということです。
最高です!
結果
23' ロドリ(PK)
66' ギュンドアン(assist by エデルソン)
HIGHLIGHTS | MAN CITY 3-0 SPURS
まとめ
今日のまとめはジンチェンコです。
ここ数試合スタメンの座を勝ち取り、シティにもっとも重要なビルドアップでの貢献だけでなく、最近ではカンセロとともにカウンター時のファーストディフェンダーとしても役割をこなしているジンチェンコ。
今日の試合は凄まじく、パス数は両チームあわせてダントツの111回。パス成功率は94%です。そのうち6割のパスを前方に送っています。ビルドアップにおいてボールを運ぶプレーを数多く見せました。
また、右足でしたが19分には、ワイドに開いたスターリングからの落としを受けて切り込んでからシュートを打ちました。
守備の面では、インターセプトが1回、競り合い勝利が1回、タックル3回を成功させています。
前後半で一度ずつカウンターになりそうな場面でジンチェンコがカバーをしたことで防げたシーンもありました。アシストやゴールがほとんどないジンチェンコですが、シティへの貢献度はかなり高いと言ってもいいと思いました。
それにしてもスパーズ。うまくいってないのがチーム全体にあらわれています。
裏を何度も取られたDFライン。チャンネルランへの曖昧な対応。試合を見ていて、非常に安心して見ることができるほどスパーズの攻撃に脅威を感じませんでした。前回対戦ではあれだけやられていたカウンターもうまく封じ込めることができました。
3点目の裏を取られたシーンでタンガンガが追うのを諦めたのが今のスパーズを象徴しているようでした。
それにしてもモウリーニョ。前回対戦で、ロドリのスペース管理とカンセロのサイドというマンチェスターシティの弱点をついて勝利したのに、今回は逆にペップにSHを下げさせられてカウンターを封じられ、右SBを狙われるという、されたら嫌なことをされて敗戦。2年目のモウリーニョももう効果はないのでしょうか。
偶然にもリバプール戦と同じような4分割となってしまいました。もしかしたらサッカーは、どの試合も同じような時間で試合の流れが作られるのではないかという仮説を立てて今日は締めようと思います。
次節以降の結果によってはシーズン終了後に「サッカーにおける流れが生まれるフェーズ数」という結論が出せるかもしれません。
すべてのコンペティションで勝ち上がっているシティはこれからも試合が続きます。次は延期となった第16節エバートン戦です。
応援は静かに、穏やかに。
それでは!
20回目と7回目 第23節 vs リバプール
こんにちは。
tadashiです。
リバプールのホームスタジアム
そして19試合勝てていない場所
青と赤
これまでシティにとっての赤は、マンチェスターユナイテッドだった。しかし、とあるときから、シティにとっての赤はリバプールとなったのだ。
現在首位のマンチェスターシティとそれを追いかけるリバプール。優勝を引き寄せるためには両者とも負けるわけにはいかない。
スタメン
両チームのスタメンはこちら
■ホーム リバプール 4-3-3
とても苦しい編成だと思います。
CBは軒並み負傷。ファンダイクが戻ってこれるかどうか。この冬の移籍で二人のCBを獲得するほどの緊急事態。それでもクロップは、メンバーとして成熟している11人を選んできました。
CBは本来アンカーであるヘンダーソンとファビーニョ。中盤はアンカーにワイナルドゥムを置き、その脇をチアゴと20歳のカーティス・ジョーンズが入ります。3トップはいつもとおなじみの3人です。
前節からは、スタメンを4人変えています。前節はブライトンに負けていて、ホームアンフィールドで3試合連続勝てていません。観客のいないアンフィールドとはとても恐ろしい。そして、シティはそんなこと関係なく勝つのもそれはそれで面白いですね。
苦しめられた選手
■カーティス・ジョーンズ
この20歳の名前は憶えておかなきゃいけないなと思いました。今日の試合は同い年のフォーデンが目立ちましたが、この試合のジョーンズは20歳には見えない落ち着きでした。
68分までプレーしましたが、パス成功率は92%(チアゴよりも高い)で、シュートも2本打っています。それよりなによりピッチ全体を大きく動き、前半25分を過ぎてからのリバプールの時間帯を作ったのは、ジョーンズとチアゴと言ってもいいと思います。
クロップがほぼ同時にこの二人を交代させたこと、その直後に失点したことは不運でしかないと思っています。
■アウェイ マンチェスターシティ 4-3-3
アンフィールドに乗り込むシティは、前節バーンリー戦からジェズスをフォーデンに代えただけです。
フォーデンの0トップで、右にマフレズ、左にスターリングを起用します。
ジンチェンコが引き続きスタメンで出場するのはとてもうれしいです。今日はなんといってもサラーに臆せずわりとけっこう止めていたと思います。
1点目はジンチェンコのボール奪取から生まれています。
4つのフェーズ
さて、この今日のリバプール戦は、90分を通してハイレベルな戦いでした。両チームともプレスが早く、帰陣も早く、それに対するビルドアップも恐ろしいほど正確。サイドで見せた1対1のスピード、テクニックも高次元で、現段階のサッカーの頂点と言える試合でした。
そんな中、私はこのこんなことを試合後に感じました。
淡々とフルで見た感想で話すとしたら、前後半で4つのフェーズがあったと思う。
— ただし (@tadashi0716) 2021年2月8日
・キックオフから20分ぐらいまでのシティ支配の時間
・25分以降のチアゴが前に出てリバプールが支配した時間
・後半開始から70分までの均衡した時間
・シャキリが入った70分以降のシティが追い込んだ時間
結果としては、シティ大勝という見え方ですが、試合を見ていると90分間を4つのフェーズに分けることができると思いました。
■リバプール戦の4フェーズ
- フェーズ1 シティが支配した時間 [キックオフ~25分]
- フェーズ2 リバプールが支配した時間[25分~前半終了]
- フェーズ3 均衡した時間[後半開始~70]
- フェーズ4 シティが追い込んだ時間[70分~試合終了]
上にあげた4つのフェーズに対して、パス、ポゼッション、シュートなどのデータ(WhoScored参照)、このフェーズで優位性を取れた理由を比較します。
そして、データでは見えない状況や交代の意図を話せればいいなと思います。
フェーズ1 シティが支配した時間 [キックオフ~25分]
主なデータ
フェーズ1 | ||
リバプール | シティ | |
パス(本) | 148 | 208 |
ポゼッション(%) | 41.7 | 58.3 |
シュート(本) | 1 | 1 |
ドリブル(回) | 3 | 5 |
クリア(回) | 6 | 4 |
インターセプト(回) | 6 | 1 |
試合開始
前から来たのはリバプールでした。
マネとサラーが外のパスコースを切りながら中央にプレスをかけ、アンカーはフィルミーノが下りて塞ぐ。前回対戦でもリバプールが仕掛けてきたシティのプレス回避及びビルドアップ対策です。
リバプールの出方に合わせるように落ち着いて試合に入ったのがマンチェスターシティ。
マネとサラーがSBへのパスコースを切りながらプレスをかけることを狙って、カンセロロールを発動。カンセロをロドリの横へ動かすことで、マネのディフェンス時のポジションを内側に取らせることに成功します。一方のジンチェンコは13分、14分に見られたようにサイドライン際に開き、ビルドアップの逃げ道としてポジションを取ります。
また、今日のシティの両WGはパスをもらいに下りてきてはいけません。狙うのは、リバプールSBをピン留めすること。それによってできたシティ右サイドのスペースをベルナルドシルバが使い、ドリブルを交えながらボールを繋いでいました。
一方のリバプールは、SBは高い位置。WGが内側に絞りながらフィルミーノは下りてボールをうけようとします。
後方のビルドアップは2CB+アンカーでしたが、シティはリバプールと同じようにWGがプレスをかけ、トップのフォーデンがワイナルドゥムをケアします。パスを受けに下りてくるIHには同じくIHが対応し、リバプールにはリズムを作らせていませんでした。
また、カウンターで運ばれないようにいつもよりプレスのスピード、プレスバックの意識が高く、前線にいるサラーとマネはすぐに囲まれ仕事をさせませんでした。
フェーズ2 リバプールが支配した時間[25分~前半終了]
フェーズ2 | ||
リバプール | シティ | |
パス(本) | 173 | 66 |
ポゼッション(%) | 72.3 | 27.7 |
シュート(本) | 4 | 1 |
ドリブル(回) | 3 | 3 |
クリア(回) | 0 | 10 |
インターセプト(回) | 2 | 7 |
状況が変わったのは25分を過ぎてからです。じわじわとリバプールにフィールドを支配され始めます。パス本数は2倍、約4分の3をリバプールがポジションしています。
要因は、両SBとチアゴのポジションを高く設定したからです。
チアゴのパスの位置をプロットしたものです。
前半25分までと比べて高い位置でパスを出しています。また、左寄りでのパスが多いのはやはりカンセロロールを考慮してのことだったのかもしれません。
続いて、両SBのパスの位置です。
前半の25分以降は平均的に高い位置にいます。2CBやアンカーからのパスはサイドに送り、サイドを起点に攻めている結果です。クロス本数はシティの1本に対してリバプールは7本でした。
そんな中でもシティが冷静にリバプールの攻撃を受けていたのがクリアとインターセプトの回数で分かります。
特に戻りの速さがすさまじく30分のペナルティーエリア内のアーノルドへのスルーパスを、スターリングがカットしたシーンは前半のハイライトと言っても良いと思います。
我慢して守っていればボールを持てる瞬間もある。シティはその一瞬のタイミングで縦パスをギュンドアンに通し、スターリングのドリブルでPKを獲得しました。そのPKはギュンドアンが外してしまいますが、ボールを保持してサイドから攻めるリバプールと少ない手数で個で打開するシティというのが残り時間の攻防でした。
それにしてもシティの守備の意識の高さがこれまでにないほどです。
フェーズ3 均衡した時間[後半開始~70]
フェーズ3 | ||
リバプール | シティ | |
パス(本) | 168 | 164 |
ポゼッション(%) | 51 | 49 |
シュート(本) | 3 | 3 |
ドリブル(回) | 3 | 10 |
クリア(回) | 3 | 6 |
インターセプト(回) | 3 | 4 |
両チーム得点を挙げた時間がこのフェーズ3になります。
数字上もかなり拮抗しているのがわかります。パス本数もポゼッションもシュート数もほぼ同じです。
リバプールにはそこまで変化はありませんでしたが、マンチェスターシティの守備に変化がありました。
前半、WGが外切りでプレスをかけていたのを、後半はIHのベルナルドシルバが一列前に出て、真正面からプレスをかけるようになりました。
試合中に解説の戸田さんが言っていたのですが、前半の途中から中央を使われてそこからサイドに展開されていたので、中央を経由されないような守備に切り替えたということだと思います。
シティのドリブル10回のうちスターリングが7回。そのうち1回は得点につながっています。ビルドアップで前線にパスをつなぎ、調子の良いスターリングでアーノルドサイドを攻略というタスクをチーム全体で遂行していました。
それにしても今日のジンチェンコは守備でもしっかり貢献していました。46分のサラーの裏への抜け出しに対して素晴らしいカバーリングを見せました。
そして1点目のシーンは49分ギュンドアン。スターリングのオフサイドのあとリバプールが後ろで回す中で、前から引かずにプレスをかけ、フィルミーノに出たボールをジンチェンコがインターセプトしたところから始まった攻撃でした。
スターリングが1対1でアーノルドに勝ったことで決まりました。その後のフォーデンのシュートも良かったんですが、アリソンに止められ、ゴール前につめていたギュンドアンがゴールです。これでリーグ8ゴール。キャリアハイを更新。
フェーズ4 シティが追い込んだ時間[70分~試合終了]
フェーズ4 | ||
リバプール | シティ | |
パス(本) | 160 | 81 |
ポゼッション(%) | 66.8 | 33.1 |
シュート(本) | 0 | 3 |
ドリブル(回) | 6 | 9 |
クリア(回) | 0 | 4 |
インターセプト(回) | 0 | 3 |
最後のフェーズです。
リバプールがボールを保持しながらもシュートは0。代わりにシュート3本で3点取ったシティの圧勝という結果になってしまいました。
この最後のフェーズについては、リバプール側の自滅、不運というところでした。サラーのPKで同点にした後にチアゴとジョーンズを下げ、シャキリとミルナーを投入。より攻撃的にシフトし、前への推進力で押し込む作戦だったんだと思います。
しかし、その交代直後に立て続けに失点。しかも2失点ともゴールキーパーのパスミスによるものでした。
アウェイで2点差。というのは、あとはブロックを作って攻めさせてチャンスがあればカウンターを仕掛ければいいだけ。このポゼッションの数字は、リバプールが優勢に進めていたわけではなく、シティが持たせていたと考えて間違いないと思います。
そして最後のフォーデンのゴール。これは素晴らしいゴールで、思わず声が出ました。ボールをずらしてから一歩目でシュート。あのタイミングでシュートを打たれたらディフェンスは何もできない。これで試合は終わります。
IHで投入された二人がここまで左右に散らばってしまうとは。投入されてすぐ失点してしまったのは残念ではありましたが、交代は失敗に終わってしまいました。
結果
49' ギュンドアン
63' サラー(PK)
73' ギュンドアン(assist by フォーデン)
76' スターリング(assist by ベルナルドシルバ)
83' フォーデン(assist by ジェズス)
HIGHLIGHTS | LIVERPOOL 1-4 CITY
まとめ
正直ここまで点差が開くとは思っていませんでした。
シティファンからしたら最高の試合でしたが、リバプールファンからしたら最悪な試合でしたね。
アンフィールドに乗り込んで20回目にしてようやく勝利。それだけでなく、スターリングがリバプールから移籍してきて7試合目にして初ゴール。なにか記録をまた作り出した気がします。
フォーデンの成長スピードがすさまじく、ベルナルドシルバがピッチ全体を駆け回りゲームを作り、スターリングが仕掛けて、ギュンドアンが仕留める。
ストーンズとルベンディアスのコンビが安定感が増していて、一時期の守備の不安はもうどこかにいってしまったようです。
ゴールキーパーのミスはありましたがそれ以外は非常にレベルの高い試合でした。個人技術はもちろんのこと、戦術、それを理解する選手たちの頭脳、戦術では補えないメンタルの部分など、現段階の最高峰がここに見れたと思いました。
これでリバプールとは1試合少ないながらも勝ち点が10ポイント差。2年前の同じ状況でシティは勝利し、4ポイント差につめてから逆転優勝をしましたが、このタイミングのこの勝ち点差は絶望的と言ってもいいかもしれません。
次は宿敵トッテナム。もし、この試合に勝てればいよいよついに優勝を期待していいころだと思います。
それにしても素晴らしい勝利でした!
デ・ブライネがいなくてこれ。最高です。
それでは!
4バックは左右非対称 第22節 バーンリー戦
こんにちは。
tadashiです。
今日は下位バーンリーとの試合です。
水曜日開催の試合はペップ政権で負けなしのシティ。安定した戦いで今日も勝利しました。
次の試合がリバプールだということで、我々ファンもどうしてもそこを見てしまう。しかし、シティの選手たちはそんなことを微塵も感じさせないプレー。
さっそくこの試合を振り返っていきましょう。
結果
バーンリー 0 - 2 マンチェスターシティ
3' ジェズス
スタメン
両チームのスタメンはこちら
■ホーム バーンリー 4-4-2
前節チェルシー戦からは二人入れ替えたバーンリー。
注目はGKのポープ、左SHのマクニール、トップのジェイロドリゲスです。
リバプールに勝利した勢いは長くは続かず、前節のチェルシーには敗戦。また、ウッド、バーンズと主力が怪我しているので、なかなか成績は上がらない。後半戦は残留が目標になる。
■アウェイ マンチェスターシティ 4-3-3
前節からは6人を入れ替え。デブライネはまだまだかかりそう。
ラポルトがSBとしてスタメンになっている。このスタメンだけで、ビルドアップの形が見えてくる。
今日のWGは右に対して左利き、左に対して右利きとなっている。SBを広げて、空いたところをカットインする狙いか。
出鼻をくじく無慈悲なシティ
前半開始
シティのキックオフで始まったこの試合、ホームのバーンリーは、開始からアグレッシブに前に出てきました。
4-4のブロックを作って、シティのパスをブロックの中に入れさせないような守備。シティ対策のセオリーとも言えるシステム。
開始直後には、パスコースがなくなりドリブルを仕掛けたカンセロを3人で囲みボール奪取。その際もカンセロのパスコースを切りながら素早く寄せていた。入りのいいバーンリー。少なくとも失点しない状態をキープしながら試合を進める構えだったのだと思います。
しかし、そんな矢先の3分にシティがあっさりと先制します。
ブロックを作って、自分たちのエリアに入るまでは様子を見るバーンリーは、ラポルトにボールが入った時にプレッシャーをかけることはありませんでした。左足に持ち替えたラポルトは、左に大きく張るスターリングにピンポイントのロングパス。足元におさめたスターリングはカットインしてルックアップ。スターリングは、ペナルティーエリア内に入ったベルナルドシルバへパス。華麗なターンで前を向き左足を振りぬきます。シュートはポープの真正面に飛んでしまいましたが、はじいたところにジェズスがつめてゴールを奪います。
1分前ぐらいにはシティの足元でのビルドアップにはある程度やれると思わせたところでのロングパスとはなんとも無慈悲だと思いました。
ジェズスがゴールを決めましたが、ジェズスがゴールを決めたリーグ戦では実に37試合すべて負けなし、35勝2分のようです。
さっそくリードを奪ったシティはその後も優位に試合を進めます。
今日の試合もカンセロロールでの試合運びとなりますが、バーンリーの4-4-2は、そのカンセロロールへの対策がなされていました。縦と幅をコンパクトに保ったバーンリーは、カンセロとロドリに対して2トップがマークし、CBからのパスを阻害します。たしかにこのシステムであれば中央を経由した展開は少なくなり、サイドに一度預ける必要があります。
しかし、バーンリーはなにか勘違いをしていますね。
相手はマンチェスターシティです。ビルドアップのために後ろに控えている選手はストーンズとラポルトです。DFらしからぬボールテクニックを備え、スペースがあれば運ぶことのできる二人の存在は厄介です。これに対してバーンリーは両SHをストーンズとラポルトへあてることにしていました。おそらく最初から決めていたことだと思います。
ここまではよかったと思いますが、問題はこのあとです。
さすがシティと言えるところですが、例えばラポルトがSHにプレスをかけられたとしてもワイドに開くスターリングはポジションを下げません。SBをピン留めし、空いたスペースをIHのギュンドアンがボールを受けるスペースとしました。
圧縮された中央のエリアから離れ、ある程度ギュンドアンがフリーでボールを持てるようになったので、左でボールをキープしながら中央を経由してマフレズで仕掛ける、もしくは裏に抜け出すという展開が多く見られました。
一方で、バーンリーはジェイロドリゲスをターゲットとして、つながずロングボールをシンプルに放り込んできます。
2トップが真ん中からサイドに流れ、GKやCBのロングボールをおさめ、フォローに入ったSHから、中央に残ったトップの一人を狙ってクロスを上げるというのが序盤に多く見られた攻撃でした。
そのほかにも26分、27分と両SBがそれぞれオーバーラップをしたシーンがありましたが、SHが下りてCMに預け、ダイレクトでSBへ。スムーズにパスが流れていて普段のバーンリーはこういう形の攻撃なのかなと感じました。
バーンリーの攻撃は数えるほどしかないので、ほとんどがシティの攻撃、ボールキープの時間です。
シティとしては追加点を取って後半に向かいたいと思っていた38分に待望の得点が入ります。
前半何度かベルナルドやギュンドアンがトライしていたハーフスペースの深い位置に、マフレズがようやく出したことでスターリングの得点につながりました。
ペナルティーエリアの深い位置からグラウンダーのクロス
これは、デブライネの十八番です。
そのプレーをデブライネ以外の選手でできるようになったこと。これはシティというチームにおいて大きな進化ですよね。
この得点のときは未来の形が見えたというか、まだまだシティは進化するなと期待があふれていました。できればこれをフォーデンとかにやってほしいと思ったり思わなかったり。
守備への意識は高い
後半開始
2点を失ったホームバーンリー。2点を先制したアウェイシティ。
シティはボールをキープして相手にボールを渡さずに時間を稼ぐことが一番の守備です。
さて、バーンリーは前半よりもプレスの位置を高めに設定。試合序盤に見せた素早いプレスを後半に再開し、58分はそのハイプレスでチャンスを作りました。
また、ハイプレスから引いた守備への移行もスムーズでバイタルエリアを取られた後は、ブロックを作り絶対に飛び込まない守備で何度もシティのシュートをブロックしていました。
シティの13本のシュートのうち実に半分の6本をシュートブロック。それだけボールに対する意識がかなり高かったということです。
ジンチェンコ出場
64分にカンセロがジンチェンコと交代します。
今日のスタメンを見てから、ジンチェンコの出場はないと思っていたので、目が覚めました。
バーンリーが疲れてきたこともあり、どんどんプレスがかからなくなってくるので、バーンリーは重心が下がります。それにより、さらにシティにスペースができてボールを動かしながら時計を進めました。
結果的には75%のポゼッションでほとんどバーンリーにはプレーさせませんでした。
ジンチェンコが入った後のシティのDFラインはそのまま右にスライド。ストーンズが右SBを務め、CBはディアスとラポルトとなりました。
今日の試合は、左SBがラポルトとジンチェンコが務めましたが、ジンチェンコがSBにいることでワイドレーンから斜めに送るバイタルエリアへのパスは味方が前向きでプレーすることを助けます。また、前半から何度かスターリングが中に入っていましたが、前半は縦にラポルト、ギュンドアン、スターリングが並んでいることが多く見られました。いっぽうで、ジンチェンコであれば幅を取ることができ、スターリングが中に入っていったときでも窮屈になることはありませんでした。
それにしても、ここ最近のビルドアップの形でいけば、SBが一人出ていればDFラインは形成されることがわかります。
3人のCBが左右非対称にポジションを取り、SBが右か左かでスライドをするだけ。どんだけ万能なのか。それもこれもストーンズが復活し、ラポルトも戻ってきたということです。ここにアケまで戻ってきたらかなり余裕をもってメンバーを構成することができるでしょう。(昨シーズンとはえらい違い)
後半のスコアは動かず、試合はこのまま終了。
見事にクリーンシートでリーグ戦9連勝です。(クリーンシートは6試合連続)
6試合連続クリーンシートは本物?
今日の勝利でプレミアリーグ9試合連続勝利かつ6試合連続クリーンシートを達成しました。ペップシティがようやく復調してきたという意見が多く、それは僕も同感です。次のリバプール戦に勝てたらいよいよリーグ制覇も視野に入ってきます。
しかし、どうでしょうか。この5試合の対戦相手はお世辞にも強いチームとは言えない相手でした。このまま突っ走ることができるかというと、これだけの結果では断言できないところがあります。
この6試合の相手は引いてきたチームも、前からハイプレスをかけるチームもありましたが、そのどれもが4バックでした。カウンターの強度もそこまで高くないので、シティの守備陣もそこまで苦労はしなかったと思います。
後半戦で再戦するレスターやトッテナムなどのハイレベルなカウンター戦術を展開するチームに対して同じように勝てるかというのは疑問ではあります。
ですが、この勢いというのはたしかにあります。不調が続きながらも負けなかったこともそうですし、デブライネを欠きながらも安定した得点やポゼッションを披露していることもそうです。結果を出していること。それは紛れもない事実であり、ペップシティの努力の成果です。
次節のリバプール戦。BIG6との対戦はかなり久しぶりです。同じプレミアリーグでありながら下位チームとの強度の違いは圧倒的です。この復調をそのままにリバプール、トッテナムと良い結果を得られるかどうか我々は目を背けずに見ていかなければなりません。
応援していきましょう。
それでは!